士規七則 / 第一則
一凡生為人、宜知人所以異於禽獸、蓋人有五倫、而君臣父子為最大、故人之所以爲人、忠孝爲本、
新字:一凡生為人、宜知人所以異於禽獣、蓋人有五倫、而君臣父子為最大、故人之所以為人、忠孝為本、
書き下し
一、凡そ生れて人たらば、宜しく人の禽獣に異なる所以を知るべし。蓋し人には五倫有り、而して君臣父子を最も大なりと為す。故に人の人たる所以は、忠孝を本と為す。
現代語訳
およそ人として生まれたからには、人が鳥や獣と異なるわけを知らなければならない。思うに、人には五つの人間関係の道(君臣・父子・夫婦・長幼・朋友)があり、その中で君臣と父子が最も大切である。だから人が人であるゆえんは、忠と孝を根本とする。
解説
第一則は、人間であることの意味から始まります。孟子は、人が衣食に満ち足りて安逸に暮らすだけで教えがなければ禽獣に近い、と言いました。松陰はその考えを受けて、人を人たらしめるのは人と人との間の道、すなわち五倫だとし、とりわけ主君への忠と親への孝を根本に置きます。現代の言葉に置き換えれば、自分を育て、支え、信頼を預けてくれた関係に誠実であることが人の基本だ、ということです。元服する少年に最初に説いたのが、能力ではなく人との関係のあり方だった点に、松陰の人間観がよく表れています。
この章句が説くこと
五倫忠孝人倫孟子人間観
関連する章句
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『初学訓』巻之一一人倫に五あり。一には父子、二には君臣、三には夫婦、四には長幼、五には朋友なり。是を五倫と名づく。倫は類なり。天下に人多しとはいへども、皆此五倫にこもれり。をぢをばなどは、親に類し、甥姪の輩は、子に類し、貴人尊者は、君に類し、万民の我よりいやしき輩は、すべて臣に類し、兄弟従兄弟は、長幼の内にあり。等輩の人は、朋友に類し、道を伝ふる師は、君父にひとし。是、五倫を以て、天下の人をかねたり。五倫の道とは、孟子曰く、父子親有り。君臣義有り。夫婦別有り。長幼序有り。朋友信有り。これなり。父は子を愛するに、義理の教を以てし、子は孝を行ふに、其力をつくし、君は臣をあはれみ、臣は身を忘れて忠を尽し、夫は婦に義あり、婦は夫に従ひつかへ、長は幼を愛し、幼は長者にしたがひ、朋友は互に信ありて、善をすすめ悪をいさめ、相たすけて頼しげあるべし。是、五倫の道なり。人の道として行ふべきこと、此外にさらに無し。此外に道を求むるは、天地聖人の道にあらず。
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『大和俗訓』巻之一・為学上人倫とは君臣、父子、夫婦、長幼、朋友の五なり。是を五倫といふ。又五品とも云ふ。天下に人多しといへど、その品をわかてば、此五品の外にはいでず。五倫にまじはる道は、君は臣をあはれみ、臣は君に忠をつくすべし。父は子をいつくしみ、子は親に孝をつくすべし。夫は婦に礼義あり、婦は夫をうやまひて、和順なるべし。長者は幼をめぐみ、幼きは長者をうやまふべし。兄弟も長幼の内にあり。朋友は互にまことありてたのもしく表裏なかるべし。此五倫の道は、仁義礼智信の五常の性にしたがひて、人倫にまじはる時に行ひ出せるなり。わが本性の外に求むる道にあらず。
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『初学訓』巻之一一五倫の道は、父母につかへて、孝を行ふを以て本とす。わが身は、父母よりうけたれば、父母は、わが身の本なり。其上、わが生れし初より、父母の養育によりて人となれり。生るると、育はるると、二の恩あり。其恩のふかく大にして窮りなきこと、山よりも高く、海よりも深くして、譬をとるに物なし。天地の、我をうみ、我を養へるに等し。この故に、孝を以て、仁を行ふの本とし、人倫の道の初とす。聖人の道は、五倫の道をあつく行ふを以てむねとす。中につきて、父母に孝をつくすを、五倫の初とし、百行の本とす。故に、古の君子は、孝において尤あつく行へり。よろづ才行うるはしくとも、孝に疎なれば、其余は見るに足らず。故に、人の子たる者は、まづ父母につかふる道を、早くまなびて知るべし。
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『慎思録』巻之二親義別序、四倫の道は、尊卑上下各々当に相励むべしと雖も、然れども下に繋かる所の者最も重し。故に忠孝貞順は、臣子婦幼為る者の当に特に行ふべき所なり。蓋し其の勢位下に在り。故に其の上に事ふる所の道は、君父夫兄の施す所と異なれり。相比較すべからざるなり。唯だ朋友の交はりは、其の当に信ずべき所の道、我と人と相同じくして上下の異無き者なり。其の勢位相敵するを以てなり。
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『五常訓』巻之一・総論一人の心は、ただ仁義礼智信の性なり。人の道は、唯君臣、父子、夫婦、長幼、朋友の人倫の行なり。五常の外に心なく、五倫の外に道なしと知るべし。これを知るは知なり。是を行ふは行なり。此外にさらに心と道とを求むべからず。如何となれば、天の心、天の道にそむけばなり。人となるものは、天地の内に生れ、天地の恵をうけて、身ををはるものなれば、とにかくに天地の道をたふとび、したがひ行ふべし。
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『初学訓』巻之一一およそ、人は恩を知るべし。恩を知るを以て人とす。恩を知らざれば、鳥獣に同じ。君に忠し、親に孝するも、君父の恩を報ずる道なり。此故に、恩を知れる人は、必ず親に孝あり、君に忠あり。恩を知らざる人は、忠孝なし。忠孝なければ、人たるの道を失ふ。いはんや人として、天地の大恩を忘るるは、天地のために、不孝の子なり、人道の本意を失へり。
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