君子訓 / 巻之中
一君子と小人とは、譬へば水と火との如く、香と臭とのごとし。一時に相竝びては用ひがたし。小人用ひらるれば、君子の道は行はれずして、君子は終に小人の爲に讒せられて退くに至る。人を知る事、古人も是を難しといへり。人の言語容貌を見て其心底を知ることは、至明の人といへども必としがたし。孔子も其言を聞て其行を觀ると宣へり。觀とは、心を用ひて察するなり。古人は、人のすき好む事と、其人の親しき友の善惡を以て察し、又其平生行ふ所の善惡を見て、其人の賢不肖を知り、事を問ひ業を試みて、其材能の長短を知る。是古人人を知るの法なり。人を知り、時を以て君に告げて擧げ用ふるは、宰臣の職なり。
新字:一君子と小人とは、譬へば水と火との如く、香と臭とのごとし。一時に相並びては用ひがたし。小人用ひらるれば、君子の道は行はれずして、君子は終に小人の為に讒せられて退くに至る。人を知る事、古人も是を難しといへり。人の言語容貌を見て其心底を知ることは、至明の人といへども必としがたし。孔子も其言を聞て其行を観ると宣へり。観とは、心を用ひて察するなり。古人は、人のすき好む事と、其人の親しき友の善悪を以て察し、又其平生行ふ所の善悪を見て、其人の賢不肖を知り、事を問ひ業を試みて、其材能の長短を知る。是古人人を知るの法なり。人を知り、時を以て君に告げて挙げ用ふるは、宰臣の職なり。
書き下し
一君子と小人とは、譬へば水と火との如く、香と臭とのごとし。一時に相並びては用ひがたし。小人用ひらるれば、君子の道は行はれずして、君子は終に小人の為に讒せられて退くに至る。人を知る事、古人も是を難しといへり。人の言語容貌を見て其心底を知ることは、至明の人といへども必としがたし。孔子も其言を聞て其行を観ると宣へり。観とは、心を用ひて察するなり。古人は、人のすき好む事と、其人の親しき友の善悪を以て察し、又其平生行ふ所の善悪を見て、其人の賢不肖を知り、事を問ひ業を試みて、其材能の長短を知る。是古人人を知るの法なり。人を知り、時を以て君に告げて挙げ用ふるは、宰臣の職なり。
現代語訳
君子と小人とは、たとえば水と火、良い香りと悪臭のようなものです。同時に並べて用いることは難しいのです。小人が用いられれば、君子の道は行われず、君子はついに小人に讒言されて退くことになります。人を知ることは、昔の人もこれを難しいと言いました。人の言葉や容貌を見てその心の底を知ることは、このうえなく明らかな人でも確かにはできません。孔子も「その言葉を聞いて、その行いを観る」とおっしゃいました。観るとは、心を用いて察することです。昔の人は、その人の好むことと、その人の親しい友の善悪によって察し、またその人がふだん行うことの善悪を見て、その人が賢いか愚かかを知り、事を問い業を試みて、その才能の長所と短所を知りました。これが昔の人の人を知る方法です。人を知って、時機を見て君に告げ、推挙して用いるのは、宰臣の職です。
解説
この章句が説くこと
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