新論 / 守禦
夫天下宜釐革者有四、其一曰修内政、其目四、興士風也、禁奢靡也、安萬民也、擧賢才也、夫士風之敗、由國無廉恥、而所以勵廉恥者、則在賞罰之用也、故其制刑賞予奪、必原父子之親、立君臣之義以權之、苟可賞也、雖卿相之位國郡之封不吝、可罰也、雖貴戚權勢不避、道之所存、義之所在、則雖無法之賞無政之令、無行而不可、而其平居所以激勵士大夫者、雖一顰一笑、而未嘗不足興起惰頑、故其勸勉懲戒之、必如 東照宮及當時名賢磨勵士衆者、則士風有不興乎、
新字:夫天下宜釐革者有四、其一曰修内政、其目四、興士風也、禁奢靡也、安万民也、挙賢才也、夫士風之敗、由国無廉恥、而所以励廉恥者、則在賞罰之用也、故其制刑賞予奪、必原父子之親、立君臣之義以権之、苟可賞也、雖卿相之位国郡之封不吝、可罰也、雖貴戚権勢不避、道之所存、義之所在、則雖無法之賞無政之令、無行而不可、而其平居所以激励士大夫者、雖一顰一笑、而未嘗不足興起惰頑、故其勧勉懲戒之、必如 東照宮及当時名賢磨励士衆者、則士風有不興乎、
書き下し
夫れ天下の宜しく釐革すべき者四有り。其の一に曰く、内政を修む。其の目四、士風を興すなり、奢靡を禁ずるなり、万民を安んずるなり、賢才を挙ぐるなり。夫れ士風の敗るるは、国に廉恥無きに由る。而して廉恥を励ます所以の者は、則ち賞罰の用に在り。故に其の刑賞予奪を制するや、必ず父子の親に原づき、君臣の義を立てて以て之を権る。苟も賞すべくんば、卿相の位・国郡の封と雖も吝しまず、罰すべくんば、貴戚権勢と雖も避けず。道の存する所、義の在る所は、則ち無法の賞、無政の令と雖も、行ふとして可ならざる無し。而して其の平居士大夫を激励する所以の者は、一顰一笑と雖も、未だ嘗て惰頑を興起するに足らずんばあらず。故に其の之を勧勉懲戒する、必ず東照宮及び当時の名賢の士衆を磨励せし者の如くんば、則ち士風興らざること有らんや。
現代語訳
そもそも天下で改めるべきことが四つある。その第一は内政を整えることで、その項目は四つある。士風を興すこと、贅沢を禁じること、万民を安んじること、賢才を登用することである。そもそも武士の気風が崩れるのは、国に廉恥の心がないからである。そして廉恥を励ますてだては、賞罰の用い方にある。だから刑罰と恩賞、与えることと奪うことを定めるには、必ず父子の親しみに基づき、君臣の義を立てて、これによって判断する。もし賞すべきであれば、大臣の位や国郡の領地であっても惜しまず、罰すべきであれば、貴い親族や権勢ある者であっても避けない。道のあるところ、義のあるところであれば、規定にない恩賞、通常の政令によらない命令であっても、行って不可なことはない。そして平素に武士たちを励ますには、一度眉をひそめ一度笑うことにさえ、怠け者や頑なな者を奮い立たせる力がないことはない。だから人々を励まし戒めることが、必ず東照宮(徳川家康)や当時の名賢たちが武士たちを鍛えたようであれば、士風が興らないことがあろうか。
解説
この章句が説くこと
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『政談』諸役人に器量を選ふ事其の本は御老中若老中を家筋ばかりにて仰せ付けられて、上下の分別特の外に立ちたる故、自然と役人高ぶり強く、斯の如くなりたるなり、唯々御老中若老中底心より人を見出すことを御奉公の第一と早く余り指図をも押へ扣へをもせず、離し掛て人を使ひ、少々の無調法をば咎めず、功あるをば賞し、立身を取りもちてさするやうならは、器量の人はいつも出づべきなり、諸役人に器量在る人出ては、御政務は御心の儘成へし、左はなくて上の御指図にて人を使ひ玉はゝ、人才は次第に消え行くべきなり、
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『新論』守禦夫れ天下の事、是の利有れば必ず是の害有り、二者相倚らざる莫し。易に曰く、利は義の和なりと。苟も義を以て利と為すに非ざるよりは、則ち所謂利なる者、未だ其の利たるを見ざるなり。今士風を興さんと欲して、義利弁ぜざれば、則ち忠邪混淆し、其の賞罰予奪する所以の者、皆其の当を失ひ、以て世を擾すべくして、以て俗を励ますべからず。以て奢靡を禁ぜんと欲せば、則ち上下怠慢にして、貨賂潜かに行はれ、勤倹の風致し難し。以て万民を安んぜんと欲せば、則ち物情壅蔽し、上下相睽きて、戒慎勤苦する所以の者其の実に非ず。賢才を挙げんと欲せば、則ち請託以て行はれ、驕兵を汰せば、則ち怨讟以て作る。
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