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慎思録 / 巻之五

施人而不報。則隨而恨之。是庸人之情。夫施人而欲得其報。是市井交易之道。固爲可賤。君子之惠人也。爲行道也。豈有心于求報乎。然是常人之所難免。可不戒哉。

新字:施人而不報。則随而恨之。是庸人之情。夫施人而欲得其報。是市井交易之道。固為可賤。君子之恵人也。為行道也。豈有心于求報乎。然是常人之所難免。可不戒哉。

書き下し

人に施して報いざれば、則ち随ひて之を恨む。是れ庸人の情なり。夫れ人に施して其の報いを得んと欲するは、是れ市井交易の道にして、固より賤しむべしと為す。君子の人に恵むや、道を行はんが為なり。豈に報いを求むるに心有らんや。然れども是れ常人の免れ難き所なり。戒めざるべけんや。

現代語訳

人に施しをして報いがないと、すぐにそれを恨みます。これが凡人の情です。そもそも人に施してその見返りを得ようとするのは、市場の取引の道であり、もちろん卑しむべきものです。君子が人に恵むのは、道を行うためです。どうして見返りを求める心がありましょうか。しかしこれは普通の人がなかなか免れないものです。戒めずにいられましょうか。

解説

益軒は、人に尽くしたのに感謝されないと恨む心を、取引の論理が入り込んだものとして戒めます。君子が人を助けるのは、それが人として行うべき道だからで、見返りは目的ではありません。同時に益軒は、報いを求める心は普通の人には避けがたいとも認めており、だからこそ常に自分を省みよと言います。職場でも家庭でも「これだけしてあげたのに」という思いは人間関係をこじらせます。与えた時点で完結させる心構えは、自分自身を恨みから解放することにもつながります。

この章句が説くこと

施し報い恨み君子

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