慎思録 / 巻之六
四德之中。元貞爲最大。葢元者。元氣所發生之始也。以貫四時。貞者。四時之氣所底止。元氣含蓄之終也。以閉藏四時之氣。此二者。是天道流行之所以成終成始也。貞之所以能成始者。何也。葢收一年之功。而潜藏者。所以爲來春生發之本也。
新字:四徳之中。元貞為最大。葢元者。元気所発生之始也。以貫四時。貞者。四時之気所底止。元気含蓄之終也。以閉蔵四時之気。此二者。是天道流行之所以成終成始也。貞之所以能成始者。何也。葢収一年之功。而潜蔵者。所以為来春生発之本也。
書き下し
四徳の中、元貞を最も大なりと為す。蓋し元なる者は、元気の発生する所の始めなり。以て四時を貫く。貞なる者は、四時の気の底止する所、元気含蓄の終はりなり。以て四時の気を閉蔵す。此の二者は、是れ天道流行の終はりを成し始めを成す所以なり。貞の能く始めを成す所以は、何ぞや。蓋し一年の功を収めて、潜蔵する者は、来春生発の本と為る所以なり。
現代語訳
元・亨・利・貞の四徳の中で、元と貞が最も大きいものです。思うに元とは、元気が生じる始まりで、四季を貫いています。貞とは、四季の気が行き着いて止まるところで、元気が含み蓄えられる終わりです。これによって四季の気を閉じ蔵めます。この二つは、天の道の流れが終わりを成し始めを成すゆえんです。貞が始めを成すことができるのはなぜでしょうか。思うに一年の働きを収めて潜み蔵めることが、来春の生じ発する本となるからです。
解説
『易経』乾卦の元亨利貞のうち、始まりの元と終わりの貞が最も大きいと論じた条です。貞は冬に当たり、一年の成果を収めて蔵めるとともに、次の春の芽生えの本ともなる、終わりにして始まりの徳だとします。朱子も『易本義』などで貞を「始めを成す」と説きました。続く二条も冬の閉蔵を論じており、益軒が晩年に天地の循環を深く思索したことが分かります。終わりは次の始まりの準備でもあるという見方は、仕事の区切りや人生の節目にも通じます。
この章句が説くこと
元亨利貞易経天道四季循環
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