士道心得書 / 常禮と軍禮
士の禮に常變の二ッ有り、軍禮と常禮と也。軍禮といふは、本書に言如く出軍門出の儀式有り、或は勝閧、首實檢、戰塲、陣中、行軍等悉く禮式有り。常禮と云は、君禮、臣禮、親禮、婚禮、緣禮、迎禮、客禮、送禮、遠座禮、退座禮、祝嘉禮、喪禮等也。義滿卿願はせ給ふに依て、勅許有て、今川左京太夫氏賴、伊勢武藏守滿忠、小笠兵庫頭長秀等三人に仰せて、參議一統を選ばれ、武家應用の禮を組立て、是を躾方と名付く。今におゐて三流有り。
新字:士の礼に常変の二ッ有り、軍礼と常礼と也。軍礼といふは、本書に言如く出軍門出の儀式有り、或は勝閧、首実検、戦塲、陣中、行軍等悉く礼式有り。常礼と云は、君礼、臣礼、親礼、婚礼、縁礼、迎礼、客礼、送礼、遠座礼、退座礼、祝嘉礼、喪礼等也。義満卿願はせ給ふに依て、勅許有て、今川左京太夫氏頼、伊勢武蔵守満忠、小笠兵庫頭長秀等三人に仰せて、参議一統を選ばれ、武家応用の礼を組立て、是を躾方と名付く。今におゐて三流有り。
書き下し
士の禮に常變の二ッ有り、軍禮と常禮となり。軍禮といふは、本書に言ふ如く出軍門出の儀式有り、或は勝閧・首實檢・戰塲・陣中・行軍等悉く禮式有り。常禮と云ふは、君禮・臣禮・親禮・婚禮・緣禮・迎禮・客禮・送禮・遠座禮・退座禮・祝嘉禮・喪禮等なり。義滿卿願はせ給ふに依りて、勅許有りて、今川左京太夫氏賴・伊勢武藏守滿忠・小笠兵庫頭長秀等三人に仰せて、參議一統を選ばれ、武家應用の禮を組み立てて、是れを躾方と名付く。今におゐて三流有り。
現代語訳
士の礼には、常と変の二つがあり、軍礼と常礼です。軍礼とは、本書でいうように出陣や門出の儀式があり、また勝ちどき、首実検、戦場、陣中、行軍などすべてに礼式があります。常礼とは、君礼・臣礼・親礼・婚礼・縁礼・迎礼・客礼・送礼・遠座礼・退座礼・祝嘉礼・喪礼などです。足利義満公の願いにより勅許があって、今川氏頼、伊勢満忠、小笠原長秀の三人に命じ、参議が一同で選び、武家に用いる礼を組み立てて、これを躾方と名付けました。今に至って三つの流派があります。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『五常訓』巻之四・礼本立てば末は是より出づる理なり。末のみ修りて、本なきは、誠なくして、礼の道たたず。喪の礼は、ことさら真実ならでは行はれざるものなれば、既に礼の本を説きて、又其内より、喪の礼の本をかかげ出して説き給ふ。
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『五常訓』巻之四・礼一朱子曰、礼は即理の節文なり。いふ意は、万の行、道理にかなひて、過不及なく、程よきを云ふ。飲食の一事をいはば、うゑかわく時に飲み食ふは理なり。されども、飲み食ふべき理なりとて、みだりに多く飲み食へば、放逸にして、みだりがはしく、又必病を生ず。飲み食ふべき理にあたりて、過不及なく、よき程なるが、理の節文なり。万の事、是を以て知るべし。
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『五常訓』巻之四・礼一礼記に、子曰、敬ひて礼にあたらざる、これを野と云ふ。敬ふは誠によけれど、礼にかなはざれば、これ野きなり。敬によき程の法あり。過不及ありて、其法にかなはざるは、是礼にあたらざるなり。況やおごりて理にかなはざるは、ことに礼にそむけり。野きより、其害甚し。
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『弁名』禮礼は道の名なり。先王の制作する所の四教・六芸、是れ其の一に居る。所謂経礼三百、威儀三千、是れ其の物なり。六芸は、書・数は庶人の官に在る者、府・史・胥・徒の専ら務むる所と為す。御も亦た士の職とする所なり。射は諸侯に通ずと雖も、其の所謂射は、礼楽を以て之を行ふ、民の射の皮を主とする者の比に非ず。唯だ礼楽のみ乃ち芸の大なる者にして、君子の務むる所なり。而して楽は伶官に掌られ、君子以て徳を養ふのみ。礼に至りては則ち君子此を以て顕業と為す。是を以て孔子少くして礼を知るを以て称せられ、周に之きて礼を老聃に問ひ、杞に之き宋に之き、唯だ礼を之れ求む。子夏の記す所、曾子の問ふ所、七十子皆礼に断断たり。檀弓の諸篇に見ゆ。三代の君子の礼を務むる、以て見るべきのみ。
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『五常訓』巻之四・礼一威儀をつつしみ、衣冠を正しくし、視ること、聴くこと、言ふこと、動くことの四事につきて、各過不及なく、よき程の法あり。又親につかへ、君につかふるに、各さだまれる法あり。兄弟、夫婦に対し、賓客にまじはり、臣下に対し、民をつかひ、先祖鬼神をまつるも法あり。是礼は、皆天理のよき程なる節文にして、人事の定まれる作法なり。仁義皆理なりといへども、とりわき礼を理といへるに子細あり。理とは行ふべきすぢめなり。万事を行ふに、皆定まりたる作法あり。是人の行ふべきすぢめなり。是即礼なり。ここを以て聖人の説き給へる礼の字は、理の字にあたれり。然れども理といはずして礼といへるに、子細あり。理といへば形と事にあらはれたる迹なくして、虚なり。
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『弁名』禮是の礼楽の教は、黙して之を識るに在りと雖も、然れども人の知、至る有り、至らざる有り。故に孔子時有りてか、一隅を挙げて以て其の義を語る。義とは先王の礼を制する所以の義、戴記に載する所皆是れのみ。祇だ人の知、至る有り、至らざる有り。故に七十子の先王を信ずる、孔子の先王を信ずるに及ばず。其の人の七十子を信ずるも、亦た七十子の孔子を信ずるに及ばず。故に其の人に喩さんと欲するの急なる、其の義を論説して已まず。日に以て蔓衍し、以て戦国の時に至りて、義遂に礼を離れて孤行し、復た礼に就きて其の義を言はず。孟子の書を観て見るべきのみ。此れより其の後、古を去ること益〻遠く、義理の説益〻盛んに、囂然として以て天下を乱し、先王・孔子の教、蕩乎として尽く。悲しいかな。

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