省諐録 / 第14条
凡讀書須熟誦。不然。無甚受用。予來此中。書卷不得攜與。端居書室。左右廚子。所欲檢查。輒隨手抽繹。全然不同。日日默念。而因以爲藥石。爲針砭者。不過平素所精讀暗記者。少時專務博涉。多讀羣書。率皆若存若亡。今欲記起而卒不能。雖多亦奚以爲。他日幸得放還。當以諗後生。且以自警也。
新字:凡読書須熟誦。不然。無甚受用。予来此中。書巻不得攜与。端居書室。左右廚子。所欲検查。輒随手抽繹。全然不同。日日黙念。而因以為薬石。為針砭者。不過平素所精読暗記者。少時専務博渉。多読羣書。率皆若存若亡。今欲記起而卒不能。雖多亦奚以為。他日幸得放還。当以諗後生。且以自警也。
書き下し
凡そ書を讀むには須らく熟誦すべし。然らずんば、甚だしくは受用無し。予此の中に來りて、書卷は攜へ與ふるを得ず。書室に端居し、左右の廚子、檢査せんと欲する所、輒ち手に隨ひて抽繹するとは、全然同じからず。日日默念して、因りて以て藥石と爲し、針砭と爲す者は、平素精讀暗記する所の者に過ぎず。少き時專ら博涉を務め、多く羣書を讀むも、率ね皆存するが若く亡きが若し。今記起せんと欲して卒に能はず。多しと雖も亦奚ぞ以て爲さん。他日幸にして放還するを得ば、當に以て後生に諗げ、且つ以て自ら警むべし。
現代語訳
およそ書を読むときは、よく暗誦しなければなりません。そうでなければ、あまり身につきません。私はここに来て、書物を持ち込むことが許されませんでした。書斎にゆったり座り、左右の書棚から調べたいものを手に取って引き出すのとは、まったく違います。毎日黙って思い起こし、薬や鍼の治療のように戒めとして役立てられるのは、ふだんから精読して暗記していたものに限られます。若いころはもっぱら広く手を出すことに努め、多くの書物を読みましたが、たいていはあるようなないような状態で、今思い出そうとしても結局思い出せません。多くても、何の役に立つでしょうか。いつか幸いに釈放されたなら、これを後進に告げ、あわせて自分への戒めとしましょう。
解説
この章句が説くこと
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『慎思録』巻之四張子曰く、書を読むこと少なければ、則ち考校して義の精しきを得るに由無し、と。愚謂へらく、蓋し博学多聞に非ざれば、則ち以て天下の変を尽くすに足らざるなり。豈に偏狭固陋の学の能く得る所ならんや。張子曰く、書は須らく誦を成すべし。記せざれば則ち思ひ起こらず、と。愚謂へらく、記誦は是れ読書の第一法なり。多く読まざれば則ち記すること能はず。記せざれば則ち義理を考究するに由無し。故に記誦は誠に是れ学者の要務なり。然れども之を記誦するは、須らく少壮の時に於てすべし。苟も強仕の時に到らば、記誦に勉むと雖も、然れども忘失し易く、徒らに力を労するのみ。
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言志四録・言志後録 第二百三十九条 書は妄りに読む可からず余弱冠の前後、鋭意読書し、目に千古を空しうせんと欲す。中年を過ぐるに及び、一旦悔悟し、痛く外馳を戒め、務めて内省に従ふ。然る後自ら稍得る所有りて、此の学に負かざるを覚ゆ。今は則ち老いたり。少壮に読む所の書、過半遺忘し、茫として夢中の事の如し。稍胸臆に留まるも、亦落落として片段を成さず。益々半生力を費して用無きを悔ゆ。今にして之を思へば、書は妄りに読む可からず。必ず択ぶ所有りて且つ熟して可なり。只終身受用するに足るを要するのみ。後生我が悔を踏むこと勿れ。
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『慎思録』巻之二読書に多きを貪るは、是れ学者の病にして、朱子の戒むる所なり。従前篤信も亦た此の病有り。退之の所謂多きを貪り得るを務む、今良法に非ざるを覚ゆ。只だ逐一精熟し、序に循ひて漸く進みて、而る後に博に至る。是れ良法なり。黄山谷曰く、大率学者は博を喜びて、常に精ならざるを病む。百書に汎濫するは、一書に精しきに若かず。余力有りて然る後に諸書に及べば、則ち諸篇を渉猟するも、亦た其の精を得、と。此の説は朱子の取る所にして、読書の良法と為すべし。
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『文武訓』文訓下之末一書をよみ書を見るには、一書に専なるべし。或は経を見史を見て、二書を兼ぬるも亦よし。一時に書を数多見るべからず。専一ならざればまぎれてくはしからず。工夫わかれては、精熟せずして功をなしがたし。一册子をこしらへ、諸書の要語を抄写して、時々記誦すべし。要語をおぼゆれば、功を用ふること少にしても其益多し。故に、要用なることは必ず記誦すべし。記誦せざれば用をなしがたし。
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『慎思録』巻之四凡そ読書の法は、経を本と為し、史之に次ぎ、子集又其の次なり。其の功を用ふるの軽重本末次序は、須らく此の如くすべし。諸史子集を読むにも、亦た各須らく一書に専らにすべし。或いは二書を兼ね読むも亦た可なり。然れども一時に誦読する所の書多くして専一ならざれば、則ち紛冗にして条理を成さず。功力分かれて、精熟を做し難し。凡そ諸史子集は、其の精要なる者を抄出して冊子と為し、須らく日夜熟読して記誦を成すべし。此の如くすれば則ち功を用ふること少なくして、効多し。凡そ書を看るに、其の要用有る者は、須らく誦を成すべし。誦を成さざれば用を済し難し。
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『宋名臣言行録』後集巻七・司馬光幼き時、記誦の人に如かざるを患う。羣居して講習し、衆兄弟既に誦を成して遊息す。獨り帷を下ろし編を絶ち、能く倍誦するに迨びて乃ち止む。力を用うること多き者は功を收むること遠し。其の精誦する所は乃ち終身忘れざるなり。公嘗て言う、書は誦を成さざる可からず。或いは馬上に在り、或いは中夜寝ねざる時に、其の文を詠じ其の義を思わば、得る所多からんと。
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