新語 / 懷慮
懷異慮者不可以立計,持兩端者不可以定威。故治外者必調內,平遠者必正近。綱維天下,勞神八極者,則憂不存於家。養氣治性,思通精神,延壽命者,則志不流於外。據土子民,治國治眾者,不可以圖利,治產業,則教化不行,而政令不從。蘇秦、張儀,身尊於位,名顯於世,相六國,事六君,威振山東,橫說諸侯,國異辭,人異意,欲合弱而制彊,持衡而御縱,內無堅計,身無定名,功業不平,中道而廢,身死於凡人之手,為天下所笑者,乃由辭語不一,而情欲放佚故也。
新字:懐異慮者不可以立計,持両端者不可以定威。故治外者必調内,平遠者必正近。綱維天下,労神八極者,則憂不存於家。養気治性,思通精神,延寿命者,則志不流於外。拠土子民,治国治衆者,不可以図利,治産業,則教化不行,而政令不従。蘇秦、張儀,身尊於位,名顕於世,相六国,事六君,威振山東,横説諸侯,国異辞,人異意,欲合弱而制彊,持衡而御縦,内無堅計,身無定名,功業不平,中道而廃,身死於凡人之手,為天下所笑者,乃由辞語不一,而情欲放佚故也。
書き下し
異慮を懐く者は以て計を立つ可からず、両端を持する者は以て威を定む可からず。故に外を治むる者は必ず内を調え、遠きを平らぐる者は必ず近きを正す。天下を綱維し、神を八極に労する者は、則ち憂い家に存せず。気を養い性を治め、思い精神に通じ、寿命を延ばす者は、則ち志外に流れず。土に据り民を子とし、国を治め衆を治むる者は、以て利を図る可からず。産業を治むれば、則ち教化行われずして、政令従わず。蘇秦・張儀は、身は位に尊く、名は世に顕われ、六国に相として、六君に事え、威は山東に振い、諸侯に横説す。国ごとに辞を異にし、人ごとに意を異にして、弱を合わせて彊を制し、衡を持して縦を御せんと欲す。内に堅計無く、身に定名無く、功業平らかならず、中道にして廃れ、身は凡人の手に死し、天下の笑う所と為るは、乃ち辞語一ならずして、情欲放佚するに由るが故なり。
現代語訳
異なる考えを抱く者は、計を立てることができず、両端を持つ者は、威を定めることができません。だから外を治める者は必ず内を整え、遠くを平らげる者は必ず近くを正します。天下の綱紀を結び、精神を八方の果てまで労する者には、憂いは家に残りません。気を養い性を治め、思いが精神に通じ、寿命を延ばす者は、志が外に流れません。土地に拠って民を我が子のように治め、国と衆を治める者は、利を図ってはなりません。産業を治めれば、教化は行われず、政令も従われません。蘇秦と張儀は、身は位に尊く、名は世に顕れ、六国の宰相となり、六人の君に仕え、威は山東に振るい、諸侯に自在に説きました。国ごとに言葉を変え、人ごとに意を変え、弱い国を合わせて強い国を抑え、衡の策を持ちながら縦の策を御しようとしました。内に堅い計がなく、身に定まった名がなく、功業は平らかでなく、途中で廃れ、凡人の手で殺され、天下の笑い者となったのは、言葉が一つでなく、情欲が放縦であったからなのです。
解説
この章句が説くこと
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新語・懷慮故に物の可とする所は、道の宜しとする所に非ず。道の宜しとする所は、物の可とする所に非ず。是を以て事を制する者は□す可からず、道を設くる者は通ず可からず。目は以て精明にし、耳は以て聴を主り、口は以て味を別ち、鼻は以て芳を聞ぎ、手は以て之を持し、足は以て之を行く。各おの一性を受けて、両つながら兼ぬるを得ず。両つながら兼ぬれば則ち心惑い、二路なる者は行き窮まる。心を正して一たび堅くし、久しくして忘れざれば、上に在りて逸せず、下と為りて傷つかず。一を執りて物を統ぶれば、寡なしと雖も必ず衆し。心佚して情散ずれば、高しと雖も必ず崩る。気泄れて疾を生じ、寿命は長からず、顛倒して端無く、道を失いて行われず。故に気の感ずるの符は、清潔にして明光あり、情素の表は、恬暢にして和良なり。調密なる者は固く、安静なる者は詳らかなり。志定まり心平らかなれば、血脈乃ち彊し。政を秉りて両つながら図れば、其の中央を失い、戦士は耕さず、朝士は商わず、邪は直を奸さず、円は方を乱さず。違戻して相い錯り、撥剌として匡し難し。故に理めんと欲する君は、利の門を閉ざし、徳を積む家は、必ず災殃無し。利絶えて道著れ、武譲りて徳興る。斯れ乃ち持久の道、常行の法なり。
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