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政談 / 大名の潰れたる其の家來を鄕士にすへき事

大名の家謀叛なと惣して御咎めの筋にても無きを、家の潰るゝは其家來に咎なし、然るに家潰るれは家來流浪すること世の風俗と成り、詮方なきことなれとも痛ましきことなり、元來武士なれは町人百姓の業もならす、渡世すへきやうなけれは今は樣々の惡事を仕出すものもあり、是れ其身の咎なれとも畢竟上の政道の足らぬ所とも云ふへきか、

新字:大名の家謀叛なと惣して御咎めの筋にても無きを、家の潰るゝは其家来に咎なし、然るに家潰るれは家来流浪すること世の風俗と成り、詮方なきことなれとも痛ましきことなり、元来武士なれは町人百姓の業もならす、渡世すへきやうなけれは今は様々の悪事を仕出すものもあり、是れ其身の咎なれとも畢竟上の政道の足らぬ所とも云ふへきか、

書き下し

大名の家謀叛なと惣して御咎めの筋にても無きを、家の潰るゝは其家来に咎なし、然るに家潰るれは家来流浪すること世の風俗と成り、詮方なきことなれとも痛ましきことなり、元来武士なれは町人百姓の業もならす、渡世すへきやうなけれは今は様々の悪事を仕出すものもあり、是れ其身の咎なれとも畢竟上の政道の足らぬ所とも云ふへきか、

現代語訳

大名の家が謀反など総じてお咎めの筋でもないのに潰れる場合、その家来には咎がない。それなのに、家が潰れれば家来が流浪するのが世の風俗となり、しかたのないことではあるが痛ましいことである。もともと武士であるから町人や百姓の仕事もできず、暮らしの立てようがないので、今ではさまざまな悪事をしでかす者もいる。これはその身の咎ではあるが、結局は上の政道の足りないところとも言うべきだろうか。

解説

主家が取り潰されると、何の咎もない家来までが浪人となり、生計の道を失って悪事に走る。徂徠はそれを本人の咎としつつも、根本は政道の不備だと見る。由比正雪の事件に見られるように、浪人問題は江戸幕府にとって治安上の大きな課題であった。個人の非行を本人の責任で終わらせず、それを生み出した制度の欠陥を問う姿勢は、現代の組織が事業撤退や再編のときに、そこで働く人々をどう扱うかを考えるうえでも重い問いかけとなる。

この章句が説くこと

浪人政道責任改易治安大名

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