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弁名 / 君子小人

君子者。在上之稱也。子男子美稱。而尙之以君。君者治下者也。士大夫皆以治民爲職。故君尙之子以稱之。是以位言之者也。雖在下位。其德足爲人上。亦謂之君子。是以德言之者也。古之人。學而成德。則進之士。以至大夫。故曰君子者成德之稱。後世儒者。老莊内聖外王之說。淪其骨髓。遂忘先王之道爲安民之道。故其所謂君子者。多外仁以言之。其失之遠甚焉。

新字:君子者。在上之称也。子男子美称。而尚之以君。君者治下者也。士大夫皆以治民為職。故君尚之子以称之。是以位言之者也。雖在下位。其徳足為人上。亦謂之君子。是以徳言之者也。古之人。学而成徳。則進之士。以至大夫。故曰君子者成徳之称。後世儒者。老荘内聖外王之説。淪其骨髄。遂忘先王之道為安民之道。故其所謂君子者。多外仁以言之。其失之遠甚焉。

書き下し

君子とは上に在るの称なり。子は男子の美称にして、之を尚ふるに君を以てす。君とは下を治むる者なり。士大夫は皆民を治むるを以て職と為す、故に君を之が子に尚へて以て之を称す。是れ位を以て之を言ふ者なり。下位に在りと雖も、其の徳人の上たるに足る、亦た之を君子と謂ふ。是れ徳を以て之を言ふ者なり。古の人は学びて徳を成せば、則ち之を士に進め、以て大夫に至る。故に君子とは成徳の称と曰ふ。後世の儒者は、老荘の内聖外王の説、其の骨髄に淪み、遂に先王の道の民を安んずるの道たるを忘る。故に其の所謂君子なる者は、多く仁を外にして以て之を言ふ。其の失之れ遠きこと甚だし。

現代語訳

君子とは、上の地位にある者の呼び名である。「子」は男子の美称で、それに「君」を添えた。君とは下を治める者である。士大夫はみな民を治めることを職としているから、「子」に「君」を添えて呼んだのである。これは位で言ったものである。下の位にあっても、その徳が人の上に立つに足りる者もまた君子という。これは徳で言ったものである。古の人は、学んで徳を成せば士に進められ、さらに大夫に至った。だから「君子とは徳を成した者の呼び名である」という。後世の儒者は、老荘の「内に聖人、外に王」の説が骨の髄までしみこみ、ついに先王の道が民を安んずる道であることを忘れた。だからそのいう君子は、多くは仁を抜きにして語られている。その誤りははなはだ遠い。

解説

君子とはもともと民を治める地位にある者の呼び名であり、そこから、その地位にふさわしい徳を備えた者も君子と呼ぶようになったと徂徠は語源から説く。つまり君子の本質は、人の上に立って民を安んずる役割にある。ところが後世の儒者は、内面の聖人性を磨けば外の統治は自然に成るという老荘風の考えに染まり、仁、すなわち民を安んずる働きを抜きにして君子を語るようになった。リーダーの資質を、個人の人格修養だけでなく、人を治め支える役割から考えさせる章句である。

この章句が説くこと

君子安民仁位徳先王

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