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政談 / 大坂在番の事

且又た主人死する上は主なき家來を御城內に差置き難きと云ふことか、小の御番城は家來計りにて守らするもあるなり、相番の番頭預りて下知せは苦しかるまじきことなり、惣じて大坂在番は餘りに法嚴しくて宜しからざるやうなり、凡て人は唯々居られぬものなり、御番所は各別、面々の小屋にては一組獨吟のうたひは苦しかるまじきことなり、笛又は樂の笙ひちりきなど覺えたらん人は是亦苦しかるまじきことなり、然るに一切に鳴物を禁して忌中に似たるも宜しからざることなり、御番衆なりをしつめて不斷に居る故食物に物入り夥し、或は博奕などすることに成るなり、惣じて大名の屋敷にても、餘り法嚴しき家中は必す博奕淫亂はやる者なり、

新字:且又た主人死する上は主なき家来を御城内に差置き難きと云ふことか、小の御番城は家来計りにて守らするもあるなり、相番の番頭預りて下知せは苦しかるまじきことなり、惣じて大坂在番は余りに法厳しくて宜しからざるやうなり、凡て人は唯々居られぬものなり、御番所は各別、面々の小屋にては一組独吟のうたひは苦しかるまじきことなり、笛又は楽の笙ひちりきなど覚えたらん人は是亦苦しかるまじきことなり、然るに一切に鳴物を禁して忌中に似たるも宜しからざることなり、御番衆なりをしつめて不断に居る故食物に物入り夥し、或は博奕などすることに成るなり、惣じて大名の屋敷にても、余り法厳しき家中は必す博奕淫乱はやる者なり、

書き下し

且又た主人死する上は主なき家来を御城内に差置き難きと云ふことか、小の御番城は家来計りにて守らするもあるなり、相番の番頭預りて下知せは苦しかるまじきことなり、惣じて大坂在番は余りに法厳しくて宜しからざるやうなり、凡て人は唯々居られぬものなり、御番所は各別、面々の小屋にては一組独吟のうたひは苦しかるまじきことなり、笛又は楽の笙ひちりきなど覚えたらん人は是亦苦しかるまじきことなり、然るに一切に鳴物を禁して忌中に似たるも宜しからざることなり、御番衆なりをしつめて不断に居る故食物に物入り夥し、或は博奕などすることに成るなり、惣じて大名の屋敷にても、余り法厳しき家中は必す博奕淫乱はやる者なり、

現代語訳

またさらに、主人が死んだ以上、主のない家来を御城内に置いておけないということか。小さな御番城では、家来ばかりで守らせることもある。相番の番頭が預かって指図すれば差し支えないことである。総じて大坂在番はあまりに法が厳しくてよくないようである。およそ人はただじっとしてはいられないものである。御番所は別として、それぞれの小屋では、一人で謡う独吟の謡は差し支えないことである。笛、または雅楽の笙・篳篥などを覚えている人も、これまた差し支えないことである。それなのに一切の鳴り物を禁じて、忌中のようにしているのもよくないことである。御番衆が鳴りを静めて常にいるので、食べ物に出費がおびただしい。あるいは博奕などをすることになるのである。総じて大名の屋敷でも、あまりに法の厳しい家中では、必ず博奕や淫乱がはやるものである。

解説

大坂在番の規律が厳しすぎ、鳴り物まで一切禁じられているため、番衆は鬱屈して飲食に金を使い、博奕に走ると徂徠は見る。「人は唯々居られぬもの」という人間理解に立ち、健全な楽しみを許すことがかえって規律を守らせると説くのである。法の厳しい家中ほど博奕や淫乱がはやるという観察は鋭い。現代の組織でも、締め付けを強めすぎると、見えないところでより悪い形の逸脱が生まれる。息抜きの余地を設計に組み込むことの大切さを教える。

この章句が説くこと

規律人情博奕息抜き在番法

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