師導古典を学びたいすべての人に

慎思録 / 巻之六

篤信之禀性也。信庸劣。是故文學之事。無一所能。百事皆拙陋。不能及于人也遠矣。唯恐有勤苦讀書。恭默思道之二事。以及人而已。古語云。愚者千慮。必有一得。葢區區辛苦思繹而覬覦於萬一者。其或庶幾乎此語矣。

新字:篤信之禀性也。信庸劣。是故文学之事。無一所能。百事皆拙陋。不能及于人也遠矣。唯恐有勤苦読書。恭黙思道之二事。以及人而已。古語云。愚者千慮。必有一得。葢区区辛苦思繹而覬覦於万一者。其或庶幾乎此語矣。

書き下し

篤信の禀性や、信に庸劣なり。是の故に文学の事、一として能くする所無く、百事皆拙陋にして、人に及ぶこと能はざること遠し。唯だ恐らくは勤苦読書、恭黙思道の二事有りて、以て人に及ぶのみ。古語に云ふ、愚者も千慮すれば、必ず一得有りと。蓋し区区として辛苦思繹して万一を覬覦する者、其れ或は此の語に庶幾からんか。

現代語訳

私篤信の生まれつきは、まことに凡庸で劣っています。だから学問のことは一つとしてよくできず、何事もみな拙くて、人にはるかに及びません。ただおそらく、苦労して書を読むことと、恭しく黙って道を思うことの二つだけは、人に及ぶかもしれません。古い言葉に「愚かな者も千回考えれば、必ず一つは得るところがある」とあります。思うに、ささやかに苦心して考えを巡らし、万分の一を願う者は、あるいはこの言葉に近いでしょうか。

解説

自らを凡庸と言いつつ、勤勉な読書と恭しく黙して道を思うことの二つだけは人に及ぶかもしれないと述べた条です。「恭黙思道」は『書経』説命上で殷の高宗が言葉を慎んで道を思ったことに由来します。「愚者も千慮に必ず一得有り」は『史記』淮陰侯列伝の語です。書名『慎思録』の「思」を支えたのは、才能ではなく考え続ける根気だったことが分かります。才能に自信がなくても、読み、黙って考え続けることは誰にでもでき、それが一つの得を生みます。

この章句が説くこと

読書謙虚千慮一得

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる