潜夫論 / 考績
古者諸侯貢士,一適謂之好德,載適謂之尚賢,三適謂之有功,則加之賞。其不貢士也,一則黜爵,載則黜地,三黜則爵土俱畢。附下罔上者刑,與聞國政而無益於民者斥,在上位而不能進賢者逐。其受事而重選舉,審名實而取賞罰也。如此,故能別賢愚而獲多士,成教化而安民氓,三有於世,皆致太平。聖漢踐祚,載祀四八而猶未者,教不假而功不考,賞罰稽而赦贖數也。諺曰:「曲水惡直繩,重罰惡明證。」此群臣所以樂總猥而惡考功也。
新字:古者諸侯貢士,一適謂之好徳,載適謂之尚賢,三適謂之有功,則加之賞。其不貢士也,一則黜爵,載則黜地,三黜則爵土倶畢。附下罔上者刑,与聞国政而無益於民者斥,在上位而不能進賢者逐。其受事而重選舉,審名実而取賞罰也。如此,故能別賢愚而獲多士,成教化而安民氓,三有於世,皆致太平。聖漢践祚,載祀四八而猶未者,教不仮而功不考,賞罰稽而赦贖数也。諺曰:「曲水悪直縄,重罰悪明証。」此群臣所以楽総猥而悪考功也。
書き下し
古は諸侯士を貢するに、一たび適くを之れ徳を好むと謂い、載たび適くを之れ賢を尚ぶと謂い、三たび適くを之れ功有りと謂い、則ち之に賞を加う。其の士を貢せざるや、一なれば則ち爵を黜け、載なれば則ち地を黜け、三たび黜くれば則ち爵土倶に畢う。下に附き上を罔う者は刑し、国政に与り聞くも民に益無き者は斥け、上位に在りて賢を進むる能わざる者は逐う。其の事を受けて選挙を重んじ、名実を審らかにして賞罰を取るなり。此の如し、故に能く賢愚を別ちて多士を獲、教化を成して民氓を安んじ、世に三有りて、皆太平を致す。聖漢祚を践みて、載祀四八の歳月を経て猶お未だしき者は、教えは仮さず而して功は考えず、賞罰は稽り而して赦贖は数しばなればなり。諺に曰く、「曲水は直縄を悪み、重罰は明証を悪む」と。此れ群臣の総猥を楽しみて考功を悪む所以なり。
現代語訳
昔は、諸侯が士を朝廷に推挙する際、一度推挙すれば徳を好むといい、二度推挙すれば賢者を尊ぶといい、三度推挙すれば功があるといい、そこで賞を加えました。士を推挙しない場合は、一度目で爵位を下げ、二度目で領地を削り、三度目には爵位と領地をすべて取り上げました。下に取り入って上を欺く者は罰し、国政に関与しながら民に益のない者は退け、上位にいて賢者を進められない者は追放しました。職務を受けたら人材の選抜を重んじ、名と実を明らかにして賞罰を行ったのです。このようにしたので、賢者と愚者を区別して多くの士を得、教化を成して民を安んじ、世に三度の太平がありました。聖なる漢が帝位に就いて以来、四八の歳月を経ても、まだそうならないのは、教えが施されず、功が考査されず、賞罰が滞り、赦免や贖罪がしばしば行われるからです。ことわざに「曲がった水は真っすぐな縄を嫌い、重い罰は明らかな証拠を嫌う」とあります。これが、群臣が雑務に紛れることを好み、功績の考査を嫌う理由です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
司馬法・嚴位若し将に復た戦わんとすれば、則ち賞罰を重くす。
-
『重職心得箇条』第九条刑賞与奪の権は、人主のものにして、大臣是れ預かるべきなり。倒(さかし)まに有司に授くべからず。斯くの如き大事に至っては、厳敷(きびし)く透間あるべからず。
-
『潜夫論』正列旧時、京師は動功を防がず、禁を造りて以来、吉祥応瑞、子孫昌熾なること、前に過ぐる能わず。且つ夫れ君を以て臣を畏れ、上を以て下を需むれば、則ち必ず弱きを示して陵がれを取らん、殆ど福を致すの招きに非ざるなり。嘗て上記を観るに、人君の身修まり正しく賞罰明らかなる者は、国治まりて民安し。民安楽なれば、天悦喜して曆数を増す。故に『書』に曰く、「王は小民を以て、天の永命を受く」と。孔子曰く、「天の助くる所の者は、順なり。人の助くる所の者は、信なり」と。信を履みて順を思い、又以て賢を尚ぶ、是を以て天より之を祐け、吉にして利しからざる無し、此れ最も凶災を却けて福善を致すの本なり。
-
『韓非子』用人第二十七罪は甲に生じて、禍は乙に帰すれば、伏怨乃ち結ぶ。故に至治の国は、賞罰有りて喜怒無し、故に聖人極まる。
-
『呻吟語』外篇・治道・餘懼と餘望人を罰するに盡くは其の罪を數へずんば、則ち餘懼有り。人を賞するに盡くは其の功を數へずんば、則ち餘望有り。
-
『帝範』賞罰第九夫(そ)れ天(てん)の物(もの)を育(そだ)つるは、猶(な)ほ君(きみ)の衆(しゅう)を御(ぎょ)するがごとし。天(てん)は寒暑(かんしょ)を以(も)って徳(とく)と為(な)し、君(きみ)は仁愛(じんあい)を以(も)って心(こころ)と為(な)す。寒暑(かんしょ)既(すで)に調(ととの)へば、則(すなは)ち時(とき)に疾疫(しつえき)無(な)く、風雨(ふうう)節(ふし)ならざれば、則(すなは)ち嵗(とし)に饑寒(きかん)有(あ)り。仁愛(じんあい)下(しも)に施(ほどこ)さるれば、則(すなは)ち人(ひと)凋弊(ちょうへい)せず、教令(きょうれい)度(ど)を失(うしな)へば、則(すなは)ち政(まつりごと)に乖違(かいい)有(あ)り。其(そ)の害(がい)の源(みなもと)を防(ふせ)ぎ、其(そ)の利(り)の本(もと)を開(ひら)く。罰(ばつ)を顯(あき)らかにして以(も)って之(これ)を威(おど)し、賞(しょう)を明(あき)らかにして以(も)って之(これ)を化(か)す。威(い)立(た)てば則(すなは)ち惡(あく)なる者(もの)懼(おそ)れ、化(か)行(おこな)はるれば則(すなは)ち善(ぜん)なる者(もの)勸(すす)む。己(おのれ)に適(かな)ひて道(みち)に妨(さまた)ぐれば、禄(ろく)を加(くは)へず、己(おのれ)に逆(さか)らひて國(くに)に便(べん)なれば、刑(けい)を施(ほどこ)さず。故(ゆゑ)に賞(しょう)せらるる者(もの)は君(きみ)を徳(とく)とせず、功(こう)の致(いた)す所(ところ)なればなり。罰(ばっ)せらるる者(もの)は上(かみ)を怨(うら)みず、罪(つみ)の當(あた)る所(ところ)なればなり。故(ゆゑ)に書(しょ)に曰(いは)く、偏(かたよ)る無(な)く黨(とう)する無(な)ければ、王道(おうどう)蕩蕩(とうとう)たりと。此(こ)れ賞罰(しょうばつ)の權(けん)なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る