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新論 / 虜情

且彼停住往來我海上、其針路之難易、港嶴之曲折、風土人情、莫不諳熟焉、使彼獲由而據東南諸島、〈東南諸島、接近小笠原島者極多、〉以次及八丈掖玖種子等島、盤踞以爲巢窟、則其於圖 中國、勢甚爲便、是亦一擧而兩利存焉、故其與鄂羅合謀伺我邊徼、欲與濟其欲分其利、亦勢之可見者也、然則其漁商海上而不肯去、亦欲襲趙充國制氐羗之故智歟、何虜之甚智而 我未之察也、

新字:且彼停住往来我海上、其針路之難易、港嶴之曲折、風土人情、莫不諳熟焉、使彼獲由而拠東南諸島、〈東南諸島、接近小笠原島者極多、〉以次及八丈掖玖種子等島、盤踞以為巣窟、則其於図 中国、勢甚為便、是亦一挙而両利存焉、故其与鄂羅合謀伺我辺徼、欲与済其欲分其利、亦勢之可見者也、然則其漁商海上而不肯去、亦欲襲趙充国制氐羗之故智歟、何虜之甚智而 我未之察也、

書き下し

且つ彼の我が海上に停住往来する、其の針路の難易、港嶴の曲折、風土人情、諳熟せざる莫し。彼をして由りて東南の諸島に拠ることを獲しめ(東南の諸島、小笠原島に接近する者極めて多し)、次を以て八丈・掖玖・種子等の島に及び、盤踞して以て巣窟と為さば、則ち其の中国を図るに於いて、勢甚だ便と為す。是れ亦一挙にして両利存す。故に其の鄂羅と謀を合はせて我が辺徼を伺ひ、与に其の欲を済し其の利を分かたんと欲するも、亦勢の見るべき者なり。然らば則ち其の海上に漁商して去るを肯ぜざるは、亦趙充国の氐羌を制するの故智を襲はんと欲するか。何ぞ虜の甚だ智にして、我未だ之を察せざるや。

現代語訳

しかも彼らはわが国の海上にとどまったり行き来したりしているので、航路の難易、港や入り江の入り組みぐあい、風土や人情まで、知り尽くしていないものはない。もし彼らがそれを手がかりに東南の島々を占拠し(東南の島々には、小笠原島に近いものがきわめて多い)、次々と八丈島・屋久島(掖玖)・種子島などに及んで、居座って巣窟とすれば、わが国(中国)を狙ううえできわめて都合がよい。これもまた一挙に二つの利がある。だからイギリスがロシアと謀を合わせてわが辺境をうかがい、ともに欲望を遂げ利益を分け合おうとしているのも、その勢いからして見てとれることである。そうであれば、彼らが海上で漁や商売をしてなかなか去ろうとしないのは、これもまた趙充国が屯田によって氐・羌を制した昔の知恵をなぞろうとしているのだろうか。なんと彼らは賢く、わが方はまだそれを察していないことか。

解説

正志斎は、外国船が日本近海に長くとどまることで航路や港、風土人情を知り尽くし、小笠原や八丈島、屋久島・種子島などの島々を拠点にされる危険を指摘する。前漢の将軍趙充国が辺境に屯田を置いて長期戦で羌族を制した故事を引き、漁や交易を長期の足場づくりとみるのである。実際、のちに小笠原諸島には欧米系の人々が住みつき、領有が問題となった。日常の出入りを通じて相手がこちらの内情を知り尽くしていくことへの警戒は、情報管理や拠点の確保という点で、現代の組織にも示唆を与える。

この章句が説くこと

虜情海防拠点情報防衛長計

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