墨子 / 尚同中
故古者聖王唯壹以尚同以為正長,是上下請謁為通。上有隠事遺利,下得而利之;下有蓄怨積害,上得而除之。是以數千萬里之外有為善者,其室人未徧知,鄉里未徧聞,天子得而賞之;數千萬里之外有為不善者,其室人未徧知,郷里未徧聞,天子得而罰之。是以舉天下之人皆恐懼振動惕慄,不敢為淫暴,曰:「天子之視聴也神。」先王之言曰:「非神也,夫唯能使人之耳目助己視聴,使人之吻助己言談,使人之心助己思慮,使人之股肱助己動作。」助之視聴者衆,則其所聞見者逺矣;助之言談者衆,則其徳音之所撫循者博矣;助之思慮者衆,則其謀慮速得矣;助之動作者衆,則其舉事速成矣。
新字:故古者聖王唯壱以尚同以為正長,是上下請謁為通。上有隠事遺利,下得而利之;下有蓄怨積害,上得而除之。是以数千万里之外有為善者,其室人未遍知,郷里未遍聞,天子得而賞之;数千万里之外有為不善者,其室人未遍知,郷里未遍聞,天子得而罰之。是以舉天下之人皆恐懼振動惕慄,不敢為淫暴,曰:「天子之視聴也神。」先王之言曰:「非神也,夫唯能使人之耳目助己視聴,使人之吻助己言談,使人之心助己思慮,使人之股肱助己動作。」助之視聴者衆,則其所聞見者遠矣;助之言談者衆,則其徳音之所撫循者博矣;助之思慮者衆,則其謀慮速得矣;助之動作者衆,則其舉事速成矣。
書き下し
故に古者、聖王は唯だ壹に尚同を以て正長と為す。是れ上下、請謁して通を為す。上に隠事遺利有れば、下、得て之を利し、下に蓄怨積害有れば、上、得て之を除く。是を以て數千萬里の外に善を為す者有れば、其の室人未だ徧く知らず、鄉里未だ徧く聞かざるに、天子、得て之を賞す。數千萬里の外に不善を為す者有れば、其の室人未だ徧く知らず、郷里未だ徧く聞かざるに、天子、得て之を罰す。是を以て天下の人を舉げて皆な恐懼振動惕慄して、敢えて淫暴を為さず、曰く、「天子の視聴や神なり」と。先王の言に曰く、「神に非ざるなり。夫れ唯だ能く人の耳目をして己が視聴を助けしめ、人の吻をして己が言談を助けしめ、人の心をして己が思慮を助けしめ、人の股肱をして己が動作を助けしむればなり」と。之を視聴するを助くる者衆ければ、則ち其の聞見する所の者は逺し。之を言談するを助くる者衆ければ、則ち其の徳音の撫循する所の者は博し。之を思慮するを助くる者衆ければ、則ち其の謀慮は速やかに得らる。之を動作するを助くる者衆ければ、則ち其の事を舉ぐること速やかに成る。
現代語訳
だから昔の聖王は、ひたすら尚同によって長を立てた。だから上下のあいだで願い出も報告も通った。上に隠れた事柄や見落とされた利があれば下がそれを活かし、下に積もった怨みや害があれば上がそれを除く。だから数千万里の外で善を行う者がいれば、その家人がまだ知らず郷里がまだ聞いていないうちに、天子がそれを知って賞した。数千万里の外で不善を行う者がいれば、その家人がまだ知らず郷里がまだ聞いていないうちに、天子がそれを知って罰した。だから天下の人はみな恐れおののき、あえて乱暴をせず、「天子の見聞きは神のようだ」と言った。先王の言葉にいう。「神ではない。ただ、人の耳目に自分の見聞きを助けさせ、人の口に自分の言葉を助けさせ、人の心に自分の思慮を助けさせ、人の手足に自分の動作を助けさせることができるからだ」。見聞きを助ける者が多ければ、聞き及ぶ範囲は遠くなる。言葉を助ける者が多ければ、その徳ある声が行きわたる範囲は広くなる。思慮を助ける者が多ければ、考えは速くまとまる。動作を助ける者が多ければ、事は速く成る。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』尚同下是の故に古の聖王の天下を治むるや、千里の外に賢人有り、其の鄉里の人、皆な未だ之を均しく聞き見ざるに、聖王、得て之を賞す。千里の外に暴人有り、其の鄉里、未だ之を均しく見ざるに、聖王、得て之を罰す。故に唯だ聖王を以て耳聡く目明らかなりと為す毋からんや。豈に能く一たび視て千里の外を通見せんや、一たび聴きて千里の外を通聞せんや。聖王は往きて視るにあらざるなり、就きて聴くにあらざるなり。然れども天下の冦亂盜賊を為す者をして、天下を周流するも足を重ぬる所無からしむるは、何ぞや。其の尚同を以て政を為すこと善ければなり。
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言志四録・言志晩録 第百十八条 崎人の話余往年崎に遊び、崎人の話を聞く。曰く、「漢土に不逞の徒有り、多く満州に出奔し、満より再び蕃舶に投ず。故に蕃舶の中往往漢人有りて、之が耳目と為る。憎むべきの甚しきなり。今漢満一家にして、関門厳ならず。奈何ともすべからず」と。此の話徒に聞くべきに非ず。
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孫子・九地篇能く士卒の耳目を愚にして、之をして知ること無からしむ。其の事を易え、其の謀を革めて、人をして識ること無からしむ。其の居を易え、其の途を迂にして、人をして慮ることを得ざらしむ。
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『墨子』迎敵祠凡そ氣を望むに、大将の氣有り、小将の氣有り、往く氣有り、來たる氣有り、敗るる氣有り。能く此を得眀らかにする者は、成敗・吉凶を知る可し。巫・醫・卜を舉げて所有らしめ、長く藥を具え、之を宫にし、善く舍を為る。巫は必ず公社に近くし、必ず之を敬神す。巫卜、以て守に請い、守、獨り巫卜の望むの氣の請を智るのみ。
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『墨子』號令守樓は質宫に臨みて善く周し、必ず宻に樓を塗り、下をして上を見る無く、上は下を見、下は上に人有ると人無きとを知る無からしむ。守の親しく舉ぐる所の吏の貞亷忠信にして害無く事に任ず可き者は、其の飲食酒肉、禁ずる勿かれ。錢金・布帛・財物は各おの自ら之を守り、慎んで相い盜む勿かれ。葆宫の牆は必ず三重、牆の垣、守る者、皆な瓦釜を牆上に累ぬ。門に吏有り、門里を主る者、筦閉には必ず太守の節を須つ。葆衛には必ず戍卒の重厚なる者を取り、吏の忠信なる者、害無く事に任ず可き者を擇ぶを請う。将衛をして自ら十尺の垣を築き、周く牆を還らしむ。門・閨なる者は、令衛の司馬門に非ず。氣を望む者の舍は必ず太守に近くし、巫の舍は必ず公社に近くし、必ず之を敬神す。巫・祝・史と氣を望む者とは、必ず善言を以て民に告げ、請を以て守上に報じ、守、獨り其の請を知るのみ。氣を望むに與らずして妄りに不善の言を為して民を驚恐せしむれば、斷じて赦す勿かれ。
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