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政談 / 大名の潰れ跡引拂の事

城を受取る節も右のたぐひの武器をば城より出して、城を受取る人に相渡し、其の後城を引渡すべきことなり、尤も城付の道具は引渡すことなれども、其の外の武器は其の沙汰を承はり及はさる故に茲に記す、國を守る武器は大名ならで入ざる事なり、其の家潰るゝからは公儀へ悉く上るべし、外の家財とは各別のものなり、町人百姓に賣渡すこと曾てあるべからさることなり、異國にては三代の後世も藏甲と云ひて、甲胃は公儀へ納め置きて、合戰の前に渡し歸陣しては又納むることなり、日本の古も同じ、津の國兵庫は神功皇后三韓征伐の武器を納めたる所なり、武藏の秩父は日本武尊の東夷征伐の武器を納めたる所なり、今武家の世になりては、人々所持することなれは、大名の潰れあとは右の如く有るべきことなり、

新字:城を受取る節も右のたぐひの武器をば城より出して、城を受取る人に相渡し、其の後城を引渡すべきことなり、尤も城付の道具は引渡すことなれども、其の外の武器は其の沙汰を承はり及はさる故に茲に記す、国を守る武器は大名ならで入ざる事なり、其の家潰るゝからは公儀へ悉く上るべし、外の家財とは各別のものなり、町人百姓に売渡すこと曽てあるべからさることなり、異国にては三代の後世も蔵甲と云ひて、甲胃は公儀へ納め置きて、合戦の前に渡し帰陣しては又納むることなり、日本の古も同じ、津の国兵庫は神功皇后三韓征伐の武器を納めたる所なり、武蔵の秩父は日本武尊の東夷征伐の武器を納めたる所なり、今武家の世になりては、人々所持することなれは、大名の潰れあとは右の如く有るべきことなり、

書き下し

城を受取る節も右のたぐひの武器をば城より出して、城を受取る人に相渡し、其の後城を引渡すべきことなり、尤も城付の道具は引渡すことなれども、其の外の武器は其の沙汰を承はり及はさる故に茲に記す、国を守る武器は大名ならで入ざる事なり、其の家潰るゝからは公儀へ悉く上るべし、外の家財とは各別のものなり、町人百姓に売渡すこと曽てあるべからさることなり、異国にては三代の後世も蔵甲と云ひて、甲胃は公儀へ納め置きて、合戦の前に渡し帰陣しては又納むることなり、日本の古も同じ、津の国兵庫は神功皇后三韓征伐の武器を納めたる所なり、武蔵の秩父は日本武尊の東夷征伐の武器を納めたる所なり、今武家の世になりては、人々所持することなれは、大名の潰れあとは右の如く有るべきことなり、

現代語訳

城を受け取る際も、右の類の武器は城から出して、城を受け取る人に渡し、その後で城を引き渡すべきである。もっとも城付きの道具は引き渡すことになっているが、その他の武器については、その沙汰を聞き及ばないのでここに記す。国を守る武器は大名でなければ要らないものである。その家が潰れるからには、公儀へことごとく納めるべきである。他の家財とは別のものである。町人や百姓に売り渡すことは決してあってはならない。異国では三代の後の世も「蔵甲」といって、甲冑は公儀へ納めておき、合戦の前に渡し、陣から帰ればまた納めるのである。日本の古も同じである。摂津の国の兵庫は神功皇后の三韓征伐の武器を納めた所である。武蔵の秩父は日本武尊の東夷征伐の武器を納めた所である。今、武家の世になっては人々が所持しているので、大名の潰れた跡は右のようにあるべきである。

解説

城の明け渡しでも、国を守る武器は他の家財と区別して公儀に納め、町人や百姓に売り渡してはならないと徂徠は説く。中国では甲冑を官に納めて戦の時だけ配る「蔵甲」があり、日本にも武器を納めた土地の伝承があるとして、武器は本来公のものだという原則を示す。地名の由来は伝承として引かれている点に注意したい。組織の力の源泉となる資産を誰が管理し、解散時にどこへ帰属させるかを定めておくことは、現代の企業統治でも欠かせない備えである。

この章句が説くこと

武器公儀管理帰属城制度

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