新論 / 國體上
而天下無之怪也、身操天下之權、而稱臣於異邦、使異邦視 天朝如藩臣、虧國體也甚矣、而天下無之怪也、名節墜地、而君臣之義廢矣、民俗日趨薄惡、而遺報本反始之義、知家督之可利、而不知血胤之可重、或養異姓子以爲己子、他人可以爲父子、則父子可以爲他人、夫誰復知天倫之不可易、其甚者、則雖皇子皇孫、悉爲薙染之流、使 天胤不絶如綫、而天下無之怪也、彝倫以斁、而父子之恩廢矣、
新字:而天下無之怪也、身操天下之権、而称臣於異邦、使異邦視 天朝如藩臣、虧国体也甚矣、而天下無之怪也、名節墜地、而君臣之義廃矣、民俗日趨薄悪、而遺報本反始之義、知家督之可利、而不知血胤之可重、或養異姓子以為己子、他人可以為父子、則父子可以為他人、夫誰復知天倫之不可易、其甚者、則雖皇子皇孫、悉為薙染之流、使 天胤不絶如綫、而天下無之怪也、彝倫以斁、而父子之恩廃矣、
書き下し
而るに天下之を怪しむ無きなり。身天下の権を操りて、臣を異邦に称し、異邦をして天朝を視ること藩臣の如くならしむ。国体を虧くこと甚し。而るに天下之を怪しむ無きなり。名節地に墜ちて、君臣の義廃る。民俗日に薄悪に趨きて、本に報い始めに反るの義を遺れ、家督の利とすべきを知りて、血胤の重んずべきを知らず。或は異姓の子を養ひて以て己が子と為す。他人以て父子と為すべくんば、則ち父子以て他人と為すべし。夫れ誰か復た天倫の易ふべからざるを知らん。其の甚しき者は、則ち皇子皇孫と雖も、悉く薙染の流と為し、天胤をして絶えざること綫の如くならしむ。而るに天下之を怪しむ無きなり。彝倫以て斁れて、父子の恩廃る。
現代語訳
それなのに天下の人はこれを怪しまなかった。自ら天下の権力を握りながら外国に臣と称し、外国に天朝を属国の臣のように見させた。国体を損なうことはなはだしい。それなのに天下の人はこれを怪しまなかった。名分と節義は地に落ち、君臣の義は廃れた。民の風俗は日に日に薄く悪くなり、根本に報い始めに立ち返る意義を忘れ、家督が利益になることは知っても、血筋を重んじるべきことを知らない。あるいは他姓の子を養って自分の子とする。他人を父子とすることができるなら、父子も他人とすることができる。いったい誰がもう、人倫の秩序は変えられないものだと知っていようか。ひどいものになると、皇子や皇孫であっても、ことごとく剃髪して僧衣をまとう者とし、天照大神の子孫を、糸のように細くかろうじて絶えない状態にした。それなのに天下の人はこれを怪しまなかった。人倫の道は破れ、父子の恩は廃れた。
解説
この章句が説くこと
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『新論』國體上昔や国造・伴造、世々祖業を承けて、其の祀を墜さず。中ごろや王族廷臣、宗族を緝合して、以て其の爵位を保つ。下りて近古に及びても、武夫猛将、猶ほ能く総領を重んじて、以て家衆を管轄す。夫れ既に自ら血属を重んずれば、孰か敢へて天胤を敬せざらん。故に一世を挙げて皆天位の犯すべからざるを知る。逆順既に明かなれば、則ち大逆なる者は固より世の与せざる所にして、将に天地に容るる無からんとす。亦悪くんぞ醜類を鳩聚して以て其の姦を逞しくするを得んや。故に国歩の時に或は艱難有りと雖も、天胤の尊は自若たり。上は則ち乗輿或は播遷すれども、未だ嘗て一人も敢へて神器を朶頤する有らず。下は則ち陪臣世々天下の権を擅にすれども、亦敢へて其の主位を簒はず。
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『新論』國體上帝王の恃みて以て四海を保ち、久安長治、天下動揺せざる所の者は、万民を畏服し一世を把持するの謂に非ずして、億兆心を一にし、皆其の上に親しみて之を離るるに忍びざるの実誠、恃むべきなり。夫れ天地剖判して始めて人民有りしより、天胤四海に君臨し、一姓歴歴として、未だ嘗て一人も敢へて天位を覬覦する有らずして、以て今日に至る者は、豈其れ偶然ならんや。夫れ君臣の義は、天地の大義なり。父子の親は、天下の至恩なり。義の大なる者と恩の至れる者と、天地の間に並び立ち、漸漬積累して、人心に洽浹し、久遠にして変ぜず。此れ帝王の天地を経緯し億兆を綱紀する所以の大資なり。
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