潜夫論 / 勸將
軍起以來,暴師五年,典兵之吏,將下千數,大小之戰,歲十百合,而希有功,曆察其敗,無他故焉,皆將不明變勢,而士不勸於死敵也。其士之不能死也,乃其將不能效也。言賞則不與,言罰則不行,士進有獨死之禍,退蒙眾生之福,此所以臨陣亡戰,而競思奔北者也。
新字:軍起以来,暴師五年,典兵之吏,将下千数,大小之戦,歳十百合,而希有功,暦察其敗,無他故焉,皆将不明変勢,而士不勧於死敵也。其士之不能死也,乃其将不能効也。言賞則不与,言罰則不行,士進有独死之禍,退蒙衆生之福,此所以臨陣亡戦,而競思奔北者也。
書き下し
軍起こりて以来、師を暴すこと五年、兵を典る吏、将の下千を以て数え、大小の戦、歳に十百合あり、而るに功有ること希なり。其の敗るるを歴察するに、他の故無し、皆な将は変勢に明らかならず、士は死敵に勧まざればなり。其の士の死する能わざるは、乃ち其の将の効す能わざればなり。賞を言えば則ち与えず、罰を言えば則ち行われず、士は進めば独り死するの禍有り、退けば衆生の福を蒙る。此れ陣に臨みて戦を亡い、競いて奔北を思う所以なり。
現代語訳
軍を起こしてから、軍を野に晒すこと五年、兵を預かる役人は、将の下に千を数え、大小の戦は一年に十回百回とありますが、功を立てることはまれです。その敗れた原因を調べてみると、他に理由はなく、どれも将が情勢の変化に明るくなく、兵士が敵に死力を尽くすよう励まされていないからです。兵士が死力を尽くせないのは、その将がそれに応えられないからです。賞を言っても与えず、罰を言っても行わず、兵士は進めば自分だけが死ぬ禍があり、退けば大勢が生き残る福を受けます。これが、陣に臨んで戦意を失い、競って逃げることを考える理由です。
解説
勧将篇の続きで、戦に勝てない理由を将と兵の関係に求めています。王符は、五年の軍事行動と多数の戦いにもかかわらず功がまれである原因を、将が情勢の変化を読まず、兵を励まさないことだと診断します。賞罰が言葉だけで実行されないと、進めば自分だけが死に退けば皆が生き延びるという逆転した構図になると指摘します。現代の組織でも、成果を出した人が報われず、逃げた人が不利益を受けないなら、誰も前に出なくなります。評価と処遇を言行一致させることが、士気の土台です。
この章句が説くこと
勧将賞罰士気将言行一致潜夫論
関連する章句
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『文武訓』武訓下一将たる人、号令明かにしてあやまらず、賞罰信ありてちがはず、士卒と苦楽を同じくし、われひとり楽まず、寒暑をも士卒と同じくし、士卒をいたはりてくるしめず。かくの如くすれば、士卒上におもひ附きて、死力をつくす。
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司馬法・嚴位若し将に復た戦わんとすれば、則ち賞罰を重くす。
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尉繚子・兵教上民をして国門の限を背にし、死生の分を決せしめ、之に死して疑はざるを教ふる者は、以有るなり。守る者をして必ず固く、戦ふ者をして必ず闘ひ、奸謀作らず、姦民語らず、令行はれて変無く、兵行はれて猜無く、軽き者は霆の若く、敵に奮ふこと驚くが若くせしむ。功を挙げ徳を別つこと、明らかなること白黒の如く、
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『潜夫論』勸將夫れ重きを服して阪を上り、出でて千里を馳するは、馬の禍なり。然れども節馬の之を楽しむは、王良以て力を尽くすと為すに足ればなり。先登して陣を陥れ、死に赴きて敵に厳しきは、民の禍なり。然れども節士の之を楽しむは、明君以て死を効す可しと為せばなり。凡そ人の肯えて死亡に赴きて辞せざる所以は、利に趨くに非ざれば、則ち因りて害を避くるなり。賢鄙愚智と無く皆な然り、顧うに其の利害する所に異有るのみ。顕名を利せざれば、則ち厚賞を利す。恥辱を避けざれば、則ち禍乱を避く。此の四者に非ざれば、聖王と雖も其の臣を要する能わず、慈父も其の子を必する能わず。明主深く之を知る、故に利を崇び害を顕して以て下と市し、親疏貴賤賢鄙愚智をして皆な必ず我が令に順い、乃ち其の欲を得しむ。是を以て一旦軍鼓雷震し、旌旗並び発し、士皆な奮激して、競いて死敵と与にする者は、豈に其の情の久生を厭いて死を害うを楽しむならんや。乃ち義士は且に以て其の名を激しくし、貪夫は且に以て其の賞を求むるのみ。今吏の軍に従いて敗没し公事に死する者、十万を以て数う。上は吊唁嗟歎の栄名を聞かず、下は又た禄賞の厚実無し。節士は勧め慕う所無く、庸夫は貪る利無し。此れ其の人懐いて沮み懈り、肯えて複た死せざる所以なり。
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『韓非子』難二第三十七趙簡子衛の郛郭を囲む、犀楯・犀櫓もて、矢石の及ばざる所に立ち、之に鼓すれども士起たず。
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『長短経』教戦卒服習し、器用利なれば、将軍乃ち旄を秉り衆を麾きて之に誓う〔有虞氏は国に誡め、夏后氏は軍に誓い、殷は軍門の外に誓う。周は将に刃を交えんとして之に誓う。誓う所同じからず、吾は周に従う。之に誓いて曰く「嗚呼、溥天の下、王土に非ざる莫く、率土の浜、王臣に非ざる莫し。今、某国は五行を威侮し、三正を怠棄す。我が有衆をして、恭しく天討を行わしむ。命を用うる者は、賞時を踰えず。逗撓する者は、誅列を遷さず。死生富貴、此の一挙に在り。嗟、爾庶士、各々乃の心を勉めよ」と〕。是に於て気は青雲を厲まし、湯に赴き火を蹈むと雖も、可なり。此れ教戦の法なり。
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