慎思録 / 巻之二
貧賤憂戚。庸玉汝於成。不可怨天也。橫逆之來。他山之石。可以攻玉。不可尤人也。是皆動心忍性。增益其所不能之事。乃君子進德修業力行勵學之時也。不可空放過。
新字:貧賤憂戚。庸玉汝於成。不可怨天也。横逆之来。他山之石。可以攻玉。不可尤人也。是皆動心忍性。增益其所不能之事。乃君子進徳修業力行励学之時也。不可空放過。
書き下し
貧賤憂戚は、庸て汝を成すに玉にす。天を怨むべからざるなり。横逆の来たるは、他山の石にして、以て玉を攻むべし。人を尤むべからざるなり。是れ皆心を動かし性を忍ばせ、其の能はざる所を増益するの事にして、乃ち君子の徳を進め業を修め力行勉学するの時なり。空しく放過すべからず。
現代語訳
貧しさや賤しさ、憂いや悲しみは、あなたを玉のように磨き上げて成就させるものです。天を恨んではなりません。理不尽な仕打ちが来るのは、他の山の石であって、それで自分という玉を磨くことができます。人を咎めてはなりません。これらはみな、心を奮い立たせ性を忍ばせて、できなかったことをできるようにさせる事であり、君子が徳を進め、業を修め、力を尽くして学ぶ時なのです。むなしく見過ごしてはなりません。
解説
逆境を自分を磨く機会と受け止めよ、という条です。「貧賤憂戚、庸て汝を成すに玉にす」は張載「西銘」の結びに近い句、「他山の石、以て玉を攻むべし」は『詩経』小雅・鶴鳴、「心を動かし性を忍ばせ、其の能はざる所を増益す」は『孟子』告子下の言葉です。三つの古典をつないで、天も人も恨まない理由を示しています。理不尽な上司や厳しい環境に置かれた時、それを恨むだけで終わらせず、自分が伸びる時と見る視点を与えてくれます。
この章句が説くこと
逆境忍耐修業怨尤西銘
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