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史記 / 酈生陸賈列伝

漢三年、酈生因言、知天之天者、王事可成、不知天之天者、王事不可成。王者以民人為天、而民人以食為天。夫敖倉、天下轉輸久矣、臣聞其下乃有藏粟甚多。楚人拔滎陽、不堅守敖倉、乃引而東、此乃天所以資漢也。方今楚易取而漢反卻、自奪其便、臣竊以為過矣。願足下急復進兵、收取滎陽、據敖倉之粟、塞成皋之險、則天下知所歸矣。上曰、善。

新字:漢三年、酈生因言、知天之天者、王事可成、不知天之天者、王事不可成。王者以民人為天、而民人以食為天。夫敖倉、天下転輸久矣、臣聞其下乃有蔵粟甚多。楚人抜滎陽、不堅守敖倉、乃引而東、此乃天所以資漢也。方今楚易取而漢反卻、自奪其便、臣竊以為過矣。願足下急復進兵、収取滎陽、拠敖倉之粟、塞成皋之険、則天下知所歸矣。上曰、善。

書き下し

漢三年、酈生因りて言ふ、「天の天を知る者は、王事成る可く、天の天を知らざる者は、王事成る可からず。王者は民人を以て天と為し、民人は食を以て天と為す。夫れ敖倉は、天下転輸すること久し、臣聞く其の下に乃ち藏粟甚だ多しと。楚人滎陽を抜くも、敖倉を堅守せずして、乃ち引きて東す、此れ乃ち天の漢を資くる所以なり。方今楚取り易くして漢反りて卻くは、自ら其の便を奪ふ、臣竊かに以て過ちと為す。願はくは足下急ぎ復た兵を進め、滎陽を収取し、敖倉の粟に拠り、成皋の険を塞がば、則ち天下帰する所を知らん」と。上曰く、「善し」と。

現代語訳

「組織の根本は人心にあり、人心の根本は生活の基盤(食)にある——だから兵站・実利の要所を押さえよ」という、統治と戦略の本質を説いた一段です。酈食其は、劉邦(漢王)に戦略を進言するにあたり、まず統治の根本原理を示します。『王者は民人を以て天と為し、民人は食を以て天と為す(王たる者は民を最も大切なもの=天とし、その民は食糧を最も大切なもの=天とする)』。つまり、国を治める者にとって最も重要なのは民の支持であり、その民の支持を得る根本は、彼らの生活の基盤である「食糧」を確保することだ、という洞察です(これが「民以食為天」の出典)。この原理に基づき、酈食其は具体的な戦略を説きます。「敖倉は、長年、天下の食糧が集積されてきた大穀倉で、膨大な備蓄がある。楚(項羽)は、栄陽を落としたのに、この敖倉をしっかり確保せず、東へ引き上げてしまった。これは、天が漢に味方している(好機を与えている)ということです。今、楚は攻めやすく、漢は逆に退いている。この好機を自ら手放すのは、過ちです。急いで進軍し、栄陽を取り戻し、敖倉の食糧を押さえ、要害を固めれば、天下は(食糧という基盤を握った)漢に帰服するでしょう」と。劉邦はこれを容れました。ここに、統治と戦略についての深い教訓があります。第一に、組織・国家の根本は「人心(人々の支持)」にあり、その人心の根本は「生活の基盤(食=経済)」にあるということ。どんな組織も、構成員(民・社員・顧客)の支持なしには成り立たず、その支持を得る土台は、彼らの生活・利益を保障することです。理念や武力より前に、まず人々の生活基盤を支えることが、支持の源泉になる(管仲の「衣食足りて礼節を知る」とも通じます)。第二に、戦略において、華々しい戦闘より、兵站・補給(食糧=経済基盤)という「地味だが決定的な要所」を押さえることの重要性。酈食其は、敵の隙(敖倉を確保しなかったこと)を突き、この兵站の要所を押さえよと説いた。勝敗を決めるのは、しばしば派手な戦いではなく、補給・資源という土台の確保です。第三に、好機を逃さず、すかさず動くこと。組織や事業で、人心(支持)の根本が生活・利益の基盤にあることを理解すること、華々しい活動より兵站・資源・経済基盤という決定的な要所を押さえること——酈食其の「民以食為天」と敖倉の戦略は、統治と戦略の本質を、鋭く教えます。

解説

あなたは、組織や事業の根本が「人々(社員・顧客・民)の支持」にあり、その支持の土台が彼らの生活・利益の基盤にあることを理解していますか?華々しい活動より、兵站・資源・経済基盤という「地味だが決定的な要所」を押さえられていますか?人心の根本を支えることを、理念や勢いより優先できていますか?

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