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新論 / 長計

後屬 中國多故、而遠人不至、廟堂無遠大之略、土疆日蹙、而 神聖所以經營天下之意熄矣、至若近世、則夷狄強梁、亦有見於大勢、挾素定之略、以逞其呑噬三百餘年、傲然敢舐糠於 神州、欲倒用 神聖所以御夷狄之略、反以謀 中國、而 中國未畫一定之策、朝野之論、一是一非、不免於因循苟且、以爲姑息之慮、以赫赫 神明之邦、而坐使腥羶異類陸梁我邊陲、不亦可羞乎、夫君師億兆、其氣足蓋世、胸臆足容四海、從容處天下之事而有餘者、制人者也、所見不過目前利害者、事多出於思慮之外、不能運天下於胸中、制於人者也、海外之事、目之所未嘗見、故黠虜得以吾思慮所未及者而侮弄之、亦不足怪也、

新字:後属 中国多故、而遠人不至、廟堂無遠大之略、土疆日蹙、而 神聖所以経営天下之意熄矣、至若近世、則夷狄強梁、亦有見於大勢、挟素定之略、以逞其呑噬三百余年、傲然敢舐糠於 神州、欲倒用 神聖所以御夷狄之略、反以謀 中国、而 中国未画一定之策、朝野之論、一是一非、不免於因循苟且、以為姑息之慮、以赫赫 神明之邦、而坐使腥羶異類陸梁我辺陲、不亦可羞乎、夫君師億兆、其気足蓋世、胸臆足容四海、従容処天下之事而有余者、制人者也、所見不過目前利害者、事多出於思慮之外、不能運天下於胸中、制於人者也、海外之事、目之所未嘗見、故黠虜得以吾思慮所未及者而侮弄之、亦不足怪也、

書き下し

後中国多故に属して、遠人至らず、廟堂遠大の略無く、土疆日に蹙まりて、神聖の天下を経営する所以の意熄む。近世の若きに至りては、則ち夷狄強梁にして、亦大勢に見る有り、素定の略を挟みて、以て其の呑噬を逞しくすること三百余年、傲然として敢へて糠を神州に舐め、神聖の夷狄を御する所以の略を倒用して、反つて以て中国を謀らんと欲す。而して中国未だ一定の策を画せず、朝野の論、一是一非、因循苟且にして、以て姑息の慮を為すを免れず。赫赫たる神明の邦を以てして、坐して腥羶の異類をして我が辺陲に陸梁せしむ、亦羞づべからずや。夫れ億兆に君師たる、其の気世を蓋ふに足り、胸臆四海を容るるに足り、従容として天下の事に処して余り有る者は、人を制する者なり。見る所目前の利害に過ぎざる者は、事多く思慮の外に出で、天下を胸中に運らすこと能はず、人に制せらるる者なり。海外の事、目の未だ嘗て見ざる所、故に黠虜以て吾が思慮の未だ及ばざる所を以て之を侮弄するを得。亦怪しむに足らざるなり。

現代語訳

その後わが国は多事多難となり、遠方の人々は来なくなり、朝廷には遠大な策略がなく、国土は日に日に縮まって、神々や聖なる天皇たちが天下を経営した志は消えてしまった。近世になると、夷狄(西洋諸国)は強く荒々しく、彼らもまた大きな形勢を見通し、前もって定めた策略を抱いて、三百年余りにわたり諸国を呑み込んでほしいままにし、傲然として日本に手を伸ばし(糠を舐めるように端から侵し)、神聖な天皇たちが夷狄を制した策略を逆用して、かえってわが国を狙おうとしている。ところがわが国はまだ一定の策を定めておらず、朝廷でも民間でも議論は是としたり非としたりで定まらず、古いやり方に従ってその場しのぎを続け、一時逃れの考えに陥ることを免れていない。輝かしい神明の国でありながら、なまぐさい異国の者がわが辺境を荒らし回るのを座視している。恥ずべきことではないか。そもそも万民の君主・師である者が、その気概は世を覆うほどで、胸の内は四海を容れるほど広く、ゆったりと天下の事に対処して余裕がある、これが人を制する者である。見えているのが目前の利害だけの者は、事態の多くが思いもよらない形で起こり、天下を胸の内でめぐらすことができない、これが人に制せられる者である。海外の事は、まだ目で見たことがないものだから、ずる賢い敵がわが思慮の及ばないところを突いて翻弄するのも、怪しむに足りない。

解説

古代の遠大な構想が後世に失われたのに対し、西洋諸国は三百年余り大勢を見据えた策略で各地を併呑してきたと正志斎は対比する。日本には一定の策がなく議論は定まらず、その場しのぎに終わっていると批判し、天下を胸中に運らす者は人を制し、目前の利害しか見ない者は人に制せられると説く。西洋を「腥羶の異類」と呼ぶ表現は当時の攘夷的な危機意識から出たものである。見たことのない領域こそ相手につけ込まれるという指摘は、情報や想像力の不足が組織を受け身にするという普遍的な教えとして読める。

この章句が説くこと

長計主導権戦略危機情報新論

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