潜夫論 / 勸將
夫服重上阪,出馳千里,馬之禍也。然節馬樂之者,以王良足為盡力也。先登陷陣,赴死嚴敵,民之禍也。然節士樂之者,以明君可為效死也。凡人所以肯赴死亡而不辭,非為趨利,則因以避害也。無賢鄙愚智皆然,顧其所利害有異爾。不利顯名,則利厚賞也;不避恥辱,則避禍亂也。非四者,雖聖王不能以要其臣,慈父不能以必其子。明主深知之,故崇利顯害以與下市,使親疏貴賤賢鄙愚智皆必順我令,乃得其欲。是以一旦軍鼓雷震,旌旗並發,士皆奮激,競與死敵者,豈其情厭久生而樂害死哉!乃義士且以激其名,貪夫且以求其賞爾。今吏從軍敗沒死公事者,以十萬數,上不聞吊唁嗟歎之榮名,下又無祿賞之厚實,節士無所勸慕,庸夫無所貪利,此其所以人懷沮懈,不肯複死也。
新字:夫服重上阪,出馳千里,馬之禍也。然節馬楽之者,以王良足為尽力也。先登陥陣,赴死厳敵,民之禍也。然節士楽之者,以明君可為効死也。凡人所以肯赴死亡而不辞,非為趨利,則因以避害也。無賢鄙愚智皆然,顧其所利害有異爾。不利顕名,則利厚賞也;不避恥辱,則避禍乱也。非四者,雖聖王不能以要其臣,慈父不能以必其子。明主深知之,故崇利顕害以与下市,使親疏貴賤賢鄙愚智皆必順我令,乃得其欲。是以一旦軍鼓雷震,旌旗並発,士皆奮激,競与死敵者,豈其情厭久生而楽害死哉!乃義士且以激其名,貪夫且以求其賞爾。今吏従軍敗没死公事者,以十万数,上不聞吊唁嗟嘆之栄名,下又無禄賞之厚実,節士無所勧慕,庸夫無所貪利,此其所以人懐沮懈,不肯複死也。
書き下し
夫れ重きを服して阪を上り、出でて千里を馳するは、馬の禍なり。然れども節馬の之を楽しむは、王良以て力を尽くすと為すに足ればなり。先登して陣を陥れ、死に赴きて敵に厳しきは、民の禍なり。然れども節士の之を楽しむは、明君以て死を効す可しと為せばなり。凡そ人の肯えて死亡に赴きて辞せざる所以は、利に趨くに非ざれば、則ち因りて害を避くるなり。賢鄙愚智と無く皆な然り、顧うに其の利害する所に異有るのみ。顕名を利せざれば、則ち厚賞を利す。恥辱を避けざれば、則ち禍乱を避く。此の四者に非ざれば、聖王と雖も其の臣を要する能わず、慈父も其の子を必する能わず。明主深く之を知る、故に利を崇び害を顕して以て下と市し、親疏貴賤賢鄙愚智をして皆な必ず我が令に順い、乃ち其の欲を得しむ。是を以て一旦軍鼓雷震し、旌旗並び発し、士皆な奮激して、競いて死敵と与にする者は、豈に其の情の久生を厭いて死を害うを楽しむならんや。乃ち義士は且に以て其の名を激しくし、貪夫は且に以て其の賞を求むるのみ。今吏の軍に従いて敗没し公事に死する者、十万を以て数う。上は吊唁嗟歎の栄名を聞かず、下は又た禄賞の厚実無し。節士は勧め慕う所無く、庸夫は貪る利無し。此れ其の人懐いて沮み懈り、肯えて複た死せざる所以なり。
現代語訳
重い荷を負って坂を上り、千里を駆けるのは、馬にとっては災難です。それでも節度ある馬がそれを楽しむのは、王良が力を尽くさせるのに足る御者だからです。真っ先に登って陣を破り、死地に赴いて敵に立ち向かうのは、民にとっては災難です。それでも節義の士がそれを楽しむのは、明君のために命を捧げられると思うからです。およそ人が死地に赴いて辞退しないのは、利を求めるのでなければ、害を避けるためです。賢い者も愚かな者も皆そうで、ただ利害の中身が違うだけです。名が顕れる利を求めなければ、厚い賞を求めます。恥辱を避けなければ、禍乱を避けます。この四つがなければ、聖王でも臣下に求めることができず、慈父でも子に必ず従わせることはできません。明君はこのことを深く知っているので、利を尊び害を明らかにして臣下と取引し、親疎・貴賤・賢愚を問わず必ず自分の令に従わせ、彼らの望みを得させます。そのため、ひとたび軍鼓が雷のように鳴り、旗が並んで進むと、士はみな奮い立ち、競って死力を尽くして敵に当たります。生を厭い死を楽しむからでしょうか。義士は名を高めるために、貪欲な者は賞を求めるためにそうするのです。今、軍に従って敗れ公務に死んだ官吏は十万を数えますが、上からは弔いや嘆きの栄誉もなく、下には俸禄や賞の実質もありません。節義の士は励む目標がなく、凡庸な者は貪る利がありません。これが、人々が心を沮喪させて怠け、再び死力を尽くそうとしない理由です。
解説
この章句が説くこと
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『墨子』非命上是の故に古の聖王、憲を發し令を出だし、設けて以て賞罰と為して以て賢を勸む。是を以て入りては則ち親戚に孝慈、出でては則ち鄉里に弟長、坐處に度有り、出入に節有り、男女に辯有り。是の故に官府を治めしむれば則ち盜竊せず、城を守れば則ち崩叛せず、君に難有れば則ち死し、出亡すれば則ち送る。此れ上の賞する所にして、百姓の譽むる所なり。有命を執る者の言に曰く、「上の賞する所は、命、固より且に賞せんとす、賢なるが故に賞するに非ざるなり。上の罰する所は、命、固より且に罰せんとす、暴なるが故に罰するに非ざるなり」と。
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