新書 / 過秦下
子嬰立,而遂不悟。借使子嬰有庸主之材,而僅得中佐,山東雖亂,三秦之地可全而有,宗廟之祀宜未絕也。秦地被山帶河以爲固,四塞之國也。自繆公以來,至於秦王二十餘君,常爲諸侯雄,此豈世賢哉?其勢居然也。且天下嘗昔日同心幷力攻秦矣,當此之世,賢智幷列,良將行其師,賢相通其謀,然困於阻險而不能進,秦乃延入戰而爲之開關,百萬之徒逃北而遂壞。然困於阻險而不能進者,豈勇力智慧不足哉?形不利,勢不便也。秦離小邑伐幷大城,守險塞而軍,高壘毋戰,閉關據阨,荷戟而守之。諸侯起於匹夫,以利會,非有素王之行也。其交未親,其民未附,名曰亡秦,其實利之也。彼見秦阻之難犯,必退陣。案士息民以待其弊,承解誅罷以令國君,不患不得意於海內。
新字:子嬰立,而遂不悟。借使子嬰有庸主之材,而僅得中佐,山東雖乱,三秦之地可全而有,宗廟之祀宜未絶也。秦地被山帯河以為固,四塞之国也。自繆公以来,至於秦王二十余君,常為諸侯雄,此豈世賢哉?其勢居然也。且天下嘗昔日同心幷力攻秦矣,当此之世,賢智幷列,良将行其師,賢相通其謀,然困於阻険而不能進,秦乃延入戦而為之開関,百万之徒逃北而遂壊。然困於阻険而不能進者,豈勇力智慧不足哉?形不利,勢不便也。秦離小邑伐幷大城,守険塞而軍,高塁毋戦,閉関拠阨,荷戟而守之。諸侯起於匹夫,以利会,非有素王之行也。其交未親,其民未附,名曰亡秦,其実利之也。彼見秦阻之難犯,必退陣。案士息民以待其弊,承解誅罷以令国君,不患不得意於海内。
書き下し
子嬰立ちて、遂に悟らず。借使子嬰に庸主の材有りて、僅かに中佐を得ば、山東乱ると雖も、三秦の地は全くして有つ可く、宗廟の祀り宜しく未だ絶えざるべし。秦の地は山を被り河を帯びて以て固めと為し、四塞の国なり。繆公より以来、秦王に至るまで二十余君、常に諸侯の雄たり、此れ豈に世賢ならんや。其の勢い居然たればなり。且つ天下嘗昔日同心并力して秦を攻めたり。此の世に当たりて、賢智并び列なり、良将其の師を行り、賢相其の謀を通ず。然れども阻険に困しみて進む能わず、秦乃ち延き入れて戦い、之が為に関を開くや、百万の徒逃北して遂に壊る。然れども阻険に困しみて進む能わざりしは、豈に勇力智慧足らざらんや。形利あらず、勢い便ならざればなり。秦、小邑を離れ大城を伐ち并せ、険塞を守りて軍し、塁を高くして戦う毋く、関を閉ざし阨に拠り、戟を荷いて之を守る。諸侯は匹夫より起こり、利を以て会し、素王の行い有るに非ず。其の交わり未だ親しからず、其の民未だ附かず、名は秦を亡ぼすと曰うも、其の実は利するなり。彼秦の阻の犯し難きを見ば、必ず陣を退かん。士を案じ民を息ませて以て其の弊を待ち、解誅罷を承けて以て国君に令せば、意を海内に得ざるを患えず。
現代語訳
子嬰が立ちましたが、結局悟りませんでした。もし子嬰に並みの君主の力があり、わずかでも並みの補佐を得ていたなら、山東が乱れても三秦の地は完全に保てたでしょうし、宗廟の祭りも絶えなかったはずです。秦の土地は山を負い河を帯びて固く、四方を塞がれた国です。繆公から秦王に至るまで二十余人の君主が常に諸侯の雄でしたが、これは代々賢かったからでしょうか。その勢いが自然にそうだったからです。かつて天下が心を同じくして力を合わせ秦を攻めたとき、賢者や智者が並び、良将が軍を動かし、賢相が謀を通じました。それでも険しさに阻まれて進めず、秦が敵を引き入れて戦い、関を開くと、百万の軍が逃げて崩れました。険に阻まれて進めなかったのは、勇力や智恵が足りなかったからでしょうか。形が不利で、勢いが便利でなかったからです。秦は小さな邑を離れて大城を攻め併せ、険しい要害を守って陣を張り、塁を高くして戦わず、関を閉じて隘路に拠り、戟を担いで守りました。諸侯は庶民から起こり、利で集まった者であり、素王のような行いがあったわけではありません。その交わりは親しくなく、その民もまだ従っておらず、名は秦を亡ぼすと言いながら、実は利益を求めていました。彼らは秦の守りが犯しがたいのを見れば、必ず陣を退くでしょう。兵を休め民を息つかせて相手の疲れを待ち、解放と罷免の機会に乗じて国君に命じれば、海内で思いを遂げられないことを心配する必要はありません。
解説
この章句が説くこと
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史記 秦始皇本紀此の世に当たり、賢智并び列し、良将其の師を行り、賢相其の謀を通ず。然れども阻険に困しみて進む能はず。秦乃ち延き入れて戦ひ、之が為に関を開く。百万の徒逃北して遂に壊る。豈に勇力智慧足らざらんや。形利あらず、勢ひ便ならざればなり。秦は小邑も大城に并し、険塞を守りて軍し、塁を高くして戦ふ毋く、関を閉ぢ阨に拠り、戟を荷ひて之を守る。諸侯は匹夫より起こり、利を以て合し、素王の行ひ有るに非ず。其の交はり未だ親しまず、其の下未だ附かず。名は亡秦と為すも、其の実は之を利す。彼秦の阻みの犯し難きを見ば、必ず師を退かん。土を安んじ民を息ひ、以て其の敝るるを待ち、弱きを収め罷れたるを扶け、以て大国の君に令せば、意を海内に得ざるを患へず。貴きこと天子為り、富は天下を有ち、而るに身禽と為る者は、其の敗を救ふこと非なればなり。秦王は己を足れりとして問はず、遂に過ちて変ぜず。二世之を受け、因りて改めず、暴虐以て禍を重ぬ。子嬰孤立して親無く、危弱にして輔無し。三主惑ひて終身悟らず、亡ぶること、亦宜ならずや。此の時に当たりてや、世に深慮知化の士無きに非ざるなり。然れども敢へて忠を尽くし過ちを拂はざる所以の者は、秦の俗に忌諱の禁多く、忠言未だ口に卒はらずして身戮没と為ればなり。故に天下の士をして、耳を傾けて聴き、足を重ねて立ち、口を拑みて言はざらしむ。是を以て三主道を失ひ、忠臣敢へて諫めず、智士敢へて謀らず、天下已に乱るるも、姦上聞せず。豈に哀しからずや。先王は雍蔽の国を傷ふを知る。故に公卿大夫士を置き、以て法を飾り刑を設けて、天下治まる。其の彊きや、暴を禁じ乱を誅して天下服す。其の弱きや、五伯征して諸侯従ふ。其の削らるるや、内守り外附きて社稷存す。故に秦の盛んなるや、法を繁くし刑を厳しくして天下振るふ。其の衰ふるに及びてや、百姓怨望して海内畔く。
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