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潜夫論 / 交際

俗人之相於也,有利生親,積親生愛,積愛生是,積是生賢。情苟賢之,則不自覺心之親之,口之譽之也。無利生疏,積疏生憎,積憎生非,積非生惡,情苟惡之,則不自覺心之外之,口之毀之也。是故富貴雖新,其勢日親;貧賤雖舊,其勢日除。此處子所以不能與官人競也。世主不察朋交之所生,而苟信貴臣之言,此潔士所以獨隱翳,而奸雄所以黨飛揚也。昔魏其之客,流於武安。長平之吏,移於冠軍。廉頗翟公,載盈載虛。夫以四君之賢,藉舊貴之夙恩,客猶若此,則又況乎生貧賤者哉?唯有古烈之風,誌義之士,為不然爾。恩有所結,終身無解;心有所矜,賤而益篤。《詩》云:「淑人君子,其儀一兮,心如結兮。」故歲寒然後知松柏之後凋,世隘然後知其人之篤固也。侯嬴、豫讓,出身以報恩;鱄諸、荊軻,奮命以效用。

新字:俗人之相於也,有利生親,積親生愛,積愛生是,積是生賢。情苟賢之,則不自覚心之親之,口之誉之也。無利生疏,積疏生憎,積憎生非,積非生悪,情苟悪之,則不自覚心之外之,口之毀之也。是故富貴雖新,其勢日親;貧賤雖旧,其勢日除。此処子所以不能与官人競也。世主不察朋交之所生,而苟信貴臣之言,此潔士所以独隠翳,而奸雄所以党飛揚也。昔魏其之客,流於武安。長平之吏,移於冠軍。廉頗翟公,載盈載虚。夫以四君之賢,藉旧貴之夙恩,客猶若此,則又況乎生貧賤者哉?唯有古烈之風,誌義之士,為不然爾。恩有所結,終身無解;心有所矜,賤而益篤。《詩》云:「淑人君子,其儀一兮,心如結兮。」故歳寒然後知松柏之後凋,世隘然後知其人之篤固也。侯嬴、予譲,出身以報恩;鱄諸、荊軻,奮命以効用。

書き下し

俗人の相い於けるや、利有れば親を生じ、親を積めば愛を生じ、愛を積めば是を生じ、是を積めば賢を生ず。情苟くも之を賢とすれば、則ち心の之に親しみ、口の之を誉むるを自覚せず。利無ければ疏を生じ、疏を積めば憎を生じ、憎を積めば非を生じ、非を積めば悪を生ず。情苟くも之を悪めば、則ち心の之を外にし、口の之を毀るを自覚せず。是の故に富貴は新なりと雖も、其の勢い日に親しみ、貧賤は旧なりと雖も、其の勢い日に除かる。此れ処子の官人と競う能わざる所以なり。世主は朋交の生ずる所を察せずして、苟くも貴臣の言を信ず。此れ潔士の独り隠翳し、奸雄の党して飛揚する所以なり。昔、魏其の客は武安に流れ、長平の吏は冠軍に移る。廉頗・翟公は、載ち盈ち載ち虚し。夫れ四君の賢を以て、旧貴の夙恩に藉るも、客すら猶お此くの若し。則ち又況んや貧賤に生まれし者をや。唯だ古烈の風、誌義の士のみ、然らずと為すのみ。恩の結ぶ所有れば、終身解くる無く、心の矜る所有れば、賤にして益ます篤し。《詩》に云う、「淑人君子、其の儀は一なり、心は結ぼるるが如し」と。故に歳寒くして然る後に松柏の後に凋むを知り、世隘くして然る後に其の人の篤固を知るなり。侯嬴・豫譲は、身を出して以て恩に報い、鱄諸・荊軻は、命を奮いて以て用を効す。

現代語訳

世間の人どうしの付き合いでは、利益があれば親しみが生まれ、親しみが積もれば愛情が生まれ、愛情が積もれば相手を正しいと認めるようになり、それが積もれば賢者だと思うようになります。心から賢者だと思えば、心が親しみ、口がほめていることに自分でも気づきません。利益がなければ疎遠になり、疎遠が積もれば憎しみが生まれ、憎しみが積もれば非難が生まれ、それが積もれば嫌悪になります。心から嫌えば、心が相手を遠ざけ、口がそしっていることに自分でも気づきません。だから、富貴になった人は新参でも日ごとに親しまれ、貧賤の人は古い知り合いでも日ごとに遠ざけられます。在野の士が官にある者と張り合えないのはこのためです。君主は交友がどう生まれるかを見抜かず、うかつにも権勢ある臣の言葉を信じます。そのため清廉な士はひとり埋もれ、奸雄は徒党を組んでのさばるのです。昔、魏其侯の食客は武安侯のもとへ流れ、長平侯の部下は冠軍侯に移りました。廉頗や翟公の門も、満ちたり空になったりしました。この四人の君子は賢く、かつての貴い立場の恩恵があったのに、客でさえこのようでした。まして貧賤の生まれの者はなおさらです。ただ、古の烈士の風を持ち、志と義に生きる士だけは、そうではありません。恩で結ばれれば生涯解けず、心に誇りを抱けば、賤しい身になるほどいっそう篤くなります。《詩》に「立派な君子は、その振る舞いが一貫し、心は固く結ばれている」とあります。ですから、寒い季節になって初めて松や柏が遅くまで枯れないことがわかり、世が窮屈になって初めてその人の誠実さと堅固さがわかるのです。侯嬴や豫譲は身を投げ出して恩に報い、専諸や荊軻は命を奮い立たせて役に立ちました。

解説

王符は交際篇の冒頭で、付き合いが利害の積み重ねで親しみにも憎しみにも変わる仕組みを描いています。利があれば相手を賢者とまで見なし、利がなければ非とし悪とする、その変化を本人が自覚しないという指摘が鋭いところです。魏其侯の客が武安侯へ流れ、翟公の門が盈ちては虚しくなったという故事は、勢いのある者に人が集まる後漢の世相を重ねたものでしょう。君主がこれを見抜かないと、潔白な士は埋もれ、奸雄だけが伸びると王符は言います。現代の組織でも、評価者が上司や声の大きい社員の評判だけで人を測れば、地道に成果を出す人が見えなくなります。人事や登用では、誰が誰と近いかではなく、苦しいときにも変わらない行いを見る視点が欠かせません。

この章句が説くこと

交際恩利害人材登用信義潜夫論

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