潜夫論 / 浮侈
此等之儔,既不助長農工女,無有益於世,而坐食嘉穀,消費白日,毀敗成功,以見為破,以牢為行,以大為小,以易為難,皆宜禁者也。山林不能給野火,江海不能灌漏卮。孝文皇帝躬衣弋綈,足履革寫,以韋帶劍,集上書囊,以為殿帷,盛夏苦暑,欲起一台,計直百萬,以為奢費而不作也。今京師貴戚,衣服飲食,車輿文飾廬舍,皆過王制,僭上甚矣。從奴仆妾,皆服葛子升越,筒中女布,細致綺穀,水紈錦繡,犀象珠玉,琥珀玳瑁,石山隱飾,金銀錯鏤,獐麂履寫,文組彩禖,驕奢僭主,轉相誇詫。箕子所晞,今在仆妾。富貴嫁娶,車軿各十,騎奴侍僮,夾轂節引。富者競欲相過,貧者恥不逮及。是故一饗之所費,破終身之本業。
新字:此等之儔,既不助長農工女,無有益於世,而坐食嘉穀,消費白日,毀敗成功,以見為破,以牢為行,以大為小,以易為難,皆宜禁者也。山林不能給野火,江海不能灌漏卮。孝文皇帝躬衣弋綈,足履革写,以韋帯剣,集上書嚢,以為殿帷,盛夏苦暑,欲起一台,計直百万,以為奢費而不作也。今京師貴戚,衣服飲食,車輿文飾廬舎,皆過王制,僭上甚矣。従奴仆妾,皆服葛子升越,筒中女布,細致綺穀,水紈錦繍,犀象珠玉,琥珀玳瑁,石山隠飾,金銀錯鏤,獐麂履写,文組彩禖,驕奢僭主,転相誇詫。箕子所晞,今在仆妾。富貴嫁娶,車軿各十,騎奴侍僮,夾轂節引。富者競欲相過,貧者恥不逮及。是故一饗之所費,破終身之本業。
書き下し
此れ等の儔は、既に農工女を助長せず、世に益有ること無くして、坐して嘉穀を食らい、白日を消費し、成功を毀敗し、見るを以て破と為し、牢きを以て行くと為し、大なるを以て小と為し、易きを以て難と為す、皆な禁ずべき者なり。山林も野火に給する能わず、江海も漏卮に灌ぐ能わず。孝文皇帝は躬ら弋綈を衣、足は革寫を履み、韋を以て剣を帯び、上書の囊を集めて、以て殿の帷と為す。盛夏の苦暑にも、一台を起こさんと欲し、直を計るに百万、以て奢費と為して作らず。今京師の貴戚は、衣服飲食、車輿の文飾、廬舎、皆な王制に過ぎ、上を僭すること甚し。従奴仆妾も、皆な葛子升越、筒中の女布、細致の綺縠、水紈錦繡、犀象珠玉、琥珀玳瑁、石山隠飾、金銀錯鏤、獐麂の履寫、文組彩禖を服し、驕奢して主を僭し、転た相い誇詫す。箕子の晞う所、今は仆妾に在り。富貴の嫁娶には、車軿各々十、騎奴侍僮、轂を夾みて節引す。富める者は競いて相い過ぎんと欲し、貧しき者は及ばざるを恥ず。是の故に一饗の費やす所、終身の本業を破る。
現代語訳
こうした連中は、農や工や女の仕事を助けることもなく、世の中に益をもたらさないまま、座っておいしい穀物を食らい、日々を空費し、出来上がった成果を損ない、見えるものを壊し、堅固なものを崩し、大きなものを小さくし、易しいものを難しくします。いずれも禁じるべき者たちです。山林の木も野火の燃料には足りず、江海の水も底の抜けた杯には注ぎきれません。孝文皇帝は自ら粗い絹の衣を着け、足には革の履物を履き、革の帯で剣を佩き、上書の袋を集めて宮殿の帷にしました。真夏の暑さに苦しんでも一つの台を築きたいと思いましたが、費用が百万と見積もられると、奢りの費えだと考えて作りませんでした。ところが今の都の貴戚は、衣服や飲食、車の飾り、屋敷のすべてが王制を超え、上を侵すことが甚だしい。召使いやしもべ、妾までが、葛布や升越の上質な布、細やかな絹織物、水紈や錦繡、犀や象牙、珠玉、琥珀、玳瑁、石山の飾り、金銀の象嵌、獐や麂の革履、彩りの組み紐などを身に着け、驕り高ぶって主人を僭し、競って誇り合っています。箕子が案じたものが、今は召使いのもとにあるのです。富貴な家の婚礼では車を各十台そろえ、騎乗の奴僕や侍童が車の軸を挟んで行列を整えます。富める者は競ってそれを超えようとし、貧しい者は及ばないことを恥じます。こうして一度の宴の費用が、一生の本業を破ってしまうのです。
解説
この章句が説くこと
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礼記・礼運祝嘏は敢えて其の常古を易(か)うること莫し。是を大假(たいか)と謂う。祝嘏の辞説を、宗・祝・巫・史に蔵するは、礼に非ざるなり。是を幽国と謂う。醆(さん)・斝(か)もて尸君に及ぼすは、礼に非ざるなり。是を僭君と謂う。冕・弁・兵・革を私家に蔵するは、礼に非ざるなり。是を脅君と謂う。大夫官を具え、祭器仮らず、声楽皆具わるは、礼に非ざるなり。是を乱国と謂う。
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論語・八佾篇孔子季氏を謂う、「八佾庭に舞わす。是れをも忍ぶ可くんば、孰れをか忍ぶ可からざらん。」
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『潜夫論』浮侈今、枿畢の郊、文武の陵、南城の塁、曾皙の塚を按ずるに、周公は忠ならざるに非ず、曾子は孝ならざるに非ず。以為らく、君を褒め父を顕すは、財を聚むるに在らず、名を揚げ祖を顕すは、車馬に在らず、と。孔子曰く、「貨財多ければ徳を傷り、弊るれば則ち礼を没す」と。晋の霊は賦を厚くして以て牆を雕り、春秋は以て君に非ずと為す。華元・楽呂は文公を厚葬し、春秋は以て臣ならずと為す。況んや群司士庶、乃ち主上を僭侈し、天道に過ぐべけんや。景帝の時、原侯衛不害は葬の律に過ぐるに坐して国を奪われ、明帝の時、桑民摐陽侯は塚の製に過ぐるに坐して髡削せらる。今天下は浮侈して本を離れ、僭奢して上に過ぐ、亦た已に甚だし。凡そ諸もろの譏る所、皆な民の性に非ず、而して競い務むる者は、乱政薄化の之をして然らしむるなり。王者は世を統べ民を観て教えを設け、乃ち能く風を変え俗を易え、以て太平を致す。
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『潜夫論』浮侈古は必ず命民有り、然る後に乃ち繒彩を衣て車馬に乗るを得たり。今は既に尽くは古に復する能わざるも、細民は誠に須いざるべし、乃ち古昔の孝子を逾ゆ。衣は必ず細致、履は必ず獐麂、組は必ず文采、襪を飾るに必ず鋋此、車馬を校飾し、奴婢を多く畜う。諸もろ此くの若くなる能う者は、既に穀を生ぜず、又た坐して蠧賊と為るなり。子曰く、「古の葬る者は、厚く之に衣するに薪を以てし、之を中野に葬り、封せず樹えず、喪期に時無し、後世の聖人之を易うるに棺槨を以てす」と。桐木もて棺と為し、葛采もて緘と為し、下は泉に及ばず、上は臭を泄らさず。後世は楸梓槐柏狖霡を以て、各々方土の出す所を取り、膠漆分かち致し、釘細く要は削り除き鏟り靡し、際会を見ず、其の堅きは恃むに足り、其の用は任ずるに足る、此くの如くにして可なり。其の後京師の貴戚は、必ず江南の檽梓豫章楩楠を欲し、辺遠の下土も、亦た競いて相い仿効す。
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『潜夫論』浮侈夫れ貧は富に生じ、弱は強に生じ、乱は治に生じ、危は安に生ず。是の故に明王の民を養うや、之を憂い之を労い、之を教え之を誨え、微を慎み萌を防ぎ、以て其の邪を断つ。故に《易》は「節するに制度を以てし、財を傷らず、民を害せず」を美とす。《七月》の詩に「大小之を教え、終りて復た始む」と。此に由りて之を観れば、民は固より恣にすべからず。今民は衣服に奢り、飲食に侈り、口舌を事とし、而して調欺を習い、以て相い詐紿すること、比肩して是れなり。或いは奸を謀り任に合するを以て業と為し、或いは遊敖博弈を以て事と為し、或いは丁夫世々犁鋤を伝えず、丸を懐き弾を挟み、手を携えて遨遊す。或いは好土を取り、丸を作りて之を弾に売る、外は以て寇を禦ぐべからず、内は以て鼠を禁ずるに足らず。晋の霊之を好み、以て其の悪を増す、未だ嘗て志義の士の、操りて以て遊ぶを喜ぶ者を聞かず。唯だ無心の人、群豎小子のみ、接して之を持ち、妄りに烏雀を弾き、百発して一を得ず、而して反って面目に中つ、此れ最も無用にして害有るなり。或いは坐して竹簧を作り、其の頭を削鋭し、傷害の象有り、傅くるに蠟蜜を以てし、甘舌の類有り、皆吉祥善応に非ず。或いは泥車瓦狗、馬騎倡排、諸もろの戯弄小児の具を作りて以て巧詐し、詩は其の麻を績まざるを刺る。
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『潜夫論』浮侈或いは金を刻み玉を鏤め、檽梓楩楠、良田に塋を造り、黄壌に蔵を致すに至り、多く珍宝偶人車馬を埋め、大塚を造起し、広く松柏を種え、廬舎祠堂、崇侈して上を僭す。寵臣貴戚、州郡の世家、喪葬有る毎に、都官属県、各々当に吏を遣わして齎奉すべく、車馬帷帳、貸仮して客を待つの具とし、競いて華観を為す。此れ終を奉ずるに益無く、孝行に増す無く、但だ煩を作し擾を攪し、吏民を傷害するのみ。
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