潜夫論 / 班祿
太古之時,烝黎初載,未有上下,而自順序。天未事焉,君未設焉。後稍矯虔,或相陵虐,侵漁不止,為萌巨害。於是天命聖人,使司牧之,使不失性。四海蒙利,莫不被德。僉共奉戴,謂之天子。
新字:太古之時,烝黎初載,未有上下,而自順序。天未事焉,君未設焉。後稍矯虔,或相陵虐,侵漁不止,為萌巨害。於是天命聖人,使司牧之,使不失性。四海蒙利,莫不被徳。僉共奉戴,謂之天子。
書き下し
太古の時、烝黎初めて載り、未だ上下有らず、而して自ら順序す。天は未だ事とせず、君は未だ設けず。後に稍や矯虔し、或いは相い陵虐し、侵漁して止まず、萌の巨害と為る。是に於いて天は聖人に命じ、之を司牧せしめ、性を失わざらしむ。四海は利を蒙り、徳を被らざる莫し。僉な共に奉戴して、之を天子と謂う。
現代語訳
太古の時代、民が生まれたばかりのころには、まだ上下の区別がなく、自然に秩序が保たれていました。天もまだ事を行わず、君も設けられていませんでした。やがて少しずつ偽りや横暴が現れ、互いに侵し虐げ、奪い取ることがやまず、民の大きな害となりました。そこで天は聖人に命じて、民を養い治めさせ、その本性を失わせないようにしました。四海は利益を受け、徳に覆われないものはありませんでした。みなで共に奉じて戴き、これを天子と呼びました。
解説
ここから班禄の篇に入ります。王符は、君主や天子の起源を、上下のない太古に始まり、争いと収奪が起きたところで天が聖人に民を養わせたという物語で説明しました。天子は民の害を除くために置かれるという筋立てで、後の段の俸禄論の前提になります。ここでの君主は権力ではなく、民を守る役割として位置づけられています。現代の組織でも、役職や権限は、メンバーの混乱や不利益を解消するために設けられたものです。肩書を守ること自体が目的になっていないか、立ち返る視点が管理職には必要です。
この章句が説くこと
班禄天子君主の役割民を養う起源潜夫論
関連する章句
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『潜夫論』班祿故に天の君を立つるは、此の人を私して以て民を役するに非ず、蓋し暴を誅し害を除き黎元を利するを以てなり。是を以て人謀鬼謀、能者之に処る。詩に云う、「皇なる上帝、下に臨むこと赫たり、四方を監観し、民の瘼を求む。惟れ此の二国、其の政獲ず、惟れ此の四国、爰に究め爰に度る。上帝之を指し、其の式悪を憎み、乃ち眷みて西に顧み、此れ惟れ与に度る」と。蓋し此の言は、夏殷の二国の政の得ざるは、乃ち奢誇廓大を用う、上帝之を憎み、更に民の瘼を求め、聖人は天下の四国と究度して之を居らしむるを言うなり。前に良人を招き、奢誇廓大の紀極無きを疾む。乃ち惟れ法象を度り、礼祑を明著し、優憲藝を為し、之を無窮に縣く。故に伝に曰く、「礼を制するに、上物は十二に過ぎず、天の道なり」と。是を以て先聖は籍田に制有り、神に供するに度有り、己に奉ずるに節有り、賢を礼するに数有り。上下・大小・貴賤・親疏、皆な等威有り、階級衰殺し、各々足りて其の爵位を禄とす。公私其の等級に達し、礼は徳義を行う。此の時に当たり、九州の内、三千里を合わせるのみ、八百国あり。
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荀子・大略篇天の民を生ずるは、君の為に非(あら)ざるなり。天の君を立つるは、以て民の為にするなり。故に古(いにしへ)は、地を列(わか)ちて国を建つるは、以て諸侯を貴くするのみに非ず。官職を列(つら)ね、爵禄(しゃくろく)を差(しな)するは、以て大夫を尊くするのみに非ざるなり。
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文子・自然老子曰く、古の帝王を立つるは、以て其の欲を奉養するに非ず。聖人の位を践むは、以て其の身を逸楽するに非ず。天下の民の為に、強は弱を陵ぎ、衆は寡を暴し、詐者は愚を欺き、勇者は怯を侵し、又た其の智を懐きて以て相い教えず、財を積みて以て相い分かたざるが為に、故に天子を立てて以て之を斉一にす。一人の明は海内を遍く照らす能わず、故に三公九卿を立てて以て之を輔翼せしむ。絶国殊俗の沢を被るを得ざるが為に、故に諸侯を立てて以て之を教誨せしむ。是を以て天地四時応ぜざる無く、官に隠事無く、国に遺利無し。寒きに衣せ飢えたるに食らわせ、老弱を養い、労倦を息わす所以は、以てせざる無し。神農は形悴れ、堯は瘦せ、舜は黧黒く、禹は胼胝す。伊尹は鼎を負いて湯に干め、呂望は刀を鼓きて周に入り、百里奚は伝売せられ、管仲は束縛せられ、孔子は黔突無く、墨子は煖席無し。禄を貪り位を慕うに非ず、将に事を天下の利に起こし、万民の害を除かんと欲すればなり。天子自り庶人に至るまで、四体勤めず、思慮困しまずして、事に於いて贍を求むる者は、未だ之を聞かざるなり。
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『潜夫論』衰製慢製無くして天下を成す者は、三皇なり。則象を画きて四表を化する者は、五帝なり。法禁を明らかにして海内を和する者は、三王なり。賞罰を行いて万民を斉うる者は、治国なり。君は法を立てて下行わざる者は、乱国なり。臣は政を作して君製せざる者は、亡国なり。是の故に民の乱れざる所以は、上に吏有ればなり。吏の奸無き所以は、官に法有ればなり。法の順い行わるる所以は、国に君有ればなり。君の位尊き所以は、身に義有ればなり。身に義有る者は、君の政なり。法とは、君の命なり。人君は正を思いて以て令を出だし、貴賤賢愚の違うを得る莫ければ、則ち君は上に位して、民氓は下に治まる。人君令を出だして、貴臣驕吏順わざれば、則ち君は弑に幾く、民は乱に幾し。
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