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政談 / 家斷絕したる隱居並に妻へ御扶持下さるへき事

隱居したる者其の子或ひは孫に子なくて跡目斷絕したるとき、右の隱居天竺浪人になるたぐひ多し、此等は其の身一代恙なく御奉公を仕舞たるものなれは御扶持下さるへき事なり、潰れたるものゝ妻も御扶持方下さるへきことなり、此等は大名の家にもあるへし、此の御手當なき故愈〻下より隱して成りともつかもなきものなりとも養子にして立たがること也、

新字:隠居したる者其の子或ひは孫に子なくて跡目断絶したるとき、右の隠居天竺浪人になるたぐひ多し、此等は其の身一代恙なく御奉公を仕舞たるものなれは御扶持下さるへき事なり、潰れたるものゝ妻も御扶持方下さるへきことなり、此等は大名の家にもあるへし、此の御手当なき故愈〻下より隠して成りともつかもなきものなりとも養子にして立たがること也、

書き下し

隠居したる者其の子或ひは孫に子なくて跡目断絶したるとき、右の隠居天竺浪人になるたぐひ多し、此等は其の身一代恙なく御奉公を仕舞たるものなれは御扶持下さるへき事なり、潰れたるものゝ妻も御扶持方下さるへきことなり、此等は大名の家にもあるへし、此の御手当なき故愈〻下より隠して成りともつかもなきものなりとも養子にして立たがること也、

現代語訳

隠居した者が、その子や孫に子がなくて跡目が断絶したとき、その隠居が身寄りのない浪人になる例が多い。これらはその身一代、無事に御奉公を勤め上げた者であるから、御扶持を下されるべきである。潰れた家の者の妻にも扶持を下されるべきである。これらは大名の家にもあることだろう。この手当てがないので、いよいよ下では隠してでも、どこの馬の骨とも知れない者でも養子にして家を立てたがるのである。

解説

跡目が絶えた家の隠居や妻が路頭に迷う現状に対し、徂徠は一代の奉公を勤め上げた者には扶持を与えよと説く。注目すべきは、その手当てがないからこそ、人々が素性の知れない者を養子に立ててでも家を残そうとするという因果の指摘である。前段の養子批判と結びつき、禁止だけでなく受け皿を用意してはじめて規律が守られるという発想が見える。現代でも、退職後の保障や救済策の欠如が不正や無理な継承を招く構造に気づかせてくれる一節である。

この章句が説くこと

扶持隠居救済家督制度仁政

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