新論 / 虜情
昔諸葛亮將伐魏、先征南蠻、以足兵甲、而魏君臣寂然無聞、兵出而朝野震動、今虜亦將襲亮之故智歟、何虜之甚智、而我未之察也、嚮者 幕府嘗喩鄂羅以國法曰、番舶近邊、當摧之海上、今諳厄利常常停泊、而未之駈、雖其登陸者、亦慰撫遣之、使外夷聞之、將謂國法何也、而諳厄利者、亦徜徉自肆、圖畫吾山川、妨害吾運輸、而誘吾人民、啗以貨利、眩以妖敎、異日脱使姦闌愈多、而接濟不禁則變之寓於不測者、可勝言乎、而偸安之徒、動謂彼爲漁爲商、固其常事、不足深慮焉、何其不思之甚也、
新字:昔諸葛亮将伐魏、先征南蠻、以足兵甲、而魏君臣寂然無聞、兵出而朝野震動、今虜亦将襲亮之故智歟、何虜之甚智、而我未之察也、嚮者 幕府嘗喩鄂羅以国法曰、番舶近辺、当摧之海上、今諳厄利常常停泊、而未之駈、雖其登陸者、亦慰撫遣之、使外夷聞之、将謂国法何也、而諳厄利者、亦徜徉自肆、図画吾山川、妨害吾運輸、而誘吾人民、啗以貨利、眩以妖教、異日脱使姦闌愈多、而接済不禁則変之寓於不測者、可勝言乎、而偸安之徒、動謂彼為漁為商、固其常事、不足深慮焉、何其不思之甚也、
書き下し
昔諸葛亮将に魏を伐たんとし、先づ南蛮を征して、以て兵甲を足す。而して魏の君臣寂然として聞く無く、兵出でて朝野震動す。今虜も亦将に亮の故智を襲はんとするか。何ぞ虜の甚だ智にして、我未だ之を察せざるや。嚮者幕府嘗て鄂羅に喩すに国法を以てして曰く、番舶辺に近づかば、当に之を海上に摧くべしと。今諳厄利常常停泊すれども、未だ之を駆らず。其の陸に登る者と雖も、亦慰撫して之を遣る。外夷をして之を聞かしめば、将に国法を何とか謂はんとす。而して諳厄利なる者も、亦徜徉して自ら肆にし、吾が山川を図画し、吾が運輸を妨害し、而して吾が人民を誘ひ、啗はすに貨利を以てし、眩はすに妖教を以てす。異日脱し姦闌をして愈々多からしめて、接済禁ぜずんば、則ち変の不測に寓する者、勝げて言ふべけんや。而るに偸安の徒、動もすれば謂ふ、彼は漁を為し商を為す、固より其の常事にして、深く慮るに足らずと。何ぞ其れ思はざるの甚だしきや。
現代語訳
昔、諸葛亮は魏を討とうとして、まず南蛮を征伐して兵と武具を充実させた。魏の君臣はひっそりとして何も耳にしなかったが、いざ兵が出ると朝廷も民間も震え上がった。いまロシア・イギリスもまた諸葛亮の昔の知恵をなぞろうとしているのだろうか。なんと彼らは賢く、わが方はまだそれを察していないことか。かつて幕府はロシアに国法を諭して「異国船が近海に来れば、海上で打ち砕くべし」と言った。ところが今イギリスはしばしば停泊しているのに、まだ追い払っていない。陸に上がった者でさえ、なだめていたわって帰している。外国人がこれを聞けば、国法をどう思うだろうか。そしてイギリス人もまた勝手気ままにふるまい、わが山川を絵図に描き、わが海運を妨げ、わが人民を誘って、財貨の利で釣り、邪な教えで惑わしている。もし後日、みだりに入りこむ者がいよいよ増え、彼らへの物資の供給を禁じなければ、思いもよらないところに潜む変事は、数えきれないほどになるだろう。それなのに目先の安楽をむさぼる者たちは、何かといえば「彼らは漁をしたり商売をしたりしているだけで、それはもとより当たり前のことだから、深く心配するには及ばない」と言う。なんと考えの足りないことか。
解説
この章句が説くこと
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