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慎思録 / 巻之二

天下之物。各有所長。而不可棄。如牛之耕馬之馳。犬之守夜。猫之捕鼠。此皆備用之物。雖至賤聖人不能棄之。况於人之有才行乎。人各有能有不能。雖庸才之人。亦有奇智之可取。是以君子之用人也。捨其所短。而取其所長。所以世無棄材。而朝多良才也。天之生人也。以一世之人。治一世之人。是以亂世之所以不及治世者。非人才不足。因有人才而不能用也。

新字:天下之物。各有所長。而不可棄。如牛之耕馬之馳。犬之守夜。猫之捕鼠。此皆備用之物。雖至賤聖人不能棄之。況於人之有才行乎。人各有能有不能。雖庸才之人。亦有奇智之可取。是以君子之用人也。捨其所短。而取其所長。所以世無棄材。而朝多良才也。天之生人也。以一世之人。治一世之人。是以乱世之所以不及治世者。非人才不足。因有人才而不能用也。

書き下し

天下の物は、各々長ずる所有りて、棄つべからず。牛の耕し馬の馳せ、犬の夜を守り、猫の鼠を捕ふるが如き、此れ皆用に備ふるの物なり。至って賤しと雖も聖人も之を棄つること能はず。況んや人の才行有るに於てをや。人各々能有り不能有り。庸才の人と雖も、亦た奇智の取るべき有り。是を以て君子の人を用ゐるや、其の短き所を捨てて、其の長ずる所を取る。世に棄材無くして、朝に良才多き所以なり。天の人を生ずるや、一世の人を以て、一世の人を治む。是を以て乱世の治世に及ばざる所以の者は、人才足らざるに非ず。人才有りて用ゐること能はざるに因るなり。

現代語訳

天下の物には、それぞれ優れた所があって、捨ててはなりません。牛が耕し、馬が駆け、犬が夜を守り、猫が鼠を捕るように、これらはみな役に立つものです。ごく卑しいものでも、聖人でさえ捨てることはできません。まして人に才能や行いがあるならなおさらです。人にはそれぞれできることとできないことがあります。凡庸な人でも、取るべき優れた知恵があります。だから君子が人を用いるときは、その短所を捨ててその長所を取ります。これが世に捨てられる人材がなく、朝廷に優れた人材が多いわけです。天が人を生むのは、その時代の人によってその時代の人を治めさせるためです。だから乱世が治世に及ばないのは、人材が足りないからではありません。人材がいるのに用いることができないからです。

解説

人は必ず何かの長所を持っており、短所を捨てて長所を取れば捨てる人材はない、と説く人材活用の条です。牛・馬・犬・猫のたとえは、動植物をよく観察した本草学者の益軒らしいものです。「一世の人を以て一世の人を治む」は、どの時代にも必要な人材は生まれているという考えで、乱世の原因を人材不足ではなく用い方の誤りに求めています。「人がいない」と嘆く管理職への鋭い指摘であり、部下の長所を見つけて生かすことこそ上に立つ者の仕事だと教えてくれます。

この章句が説くこと

用人長所人材適材君子

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