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政談 / 御城下屋敷割の事

御城下の屋敷割大名をは江戶はつれに置きて、小身ものを御城近邊に置きたきこと也、小身ものは無人にて而かも勤め世話しなけれは御近所相應なり、大名は朔望の出仕ばかりのことにて、而かも大身にて人も多けれは遠方相應なり、御城近き故大名の家居込み合ひて火災の用心も惡しきなり、但し大名の屋敷は立派にて小身ものの家は立派ならぬ故、立派のために御近邊に大名をさし置かるゝことなるへけれとも、小身ものゝ屋敷ある所は外を一たんに煉屏にして、內に屋敷つくりをしたらは小身にても成るほと立派なるへし、前に云ひたる通りに諸役人にかみすけじやうさくわんなとを立つることならは、かみすけじやうさくわんの居所を、役屋敷にして一所に置き、外を一搆ひにし、諸役人は御用多きことなれは丸の內に置きたきことなり、されとも此等は大物成ることなり、武家を殘らす知行所にさしつかはすにあらされは成りかたきこと也、

新字:御城下の屋敷割大名をは江戸はつれに置きて、小身ものを御城近辺に置きたきこと也、小身ものは無人にて而かも勤め世話しなけれは御近所相応なり、大名は朔望の出仕ばかりのことにて、而かも大身にて人も多けれは遠方相応なり、御城近き故大名の家居込み合ひて火災の用心も悪しきなり、但し大名の屋敷は立派にて小身ものの家は立派ならぬ故、立派のために御近辺に大名をさし置かるゝことなるへけれとも、小身ものゝ屋敷ある所は外を一たんに煉屏にして、内に屋敷つくりをしたらは小身にても成るほと立派なるへし、前に云ひたる通りに諸役人にかみすけじやうさくわんなとを立つることならは、かみすけじやうさくわんの居所を、役屋敷にして一所に置き、外を一搆ひにし、諸役人は御用多きことなれは丸の内に置きたきことなり、されとも此等は大物成ることなり、武家を残らす知行所にさしつかはすにあらされは成りかたきこと也、

書き下し

御城下の屋敷割大名をは江戸はつれに置きて、小身ものを御城近辺に置きたきこと也、小身ものは無人にて而かも勤め世話しなけれは御近所相応なり、大名は朔望の出仕ばかりのことにて、而かも大身にて人も多けれは遠方相応なり、御城近き故大名の家居込み合ひて火災の用心も悪しきなり、但し大名の屋敷は立派にて小身ものの家は立派ならぬ故、立派のために御近辺に大名をさし置かるゝことなるへけれとも、小身ものゝ屋敷ある所は外を一たんに煉屏にして、内に屋敷つくりをしたらは小身にても成るほと立派なるへし、前に云ひたる通りに諸役人にかみすけじやうさくわんなとを立つることならは、かみすけじやうさくわんの居所を、役屋敷にして一所に置き、外を一搆ひにし、諸役人は御用多きことなれは丸の内に置きたきことなり、されとも此等は大物成ることなり、武家を残らす知行所にさしつかはすにあらされは成りかたきこと也、

現代語訳

御城下の屋敷割は、大名を江戸の外れに置き、小身の者を御城の近くに置きたいものである。小身の者は人手がなく、しかも勤めが忙しいので、御城の近所がふさわしい。大名は朔日と十五日の出仕くらいのことで、しかも大身で人も多いので、遠方がふさわしい。御城に近いので大名の家々が込み合って、火災の用心も悪い。ただし大名の屋敷は立派で、小身の者の家は立派でないので、見栄えのために大名を近辺に置かれているのであろうが、小身の者の屋敷のある所は、外側を一続きに練塀にして、内に屋敷造りをすれば、小身でもなるほど立派になるだろう。前に述べたように、諸役人に長官・次官・判官・主典のような四等官を立てるのであれば、その居所を役屋敷にして一か所に置き、外を一構えにし、諸役人は御用が多いのだから丸の内に置きたいものである。けれども、これらは大掛かりなことである。武家を残らず知行所に住まわせるのでなければ、実現しがたいことである。

解説

城の近くは見栄えのよい大名屋敷で占められているが、徂徠は逆にすべきだという。出仕の少ない大名は遠くに、人手が少なく勤めの忙しい小身の役人こそ近くに置く。見栄えは外を練塀で囲えば補え、役人は役所ごとに役屋敷にまとめよと提案する。配置を格式でなく業務の頻度と必要で決める発想である。ただし武家を知行所に帰す大改革なしには難しいと認めてもいる。座席配置や拠点の立地を、肩書きより仕事の流れで決めているかを問い直させる。

この章句が説くこと

配置業務格式屋敷割効率政談

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