政談 / 諸役人に器量を選ふ事
是れ其事をする人の上に付きて云ふとき斯の如し、又事の上に付きて云ふとき、惣して少しの害をすてねは大なる功は立てがたき者なり、譬へは風を引きたる人を療治するときは汗を發して風を追ふなり、汗は身の津液にて大切なる物、されとも身の津液をは其の儘置きて風ばかりをつんぼりと取ることは、醫道に於て之無きことなり、食傷瘀血を下すも斯の如く、下すときは津液ともに下りてその人虛〇〇〇、津液は下さすして食傷瘀血ばかりをふきて取る事はならぬことなり、一切の事は皆斯の如し、故に大なる功あらは小過は宥さて叶はさることなり、聖人の語は斯の如く樣々の道理備はりて、今日の事情の上にも深切なることなり、然かるを小過を咎むるは仁心なきなどゝ論語の講釋をする故、意味の深長に功用の廣大なることを知らぬも是亦末世になりたる學問の弊なるへし、
新字:是れ其事をする人の上に付きて云ふとき斯の如し、又事の上に付きて云ふとき、惣して少しの害をすてねは大なる功は立てがたき者なり、譬へは風を引きたる人を療治するときは汗を発して風を追ふなり、汗は身の津液にて大切なる物、されとも身の津液をは其の儘置きて風ばかりをつんぼりと取ることは、医道に於て之無きことなり、食傷瘀血を下すも斯の如く、下すときは津液ともに下りてその人虚〇〇〇、津液は下さすして食傷瘀血ばかりをふきて取る事はならぬことなり、一切の事は皆斯の如し、故に大なる功あらは小過は宥さて叶はさることなり、聖人の語は斯の如く様々の道理備はりて、今日の事情の上にも深切なることなり、然かるを小過を咎むるは仁心なきなどゝ論語の講釈をする故、意味の深長に功用の広大なることを知らぬも是亦末世になりたる学問の弊なるへし、
書き下し
是れ其事をする人の上に付きて云ふとき斯の如し、又事の上に付きて云ふとき、惣して少しの害をすてねは大なる功は立てがたき者なり、譬へは風を引きたる人を療治するときは汗を発して風を追ふなり、汗は身の津液にて大切なる物、されとも身の津液をは其の儘置きて風ばかりをつんぼりと取ることは、医道に於て之無きことなり、食傷瘀血を下すも斯の如く、下すときは津液ともに下りてその人虚〇〇〇、津液は下さすして食傷瘀血ばかりをふきて取る事はならぬことなり、一切の事は皆斯の如し、故に大なる功あらは小過は宥さて叶はさることなり、聖人の語は斯の如く様々の道理備はりて、今日の事情の上にも深切なることなり、然かるを小過を咎むるは仁心なきなどゝ論語の講釈をする故、意味の深長に功用の広大なることを知らぬも是亦末世になりたる学問の弊なるへし、
現代語訳
これは事を行う人の側について言えばこのようである。また事柄の側について言えば、総じて少しの害を捨てなければ大きな功は立てがたいものである。たとえば風邪を引いた人を治療するときは、汗を出させて風邪を追い出す。汗は体の津液(体液)であって大切なものである。けれども体の津液はそのままにして風邪だけをすっかり取り去ることは、医道においてないことである。食あたりや瘀血(滞った血)を下すのも同様で、下すときは津液もともに下ってその人は虚弱になる(底本ここに三字欠)。津液は下さずに食あたりや瘀血だけを拭い取ることはできないのである。一切の事は皆このようである。だから大きな功があれば、小さな過ちは赦さなくてはならない。聖人の言葉はこのようにさまざまな道理が備わっていて、今日の事情の上にも深く切実なものである。それなのに、小過を咎めるのは仁の心がないからだ、などと論語の講釈をするので、意味の深さと働きの広さを知らないのも、これまた末世になった学問の弊害であろう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『甲陽軍鑑』品第十六雖然それは大なる上の御損なり、其故は法をおもんじ奉り、何事も無事にとばかりならば、諸侍男道のきつかけをはづし、みな不足を堪忍仕る臆病者になり候はん、又男のきつかけをばはづすまじきとて、男を立て候はゞ、其身の疵になる儀をあらため候べし、其改むるをばはやかどがちなりとて、法度をそむくに罷り成り、さだめて御成敗か不然は国をおはるゝかにて候べし、然らば則ちよき侍一人もなうして、信玄公の御鋒は悉くよはかるべき義眼前に候、
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『韓非子』存韓第二凶器なり」と。審らかに用ゐざる可からざる也。
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言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
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論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
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