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慎思録 / 巻之六

士人之好勇也。有忠義者焉。有血氣者焉。忠義者君子之道也。血氣者衆人之事也。二者之差等。雖大小高下懸絕。各有成功之益。爲主將者。不可偏廢。然士或無忠義之勇。則雖有血氣之勇。不能臨危授命。而失節者有矣。好血氣之勇者。或一朝之忿忘其身。以及其親。可不戒乎。

新字:士人之好勇也。有忠義者焉。有血気者焉。忠義者君子之道也。血気者衆人之事也。二者之差等。雖大小高下懸絶。各有成功之益。為主将者。不可偏廃。然士或無忠義之勇。則雖有血気之勇。不能臨危授命。而失節者有矣。好血気之勇者。或一朝之忿忘其身。以及其親。可不戒乎。

書き下し

士人の勇を好むや、忠義なる者有り、血気なる者有り。忠義なる者は君子の道なり。血気なる者は衆人の事なり。二者の差等は、大小高下懸絶すと雖も、各成功の益有り。主将たる者は、偏廃すべからず。然れども士或は忠義の勇無ければ、則ち血気の勇有りと雖も、危きに臨みて命を授くること能はずして、節を失ふ者有り。血気の勇を好む者は、或は一朝の忿に其の身を忘れて、以て其の親に及ぼす。戒めざるべけんや。

現代語訳

武士が勇を好むのには、忠義による勇と血気による勇があります。忠義の勇は君子の道で、血気の勇は一般の人のことです。二つの差は大小高下に大きな隔たりがありますが、それぞれ手柄を立てる益があります。大将たる者は、どちらかを捨ててはいけません。しかし武士に忠義の勇がなければ、血気の勇があっても、危機に臨んで命を投げ出すことができず、節義を失う者がいます。血気の勇を好む者は、一時の怒りで我が身を忘れ、災いを親にまで及ぼすことがあります。戒めずにいられるでしょうか。

解説

勇には忠義に根ざすものと血気にはやるものがあり、将は両方を活かしつつ、血気だけの勇を戒めるべきだと説く条です。「危きを見て命を授く」は『論語』憲問篇、「一朝の忿に其の身を忘れて以て其の親に及ぼす」は顔淵篇の語です。平和な江戸時代にも武士の喧嘩や刃傷沙汰は絶えず、益軒は『武訓』でも血気の勇を戒めました。勢いのある人材は組織に必要ですが、志に裏打ちされない勢いは、一時の怒りで自分も周りも損ないます。

この章句が説くこと

忠義血気怒り論語

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