潜夫論 / 忠貴
曆觀前世貴人之用心也,與嬰兒等。嬰兒有常病,貴臣有常禍,父母有常失,人君有常過。嬰兒常病,傷飽也;貴臣常禍,傷寵也;父母常失,在不能已於媚子;人君常過,在不能已於驕臣。哺乳太多,則必掣縱而生癇;貴富太盛,則必驕佚而生過。是故媚子以賊其軀者,非一門也;驕臣用滅其家者,非一世也。或以背叛橫逆不道,或以德薄不稱其貴。文昌奠功,司命舉過,觀惡深淺,稱罪降罰。或捕挌斬首,或拉髆掣胸,掊死深阱,銜刀都市,僵屍破家,覆宗滅族者,皆無功於民氓者也。而後人貪權冒寵,蓄積無極,思登顛隕之台,樂循覆車之跡,願裨福祚,以備員滿貫者,何世無之?
新字:暦観前世貴人之用心也,与嬰児等。嬰児有常病,貴臣有常禍,父母有常失,人君有常過。嬰児常病,傷飽也;貴臣常禍,傷寵也;父母常失,在不能已於媚子;人君常過,在不能已於驕臣。哺乳太多,則必掣縦而生癇;貴富太盛,則必驕佚而生過。是故媚子以賊其躯者,非一門也;驕臣用滅其家者,非一世也。或以背叛横逆不道,或以徳薄不称其貴。文昌奠功,司命舉過,観悪深浅,称罪降罰。或捕挌斬首,或拉髆掣胸,掊死深阱,銜刀都市,僵屍破家,覆宗滅族者,皆無功於民氓者也。而後人貪権冒寵,蓄積無極,思登顛隕之台,楽循覆車之跡,願裨福祚,以備員満貫者,何世無之?
書き下し
歴く前世の貴人の用心を観るに、嬰児と等し。嬰児に常病有り、貴臣に常禍有り、父母に常失有り、人君に常過有り。嬰児の常病は、飽に傷つくなり。貴臣の常禍は、寵に傷つくなり。父母の常失は、子に媚びるを已むる能わざるに在り。人君の常過は、臣に驕るを已むる能わざるに在り。哺乳太だ多ければ、則ち必ず掣縦して癇を生ず。貴富太だ盛んなれば、則ち必ず驕佚して過ちを生ず。是の故に子に媚びて以て其の躯を賊う者は、一門に非ざるなり。臣を驕らして用て其の家を滅ぼす者は、一世に非ざるなり。或いは背叛横逆不道を以て、或いは徳薄くして其の貴に称わざるを以てす。文昌は功を奠め、司命は過ちを挙げ、悪の深浅を観て、罪に称いて罰を降す。或いは捕挌斬首し、或いは髆を拉き胸を掣き、深阱に掊死し、刀を銜えて都市に、屍を僵して家を破り、宗を覆し族を滅ぼす者は、皆な民氓に功無き者なり。而るに後人は権を貪り寵を冒し、蓄積極まり無く、顛隕の台に登らんことを思い、覆車の跡に循うを楽しみ、福祚を裨いて以て員を備え貫を満たさんと願う者は、何れの世にか無からん。
現代語訳
これまでの世の貴人の心がけを見渡すと、赤ん坊と同じです。赤ん坊には決まった病気があり、貴い臣下には決まった禍があり、父母には決まった過ちがあり、君主には決まった失敗があります。赤ん坊の決まった病は、食べ過ぎで傷つくことです。貴臣の決まった禍は、寵愛で傷つくことです。父母の決まった過ちは、子にこびることをやめられないことにあり、君主の決まった過ちは、臣に驕りを許すことをやめられないことにあります。乳を飲ませ過ぎれば、必ず引きつけて癇を起こします。富貴が盛んに過ぎれば、必ず驕りと放埒が過ちを生みます。ですから子にこびて自分の子の身を害する父母は、一家に限りません。臣を驕らせてその家を滅ぼす君主は、一代に限りません。ある者は背き逆らい道に外れたため、ある者は徳が薄くその貴さにふさわしくなかったためです。文昌星が功績を定め、司命星が過ちを数え、悪の深さ浅さを見て、罪に応じて罰を下します。捕らえられて斬首される者、肩を砕かれ胸を引き裂かれる者、深い穴で打ち殺される者、刀を口にくわえて市に晒される者、屍を倒して家を破り、宗族を覆し滅ぼされる者は、いずれも民に功のなかった者たちです。それなのに後の人は権力を貪り寵愛を冒し、蓄積は限りなく、転落する台に登ろうと思い、覆った車の跡に従うことを楽しみ、福を補って人数を揃え数を満たそうとする。そういう者は、どの世にもいなかったでしょうか。
解説
この章句が説くこと
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