潜夫論 / 卜列
天地開辟有神民,民神異業精氣通。行有招召,命有遭隨,吉凶之期,天難諶斯。聖賢雖察,不自專,故立卜筮,以質神靈。孔子稱:「蓍之德圓而神,卦之德方以智。」又曰:「君子將有行也,問焉而已言,其受命而向。」是以禹之得皋陶,文王之取呂尚,皆兆告其象,卜厎其思,以成其吉。夫君子聞善則勸樂而進,聞惡則循省而改尤,故安靜而多福。小人聞善即懾懼而妄為,故狂躁而多禍。是故凡卜筮者,蓋所問吉凶之情,言興衰之期,令人修身慎行以迎福也。
新字:天地開辟有神民,民神異業精気通。行有招召,命有遭随,吉凶之期,天難諶斯。聖賢雖察,不自専,故立卜筮,以質神霊。孔子称:「蓍之徳円而神,卦之徳方以智。」又曰:「君子将有行也,問焉而已言,其受命而向。」是以禹之得皋陶,文王之取呂尚,皆兆告其象,卜厎其思,以成其吉。夫君子聞善則勧楽而進,聞悪則循省而改尤,故安静而多福。小人聞善即懾懼而妄為,故狂躁而多禍。是故凡卜筮者,蓋所問吉凶之情,言興衰之期,令人修身慎行以迎福也。
書き下し
天地開闢して神民有り、民神業を異にして精気通ず。行に招召有り、命に遭随有り、吉凶の期、天は諶じ難し。聖賢察すと雖も、自ら専らにせず、故に卜筮を立てて、以て神霊に質す。孔子称す、「蓍の徳は円にして神、卦の徳は方にして以て智」と。又曰く、「君子将に行く有らんとするや、問うて已に言う、其の命を受けて向う」と。是を以て禹の皋陶を得、文王の呂尚を取るや、皆兆は其の象を告げ、卜は其の思いを厎し、以て其の吉を成す。夫れ君子は善を聞けば則ち勧楽して進み、悪を聞けば則ち循省して尤を改む、故に安静にして福多し。小人は善を聞けば即ち懾懼して妄りに為す、故に狂躁にして禍多し。是の故に凡そ卜筮とは、蓋し吉凶の情を問う所、興衰の期を言い、人をして身を修め行いを慎み以て福を迎えしむるなり。
現代語訳
天地が開けて神と民が生まれ、民と神は務めが異なっても精気は通じ合います。行いには招き寄せるものがあり、運命には巡り合わせがあり、吉凶の時期は、天のことは測りがたいものです。聖賢は物事を察する力があっても、自分だけで決めず、そのため卜筮を立てて、神霊に問いただしたのです。孔子は「蓍(めどぎ)の徳は円くて神妙であり、卦の徳は方正で智である」と称えました。また「君子が行動を起こそうとするとき、問うて言葉にし、その命を受けて向かう」とも言いました。だから禹が皋陶を得、文王が呂尚を取り立てたときも、兆しがその形を告げ、卜はその思いを定めて、吉を成就させたのです。君子は善を聞けば励み楽しんで進み、悪を聞けば反省して過ちを改めます。だから穏やかに過ごして福が多いのです。小人は善を聞くと、かえっておそれて軽率に動き、悪を聞くと狂ったように慌てます。だから落ち着きがなく禍が多いのです。したがって、卜筮とは、吉凶の実情を問い、興衰の時期を語り、人に身を修め行いを慎ませて福を迎えさせるものなのです。
解説
この章句が説くこと
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『潜夫論』卜列且つ聖王の卜筮を立つるや、民に違いて以て吉と為さず、専ら任じて以て事を断ぜず、故に《鴻範》の占は、大同を是れ尚ぶ。《書》に又曰く、「爾の元亀を仮りて、敢えて吉を知る罔し」と。《詩》に云う、「我が亀既に?れ、我に猶を告げず」と。此に従りて之を観れば、蓍亀の情は、儻し時に随いて倹易有り、誠邪を以てせず、将た世に史蘇の材無く、神を識る者少なきか。周史の敬仲を筮し、荘叔の穆子を筮するに及びては、能く賾を探り隠を索め、深きを鉤り遠きを致す者と謂うべし。使し献公早く史蘇の言を納れ、穆子宿より荘叔の戒めに備えしめば、則ち驪姫・豎牛の讒も、亦た将に入るに由無く、国を破り身を危うくするの禍も無からん。
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『潜夫論』卜列聖人は卜筮を甚だ重んず、然れども疑わざるの事は、亦た問わず。祭祀を甚だ敬す、礼に非ざるの祈りは、亦た為さず。故に曰く、聖人は卜筮を煩わさず、鬼神を敬して之を遠ざく、と。夫れ鬼神と人とは気を殊にし務めを異にす、事故有るに非ざれば、何ぞ我に奈せん。故に孔子は楚昭の河を祀らざるを善とし、而して季氏の泰山に旅するを悪む。今俗人は卜筮に策し、而して其の鬼に非ざるを祭る、豈に惑わずや。亦た妄りに姓を五音に伝え、五宅の符第を設くる有り、其の誣いたること甚だし。古は陰陽有り、然る後に五行有り。五帝は右に拠りて行気し、以て人民を生ず。世を載ること遠くして、乃ち姓名敬民有り。名字とは、蓋し眾猥を別ち、此の人を顕す所以のみ、五音を絶ち剛柔を定むるに非ざるなり。今俗人は本祖を推紀する能わず、而して反って声音言語を以て五行を定めんと欲す、誤りは此れより甚だしきは莫し。夫れ魚は水に処りて生じ、鳥は巣に拠りて卵む、即ち其の本祖を推さず音を諧すと為して可ならん。即し鳥を呼びて魚と為さば、之を水に内るべけんや。魚を呼びて鳥と為さば、之を木に棲ましむべけんや。此れ然らざるの事なり。駒に命じて犢と曰うも、終に馬と為らず。是の故に凡そ姓の音有るや、必ず其の本生祖の土とする所に随うなり。太皞は木の精にして、歳を承けて王たり、夫れ其の子孫は鹹な当に角と為るべし。
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『潜夫論』卜列俗工又曰く、商家の宅は、宜しく西に門を出すべし、と。此れ複た虚なり。五行は当に出づるに其の勝に乗じ、入りて其の隩に居れば、乃ち安吉なり。商家は東に向かいて入れば、東入は反って以て金は木を伐つと為し、則ち家中の精神日びに戦闘するなり。五行皆な然り。又曰く、宅に宮商の第、直符の歳有り、と。既に然らば、其の上に放いて門数を増損すれば、即ち其の音を変えて其の符を過ぐべけんや。今一宅なるも、同姓相い伐つに、或いは吉、或いは凶。一宮なるも、同姓相い伐つに、或いは遷り、或いは免る。一宮なるも、成・康居る日以て興り、幽・厲居る日以て衰う。此に由りて之を観れば、吉凶興衰は宅に在らざること明らかなり。諸もろの神祇、太歳・豊隆・鉤陳・太陰将軍の属に及びては、此れ乃ち天吏にして、細民の当に事うべき所に非ず。天に此の神有るは、皆な陰陽を奉成して物を利する所以なり、人の治に牧守令長有るが若し。之に向かいて何ぞ怒り、之に背きて何ぞ怨まん。君民の道近きは、宜しく相い責むべからず。況んや神致って貴く、人と礼を異にす、豈に望むべけんや。且つ人をして鬼を避けしめんと欲すれば、是れ即ち道路は行くべからず、室廬は復た居らざるなり。此れ賢人君子の、心を秉ること方直、精神堅固なる者を謂うなり。
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『潜夫論』正列凡そ人の吉凶は、行を以て主と為し、命を以て決と為す。行なる者は、己の質なり。命なる者は、天の制なり。己に在る者は、固より為す可きなり。天に在る者は、知る可からざるなり。巫覡の祝請も、亦た其の助けなり、然れども徳に非ざれば行われず。巫史の祈祝なる者は、蓋し鬼神に交わりて細微を救う所以のみ。大命に至りては、之を如何ともする末し、譬えば民人の吏に請謁するが如し、以て微過を解く可きも、正罪を脱する能わず。設し人此に有りて、昼夜君父の教えを慢侮し、先王の禁を干犯し、己が心に克ちて、過ちを改め善を思わずして、苟くも驟かに請謁を発し、以て解免を求めば、必ず幾からず。己を修め、小心畏慎して、上を犯すの必令無きに若かず。故に孔子は子路を聴かずして、云う、「丘の禱ること久し」と。『孝経』に云う、「夫れ然り、故に生けるときは則ち親之を安んじ、祭るときは則ち鬼之を享く」と。此に由りて之を観れば、徳義違う無ければ、神乃ち享く。鬼神享を受くれば、福祚乃ち隆んなり。故に詩に云う、「福を降すこと禳禳たり、福を降すこと簡簡たり、威儀板板たり、既に酔い既に飽く、福禄来り反る」と。此れ人の徳義茂美にして、神歆享酔飽し、乃ち反りて之に報ずるに福を以てするを言うなり。
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『潜夫論』正列旧時、京師は動功を防がず、禁を造りて以来、吉祥応瑞、子孫昌熾なること、前に過ぐる能わず。且つ夫れ君を以て臣を畏れ、上を以て下を需むれば、則ち必ず弱きを示して陵がれを取らん、殆ど福を致すの招きに非ざるなり。嘗て上記を観るに、人君の身修まり正しく賞罰明らかなる者は、国治まりて民安し。民安楽なれば、天悦喜して曆数を増す。故に『書』に曰く、「王は小民を以て、天の永命を受く」と。孔子曰く、「天の助くる所の者は、順なり。人の助くる所の者は、信なり」と。信を履みて順を思い、又以て賢を尚ぶ、是を以て天より之を祐け、吉にして利しからざる無し、此れ最も凶災を却けて福善を致すの本なり。
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史記 宋微子世家稽疑。択びて卜筮の人を建立す。乃ち卜筮に命ず。雨と曰ひ、済と曰ひ、涕と曰ひ、霧と曰ひ、克と曰ひ、貞と曰ひ、悔と曰ふ、凡そ七。卜は五、占は二を用ひ、衍貣(えんとく)す。時の人を立てて卜筮を為さしめ、三人占はば則ち二人の言に従ふ。女則ち大疑有らば、謀ること女の心に及ぼし、謀ること卿士に及ぼし、謀ること庶人に及ぼし、謀ること卜筮に及ぼせ。女則ち従ひ、亀従ひ、筮従ひ、卿士従ひ、庶民従ふ、是を之れ大同と謂ふ。而の身其れ康彊にして、而の子孫其れ吉に逢はん。女則ち従ひ、亀従ひ、筮従ひ、卿士逆らひ、庶民逆らふも、吉。卿士従ひ、亀従ひ、筮従ひ、女則ち逆らひ、庶民逆らふも、吉。庶民従ひ、亀従ひ、筮従ひ、女則ち逆らひ、卿士逆らふも、吉。女則ち従ひ、亀従ひ、筮逆らひ、卿士逆らひ、庶民逆らはば、内に作せば吉、外に作せば凶。亀筮共に人に違はば、静を用ふれば吉、作を用ふれば凶。庶徴。雨と曰ひ、陽と曰ひ、奥と曰ひ、寒と曰ひ、風と曰ひ、時と曰ふ。五者来たりて備はり、各々其の序を以てせば、庶草繁廡す。一極めて備はるも、凶。一極めて亡きも、凶。休徴を曰ふ。粛と曰へば、時雨若(したが)ふ。治と曰へば、時暘若ふ。知と曰へば、時奥若ふ。謀と曰へば、時寒若ふ。聖と曰へば、時風若ふ。咎徴を曰ふ。狂と曰へば、常雨若ふ。僭と曰へば、常暘若ふ。舒と曰へば、常奥若ふ。急と曰へば、常寒若ふ。霧と曰へば、常風若ふ。王の眚(み)るは維れ歳、卿士は維れ月、師尹は維れ日。歳月日時易はること毋くんば、百穀用て成り、治用て明らかに、畯民用て章(あら)はれ、家用て平康なり。日月歳時既に易はらば、百穀用て成らず、治用て昏くして明らかならず、畯民用て微(かく)れ、家用て寧からず。庶民は維れ星、星に風を好むもの有り、星に雨を好むもの有り。日月の行、冬有り夏有り。月の星に従へば、則ち以て風雨あり。五福。一を寿と曰ひ、二を富と曰ひ、三を康寧と曰ひ、四を攸好徳と曰ひ、五を考終命と曰ふ。六極。一を凶短折と曰ひ、二を疾と曰ひ、三を憂と曰ひ、四を貧と曰ひ、五を悪と曰ひ、六を弱と曰ふ」と。
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