新書 / 壹通
所謂建武關、函谷、臨晉關者,大抵爲備山東諸侯也。天下之制在陛下,今大諸侯多其力,因建關而備之,若秦時之備六國也。豈若定地勢使無可備之患,因行兼愛無私之道,罷關一通,示天下無以區區獨有關中者。所爲禁游宦諸侯及無得出馬關者,豈不曰諸侯得衆則權益重,其國衆車騎則力益多,故明爲之法,無資諸侯。於臣之計,疏山東,孽諸侯,不令似一家者,其精於此矣。豈若一定地制,令諸侯之民,人騎二馬,不足以爲患,益以萬夫不足以爲害。今不定大理,數起禁,不服人心,害兼覆之義,不便。
新字:所謂建武関、函谷、臨晋関者,大抵為備山東諸侯也。天下之制在陛下,今大諸侯多其力,因建関而備之,若秦時之備六国也。豈若定地勢使無可備之患,因行兼愛無私之道,罷関一通,示天下無以区区独有関中者。所為禁游宦諸侯及無得出馬関者,豈不曰諸侯得衆則権益重,其国衆車騎則力益多,故明為之法,無資諸侯。於臣之計,疏山東,孽諸侯,不令似一家者,其精於此矣。豈若一定地制,令諸侯之民,人騎二馬,不足以為患,益以万夫不足以為害。今不定大理,数起禁,不服人心,害兼覆之義,不便。
書き下し
所謂武関、函谷、臨晋関を建つる者は、大抵山東の諸侯に備うる為なり。天下の制は陛下に在り、今大諸侯其の力多く、因りて関を建てて之に備うること、秦の時の六国に備うるが若し。豈に地勢を定めて備う可きの患い無からしめ、因りて兼愛無私の道を行い、関を罷めて一通し、天下に区区として独り関中を有する者無きを示すに若かんや。游宦の諸侯を禁じ、及び馬を関より出だすを得ること無からしむる所為の者は、豈に曰わずや、諸侯衆を得れば則ち権益ます重く、其の国車騎衆ければ則ち力益ます多し、故に明らかに之が法を為し、諸侯に資する無からしむと。臣の計に於いては、山東を疏にし、諸侯を孽にし、一家に似しめざる者は、其れ此に精なり。豈に一たび地制を定め、諸侯の民をして、人ごとに二馬に騎せしむるも、以て患いと為すに足らず、益すに万夫を以てするも以て害と為すに足らざらしむるに若かんや。今大理を定めず、数しば禁を起こすは、人心を服せず、兼覆の義を害し、便ならず。
現代語訳
武関、函谷関、臨晋関を設けているのは、大抵、山東の諸侯に備えるためです。天下の制度は陛下の手にありますが、今は大諸侯の力が強いので、関を築いて備えており、これは秦が六国に備えたのと同じです。むしろ地勢のあり方を定めて、備えるべき心配そのものをなくし、全てを覆って私心のない道を行い、関を廃して通行を自由にし、天下に、ちっぽけに関中だけを独り占めする意図はないと示す方がよいのではありませんか。諸侯への仕官を禁じ、馬を関から出させないのは、諸侯が人を得れば権力が重くなり、その国の車馬が多ければ力が増すので、はっきり法を定めて諸侯の助けにならないようにする、ということでしょう。私の計では、山東を分けて疎遠にし、諸侯の子孫に分け与えて、一家のように強くまとまらせないことの方が、この目的により適っています。いったん土地の制を定めれば、諸侯の民が一人二頭の馬に乗っても心配に足らず、万人を加えても害にならないでしょう。今は大きな理を定めず、しばしば禁令を出すので、人心は従わず、あまねく覆う道義を害し、不都合です。
解説
この章句が説くこと
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『政談』國の締り一篇の發端の事総して国の治めと云ふは、譬へば碁盤の目を盛るが如し、目を盛らざる盤にては、何ほどの上手にても碁はうたれぬなり、洪水を静むるには、川筋を付るなり、川筋を付ざれば、禹王再び生れ出たまふとも、水を静むることは叶はざるなり、当時火災の事上の御世話にて塗屋土蔵造に成りたれば、火災自然と少なし、是明かなる証拠なり、其外の御政務には、此訳を申し立る人なきにや、是によりて和漢の古法を考へ愚案の量見を左に記す、
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『政談』右四册大意の事右四册の物語りに瑣細なるまでを記したることは、当時は法の立てやう未熟にて、大なる所に法立たず、末に計り法立ちてある故世界に締り無く、風俗ひたものに移り行き、今は法は法にて有りながら、下は下にて別々になりて、法も詮無きことに成りたることを知らせ奉らんためなり、当時のことなど見及び聞及びたる争などを少々書きたるは、定めて承はり違ひもあるべし、又愚按の違ひもあるべし、政治の道はひきつはなれたることにあらず、世の成行世界の全体を知し召すこと肝要なり、肝心の所は世界旅宿の境界なると、諸事の制度なきと、此二つに帰することなり、是によりて、戸籍を立て万民を住所に有付ると、町人百姓と武家と制度の差別を立ると、大名の家に制度を立ると御買上と云ことの之なきやうにすると、大体是にて世界はすぐなをり豊かに成るへし、
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『政談』諸色直段の事偖又用ゆるもの多き故に高直になる、此用ゆる者多きは制度なきより起れり、元来貴き人は善きものを用ひ、賤きものは悪きものを用ゆるときは、物各々其宜きを得るゆゑ諸色高直にはならぬを、今は賤き者まても善きものを用ゆると云は如何やうの事なれは、御城下に来集る民は素は田舎のものにて、麦粟種等の雑穀を食し、濁酒を飲み、味噌をも食せす、すくも火を焼き、麻木綿を織て着し、席薦の上に寝臥をしたるものか、心儘に御城下に来住する故、米味噌を食し、薪を焼き、炭の火にあたり、衣服も買整へて着し、善酒を飲み、田舎に之なき障子を立て、天井を張り、唐紙を張り、畳を敷き、蚊屋を釣るなとすることは、ぼていふりも皆斯の如し、少しも善き町人は衣服食事家居器物まても金さへあれは大名と同しことにて誰れ制する者なし、是諸物の用ゆる人多き故諸色の高直なること尤なり、
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尉繚子・制談此くの如くんば、戦ひ勝つと雖も国益々弱く、地を得るも国益々貧しきは、国中の制弊るるに由るなり。
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『墨子』尚同中子墨子曰く、方今の時の正長は、則ち本より古者と異なれり。之を譬うるに量るに五刑を以てするが若く然り。昔者、聖王は制して五刑を為り、以て天下を治む。有苗の五刑を制するに逮び至りては、以て天下を亂る。則ち此れ豈に刑の不善ならんや。刑を用うること則ち不善なるなり。是を以て先王の書、呂刑の道いて曰く、「苗民、練を用いず、折くに則ち刑し、唯だ五殺の刑を作り、法と曰う」と。則ち此れ善く刑を用うる者は以て民を治め、善く刑を用いざる者は以て五殺と為すを言う。則ち此れ豈に刑の不善ならんや。刑を用うること則ち不善なり、故に遂に以て五殺と為す。是を以て先王の書、術令の道いて曰く、「惟れ口は好を出だし戎を興す」と。則ち此れ善く口を用うる者は好を出だし、善く口を用いざる者は以て讒賊冦戎と為すを言う。則ち此れ豈に口の不善ならんや。口を用うること則ち不善なり、故に遂に以て䜛賊冦戎と為す。
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『政談』當時制度之なき事兼て制度を立てゝこれを安くするときは人々知る故分に過ぎたる奢りは自からなくて世上に費へなし、制度なければ上より奢りをするなと制し玉ふと云ふとも、是までが分相応にて是より上か奢りなりと云ふ「キツカケ」なけれはすへきやうなし、華美を好むは人情の常なる故制度なき故に世は次第に奢りに成行くなり、衣服の制度ある時は是は大名是は大役高官の人と云ふ事坐敷の上にても自から知るゝ故、人々貴きを敬ひ儀式自から乱れさるに、上一人より下は民までも何れも小袖を着上下を着ること同様にて、其衣服の地は金さへあれは何を着ても誰制する人なし、上下の見分けなき故高官大役の人下のものと別の立てやうなく、唯々いかつかましき体をして是にて高下を別のことに成り、我か身の君子の礼儀を失ふことをは知らず、御役人奉行なとの無礼甚しく、下たるものは礼に過ぎて這ひ屈み、諂ふ風俗甚しきも制度なきか故なり、
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