潜夫論 / 交際
夫處卑下之位,懷北門之殷憂,內見謫於妻子,外蒙譏於士夫。嘉會不從禮,餞禦不逮眾,貨財不足以合好,力勢不足以杖急,歡忻久交,情好曠而不接,則人無故自廢疏矣。漸疏,則賤者逾自嫌而日引,貴人逾務黨而忘之。夫以逾疏之賤,伏於下流,而望日忘之貴,此穀風所為內摧傷,而介推所以赴深山也。夫交利相親,交害相疏,是故長捄誓而廢,心無用者也。交漸而親,必有益者也。
新字:夫処卑下之位,懐北門之殷憂,内見謫於妻子,外蒙譏於士夫。嘉会不従礼,餞禦不逮衆,貨財不足以合好,力勢不足以杖急,歓忻久交,情好曠而不接,則人無故自廃疏矣。漸疏,則賤者逾自嫌而日引,貴人逾務党而忘之。夫以逾疏之賤,伏於下流,而望日忘之貴,此穀風所為内摧傷,而介推所以赴深山也。夫交利相親,交害相疏,是故長捄誓而廃,心無用者也。交漸而親,必有益者也。
書き下し
夫れ卑下の位に処り、北門の殷憂を懐き、内には妻子に謫められ、外には士夫に譏りを蒙る。嘉会に礼に従わず、餞禦に衆に逮ばず、貨財は以て好を合わするに足らず、力勢は以て急を杖くに足らず、歓忻して久しく交わるも、情好曠しくして接せざれば、則ち人は故無くして自ら廃疏す。漸く疏ければ、則ち賤者は逾いよ自ら嫌いて日びに引き、貴人は逾いよ党を務めて之を忘る。夫れ逾いよ疏き賤を以て、下流に伏して、日びに忘るる貴を望む、此れ谷風の内に摧傷する所以にして、介推の深山に赴く所以なり。夫れ利を交えて相い親しむは、害を交えて相い疏んず、是の故に長く捄いて誓い廃るるは、心に用無き者なり。交わり漸にして親しめば、必ず益有る者なり。
現代語訳
身分の低い位にいて、『北門』の詩のように深い憂いを抱き、家では妻子に責められ、外では士大夫に謗られます。よい集まりに出ても礼にかなわず、見送りの宴でも人並みに及ばず、財貨は友好を深めるに足りず、力は急場を助けるに足りません。喜んで長く交わってきたのに、情が空しくなって接しなくなれば、人は理由もなく自分から疎遠になっていきます。次第に疎くなれば、身分の低い者はますます自分を卑しんで日ごとに身を引き、身分の高い者はますます徒党をつくって彼を忘れていきます。ますます疎くなった卑賤の者が、下流に身をかがめて、日ごとに自分を忘れる貴人を望むのは、『谷風』の詩が内に傷み砕ける理由であり、介推が深山に入った理由でもあります。そもそも利益を交換して親しむ者は、害を交換するときに疎遠になります。ですから、救いを長く続けると誓いながら途中で廃れるのは、心に用のない人だからです。交わりが次第に深まって親しくなる者は、必ず益のある人です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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人物志・利害蓋し人業の流は、各利害有り。夫れ清節の業は、儀容に著れ、徳行に発す。未だ用ゐられずして章らかに、其の道は順にして化有り。故に其の未だ達せざるや、衆人の進むる所と為り、既に達するや、上下の敬ふ所と為る。其の功は以て濁を激し清を揚げ、僚友に師範たるに足る。
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『学問のすゝめ』十六編・心事と働きと相当すべきの論・みだりに人を軽蔑する者はまた心事高尚にして働きに乏しき者は、人に厭われて孤立することあり。己が働きと他人の働きとを比較すればもとより及ぶべきにあらざれども、己が心事をもって他の働きを見れば、これに満足すべからずして、おのずから私に軽蔑の念なきを得ず。みだりに人を軽蔑する者は、必ずまた人の軽蔑を免るべからず。互いに相不平をいだき、互いに相蔑視して、ついには変人奇物の嘲りを取り、世間に歯すべからざるに至るものなり。今日世の有様を見るにあるいは傲慢不遜にして人に厭わるる者あり、あるいは人に勝つことを欲して人に厭わるる者あり、あるいは人に多を求めて人に厭わるる者あり、あるいは人を誹謗して人に厭わるる者あり。いずれもみな人に対して比較するところを失い、己が高尚なる心事をもって標的となし、これに照らすに他の働きをもってして、その際に恍惚たる想像を造り、もって人に厭わるるの端を開き、ついにみずから人を避けて独歩孤立の苦界に陥る者なり。
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『韓非子』說林上二十二曾従子は善く剣を相する者なり。衛君、呉王を怨む。曾従子曰く、「呉王は剣を好む、臣は剣を相する者なり。臣請ふ呉王の為に剣を相し、抜きて之に示し、因りて君の為に之を刺さん」と。衛君曰く、「子の是を為すや、義に縁るに非ざるなり、利の為なり。呉は強くして富み、衛は弱くして貧し。子必ず往かば、吾恐らくは子、呉王の為に之を我に用ひん」と。乃ち之を逐ふ。紂、象箸を為りて箕子怖る。以為へらく、象箸は必ず羹を土鉶に盛らず、則ち必ず犀王の杯ならん。玉杯象箸は必ず菽藿を盛らず、則ち必ず旄象豹胎ならん。旄象豹胎は必ず短褐を衣て茅茨の下に舎らず、則ち必ず錦衣九重、高台広室ならん、と。
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孫子・九変篇是の故に智者の慮は、必ず利害に雑う。利に雑えて務め信なる可きなり。害に雑えて患い解く可きなり。
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『韓非子』說林上二十二魏の恵王、臼里の盟を為し、将に復た天子を立てんとす。彭喜、鄭君に謂ひて曰く、「君聴く勿かれ。大国は天子有るを悪み、小国は之を利とす。若し君と大と聴かずんば、魏焉んぞ能く小と之を立てんや」と。晋人、邢を伐ち、斉の桓公将に之を救はんとす。鮑叔曰く、「太だ蚤し。邢亡びずんば晋敝れず、晋敝れずんば斉重からず。且つ夫れ危を持するの功は、亡を存するの徳の大なるに如かず。君晩く之を救ひて以て晋を敝らしむるに如かず、斉実に利あり。邢の亡ぶるを待ちて復た之を存せば、其の名実美なり」と。桓公乃ち救はず。子胥出走し、辺候之を得たり。子胥曰く、「上の我を索むるは、我に美珠有るを以てなり。今我已に之を亡へり。我且に子取りて之を呑めりと曰はんとす」と。候因りて之を釈す。慶封、斉に乱を為して越に走らんと欲す。其の族人曰く、「晋は近し、奚ぞ晋に之かざる」と。慶封曰く、「越は遠し、以て難を避くるに利あり」と。族人曰く、「是の心を変ずれば、晋に居るも可なり。是の心を変ぜずんば、遠き越と雖も、其れ以て安かるべけんや」と。智伯、地を魏の宣子に索む、魏の宣子予へず。任章曰く、「何の故に予へざる」と。宣子曰く、「故無くして地を請ふ、故に予へず」と。任章曰く、「故無くして地を索めば、隣国必ず恐れん。彼重欲にして厭くこと無くんば、天下必ず懼れん。君之に地を予へば、智伯必ず驕りて敵を軽んじ、隣邦必ず懼れて相親しまん。
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『長短経』利害諸将、首虜を殺し、留まりて賀し、因りて信に問いて曰く「兵法に『山陵を右背にし、水沢を前左にす』と。今者、将軍は臣等をして反りて背水の陣をなさしめ、曰く『趙を破りて会食せん』と。時に臣等服せず。然れども竟に以て勝つ。此れ何の術ぞや」と。信曰く「此れ兵法の中に在り、顧だ諸君察せざるのみ。兵法に曰わずや『之を死地に陥れて而る後に生き、之を亡地に置きて而る後に存す』と〔夫れ死地に処るは、力均しく勢い敵するを謂う。死地を以て勝ちを取るは可なり。若し至弱を以て至強に当たり、弱兵を死地に投ずれば、自ら陥ることを貽すなり。故に孫子曰く「兵恐るれば、救うべからず」と。又た経に曰く「大衆害に陥りて、然る後に能く勝敗を為す」と。是に知る、死地の機は、必ず大衆を用うるなり〕。且つ信は能く素より士大夫を撫循するに非ず。所謂市人を駆りて戦わしむるなり。其の勢い之を死地に置きて、人人をして自ら戦いを為さしむるに非ずんば、今之に生地を与えば、皆走らん。寧んぞ尚お得て之を用うべけんや」と。諸将曰く「善し。及ぶ所に非ざるなり」と。
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