潜夫論 / 浮侈
女也婆娑,今多不修中饋,休其蠶織,而起學巫祝,鼓舞事神,以欺誣細民,熒惑百姓。婦女羸弱,疾病之家,懷憂憒憒,皆易恐懼,至使奔走便時,去離正宅,崎嶇路側,上漏下濕,風寒所傷,奸人所利,賊盜所中。益禍益崇,以致重者,不可勝數。或棄醫藥,更往事神,故至於死亡。不自知為巫所欺誤,乃反恨事巫之晚,此熒惑細民之甚者也。或裁好繒,作為疏頭,令工采畫,雇人書祝,虛飾巧言,欲邀多福。或裂拆繒彩,裁廣數分,長各五寸,縫繪佩之。或紡彩絲而縻,斷截以繞臂,此長無益於吉凶,而空殘滅繒絲,縈悸小民,剋削綺穀,寸竊八采,以成榆葉無窮。水波之文,碎刺縫紩,詐為笥囊,裙䙏衣被,費繒百縑,用功十倍。
新字:女也婆娑,今多不修中饋,休其蠶織,而起学巫祝,鼓舞事神,以欺誣細民,熒惑百姓。婦女羸弱,疾病之家,懐憂憒憒,皆易恐懼,至使奔走便時,去離正宅,崎嶇路側,上漏下湿,風寒所傷,奸人所利,賊盗所中。益禍益崇,以致重者,不可勝数。或棄医薬,更往事神,故至於死亡。不自知為巫所欺誤,乃反恨事巫之晩,此熒惑細民之甚者也。或裁好繒,作為疏頭,令工采画,雇人書祝,虚飾巧言,欲邀多福。或裂拆繒彩,裁広数分,長各五寸,縫絵佩之。或紡彩糸而縻,断截以繞臂,此長無益於吉凶,而空残滅繒糸,縈悸小民,剋削綺穀,寸窃八采,以成榆葉無窮。水波之文,砕刺縫紩,詐為笥嚢,裙䙏衣被,費繒百縑,用功十倍。
書き下し
女や婆娑たり、今多く中饋を修めず、其の蚕織を休め、而して起ちて巫祝を学び、鼓舞して神に事え、以て細民を欺誣し、百姓を熒惑す。婦女の羸弱、疾病の家は、憂いを懐きて憒憒たり、皆な恐懼し易く、奔走して時に便にし、正宅を去離し、路側に崎嶇として、上は漏れ下は湿り、風寒に傷られ、奸人の利する所、賊盗の中る所と為るに至らしむ。禍を益し崇を益し、以て重きを致す者、勝げて数うべからず。或いは医薬を棄て、更に往きて神に事え、故に死亡に至る。自ら巫の欺誤する所と為るを知らず、乃ち反って巫に事うるの晩きを恨む、此れ細民を熒惑するの甚だしき者なり。或いは好き繒を裁ち、疏頭を作為し、工をして采画せしめ、人を雇いて祝を書せしめ、虚飾の巧言もて、多福を邀えんと欲す。或いは繒彩を裂き拆き、裁ること広さ数分、長さ各々五寸、縫繪して之を佩ぶ。或いは彩糸を紡ぎて縻ぎ、断截して以て臂に繞らす、此れ長く吉凶に益無くして、空しく繒糸を残滅し、小民を縈悸し、綺縠を剋削し、寸ごとに八采を竊み、以て楡葉の窮まり無きを成す。水波の文、砕刺縫紩し、詐りて笥囊と為し、裙䙏衣被とし、繒百縑を費やし、功を用いること十倍す。
現代語訳
女たちは舞い遊び、今では多くが家の炊事を整えず、蚕織の仕事をやめて、巫祝の術を学び、鼓を打ち舞って神に仕え、貧しい民をだまし、百姓を惑わせています。体の弱い婦女や病人のいる家は、憂いを抱いて心が乱れ、みな恐れやすく、慌てて吉日を選んで走り回り、住まいを離れて道端の険しい所に身を寄せ、上は雨漏り下は湿気で、風や寒さに傷つけられ、悪人に利用され、盗賊に狙われるまでになります。災いと祟りが重なって、重症になる者は数え切れません。医薬を捨てて神に仕えに行き、ついに死に至る者もいます。自分が巫にだまされたと気づかず、むしろ巫に頼るのが遅かったと悔やむ。これは貧しい民を惑わせる最もひどい例です。また、良い絹を裁って疏頭の文書を作り、職人に彩色させ、人を雇って祝詞を書かせ、飾り立てた巧みな言葉で多くの福を招こうとする者もいます。絹の彩りを裂いて幅数分、長さ五寸ほどに切り、縫い付けて身に着ける者、彩り糸を紡いで結び、切って腕に巻く者もいます。これは長く吉凶に何の益もなく、むなしく絹糸を損ない、小民を不安にさせ、薄絹を削り、一寸ごとに八色を盗み、楡の葉のような切れ端を際限なく作るだけです。水の波のような模様を細かく刺繍し縫い合わせ、見せかけの小物入れや裳、衣類にして、絹百疋を費やし、手間は十倍にもなります。
解説
この章句が説くこと
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『潜夫論』浮侈夫れ貧は富に生じ、弱は強に生じ、乱は治に生じ、危は安に生ず。是の故に明王の民を養うや、之を憂い之を労い、之を教え之を誨え、微を慎み萌を防ぎ、以て其の邪を断つ。故に《易》は「節するに制度を以てし、財を傷らず、民を害せず」を美とす。《七月》の詩に「大小之を教え、終りて復た始む」と。此に由りて之を観れば、民は固より恣にすべからず。今民は衣服に奢り、飲食に侈り、口舌を事とし、而して調欺を習い、以て相い詐紿すること、比肩して是れなり。或いは奸を謀り任に合するを以て業と為し、或いは遊敖博弈を以て事と為し、或いは丁夫世々犁鋤を伝えず、丸を懐き弾を挟み、手を携えて遨遊す。或いは好土を取り、丸を作りて之を弾に売る、外は以て寇を禦ぐべからず、内は以て鼠を禁ずるに足らず。晋の霊之を好み、以て其の悪を増す、未だ嘗て志義の士の、操りて以て遊ぶを喜ぶ者を聞かず。唯だ無心の人、群豎小子のみ、接して之を持ち、妄りに烏雀を弾き、百発して一を得ず、而して反って面目に中つ、此れ最も無用にして害有るなり。或いは坐して竹簧を作り、其の頭を削鋭し、傷害の象有り、傅くるに蠟蜜を以てし、甘舌の類有り、皆吉祥善応に非ず。或いは泥車瓦狗、馬騎倡排、諸もろの戯弄小児の具を作りて以て巧詐し、詩は其の麻を績まざるを刺る。
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『潜夫論』浮侈此れ等の儔は、既に農工女を助長せず、世に益有ること無くして、坐して嘉穀を食らい、白日を消費し、成功を毀敗し、見るを以て破と為し、牢きを以て行くと為し、大なるを以て小と為し、易きを以て難と為す、皆な禁ずべき者なり。山林も野火に給する能わず、江海も漏卮に灌ぐ能わず。孝文皇帝は躬ら弋綈を衣、足は革寫を履み、韋を以て剣を帯び、上書の囊を集めて、以て殿の帷と為す。盛夏の苦暑にも、一台を起こさんと欲し、直を計るに百万、以て奢費と為して作らず。今京師の貴戚は、衣服飲食、車輿の文飾、廬舎、皆な王制に過ぎ、上を僭すること甚し。従奴仆妾も、皆な葛子升越、筒中の女布、細致の綺縠、水紈錦繡、犀象珠玉、琥珀玳瑁、石山隠飾、金銀錯鏤、獐麂の履寫、文組彩禖を服し、驕奢して主を僭し、転た相い誇詫す。箕子の晞う所、今は仆妾に在り。富貴の嫁娶には、車軿各々十、騎奴侍僮、轂を夾みて節引す。富める者は競いて相い過ぎんと欲し、貧しき者は及ばざるを恥ず。是の故に一饗の費やす所、終身の本業を破る。
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『潜夫論』浮侈王者は四海を以て一家と為し、兆民を以て通計と為す。一夫耕さざれば、天下必ず其の饑を受くる者あり。一婦織らざれば、天下必ず其の寒を受くる者あり。今、世を挙げて農桑を舎てて商賈に趨り、牛馬車輿は道路に填塞し、遊手を功と為す者は都邑に充盈す。本を治むる者は少なく、浮食する者は衆し。商邑翼翼として、四方是れ極とす。今、洛陽を察するに、浮末の者は農夫に什し、虚偽遊手の者は浮末に什す。是れ則ち一夫耕せば、百人之を食い、一婦桑すれば、百人之を衣る。一を以て百に奉ず、孰か能く之を供せん。天下百郡千県、市邑万もて数うるも、類ね皆な此くの如し。本末何ぞ相供するに足らん。則ち民安んぞ饑寒せざるを得ん。饑寒並び至れば、則ち安んぞ非を為さざるを得ん。非を為せば則ち奸宄あり。奸宄繁多なれば、則ち吏安んぞ嚴酷なるなきを得ん。嚴酷数ば加われば、則ち下安んぞ愁怨なきを得ん。愁怨する者多ければ、則ち咎征並び臻り、下民聊らなく、則ち上天災いを降し、則ち国危うし。
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『潜夫論』浮侈古は必ず命民有り、然る後に乃ち繒彩を衣て車馬に乗るを得たり。今は既に尽くは古に復する能わざるも、細民は誠に須いざるべし、乃ち古昔の孝子を逾ゆ。衣は必ず細致、履は必ず獐麂、組は必ず文采、襪を飾るに必ず鋋此、車馬を校飾し、奴婢を多く畜う。諸もろ此くの若くなる能う者は、既に穀を生ぜず、又た坐して蠧賊と為るなり。子曰く、「古の葬る者は、厚く之に衣するに薪を以てし、之を中野に葬り、封せず樹えず、喪期に時無し、後世の聖人之を易うるに棺槨を以てす」と。桐木もて棺と為し、葛采もて緘と為し、下は泉に及ばず、上は臭を泄らさず。後世は楸梓槐柏狖霡を以て、各々方土の出す所を取り、膠漆分かち致し、釘細く要は削り除き鏟り靡し、際会を見ず、其の堅きは恃むに足り、其の用は任ずるに足る、此くの如くにして可なり。其の後京師の貴戚は、必ず江南の檽梓豫章楩楠を欲し、辺遠の下土も、亦た競いて相い仿効す。
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『潜夫論』浮侈或いは金を刻み玉を鏤め、檽梓楩楠、良田に塋を造り、黄壌に蔵を致すに至り、多く珍宝偶人車馬を埋め、大塚を造起し、広く松柏を種え、廬舎祠堂、崇侈して上を僭す。寵臣貴戚、州郡の世家、喪葬有る毎に、都官属県、各々当に吏を遣わして齎奉すべく、車馬帷帳、貸仮して客を待つの具とし、競いて華観を為す。此れ終を奉ずるに益無く、孝行に増す無く、但だ煩を作し擾を攪し、吏民を傷害するのみ。
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『潜夫論』浮侈今、枿畢の郊、文武の陵、南城の塁、曾皙の塚を按ずるに、周公は忠ならざるに非ず、曾子は孝ならざるに非ず。以為らく、君を褒め父を顕すは、財を聚むるに在らず、名を揚げ祖を顕すは、車馬に在らず、と。孔子曰く、「貨財多ければ徳を傷り、弊るれば則ち礼を没す」と。晋の霊は賦を厚くして以て牆を雕り、春秋は以て君に非ずと為す。華元・楽呂は文公を厚葬し、春秋は以て臣ならずと為す。況んや群司士庶、乃ち主上を僭侈し、天道に過ぐべけんや。景帝の時、原侯衛不害は葬の律に過ぐるに坐して国を奪われ、明帝の時、桑民摐陽侯は塚の製に過ぐるに坐して髡削せらる。今天下は浮侈して本を離れ、僭奢して上に過ぐ、亦た已に甚だし。凡そ諸もろの譏る所、皆な民の性に非ず、而して競い務むる者は、乱政薄化の之をして然らしむるなり。王者は世を統べ民を観て教えを設け、乃ち能く風を変え俗を易え、以て太平を致す。
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