導師導古典を学びたいすべての人に

政談 / 御徒士衆與力を頭の心儘に入るゝ事並に御旗本諸役人に召出さるゝ事

今は御旗本の平士さへ家筋のかたを守り、唯た我と同格なる御旗本へ養子に行かんとのみ心懸く、御徒士與力御祐筆御勘定なとにはなるべきことにも思ひよらす、况してかけはなれたる大役には何程精を出し身を打入れて勤めても、今生の內には决してならすと思ふ故、人々思ひ切たる分別ばかりなり、唯た身持ち堅き身搆へに成て金を取り養子をし媳を取るやうなる惡しき筋ばかりになりたること、皆人の心寐入りたるより起れり、

新字:今は御旗本の平士さへ家筋のかたを守り、唯た我と同格なる御旗本へ養子に行かんとのみ心懸く、御徒士与力御祐筆御勘定なとにはなるべきことにも思ひよらす、況してかけはなれたる大役には何程精を出し身を打入れて勤めても、今生の内には決してならすと思ふ故、人々思ひ切たる分別ばかりなり、唯た身持ち堅き身搆へに成て金を取り養子をし媳を取るやうなる悪しき筋ばかりになりたること、皆人の心寐入りたるより起れり、

書き下し

今は御旗本の平士さへ家筋のかたを守り、唯た我と同格なる御旗本へ養子に行かんとのみ心懸く、御徒士与力御祐筆御勘定なとにはなるべきことにも思ひよらす、況してかけはなれたる大役には何程精を出し身を打入れて勤めても、今生の内には決してならすと思ふ故、人々思ひ切たる分別ばかりなり、唯た身持ち堅き身搆へに成て金を取り養子をし媳を取るやうなる悪しき筋ばかりになりたること、皆人の心寐入りたるより起れり、

現代語訳

今は御旗本の平士でさえ家筋の方を守り、ただ自分と同格の御旗本へ養子に行こうとばかり心がけ、御徒士・与力・御祐筆・御勘定などになることは思いもよらない。まして、かけ離れた大役には、どれほど精を出し身を打ち込んで勤めても今生のうちには決してなれないと思うので、人々はあきらめきった分別ばかりである。ただ身持ちを堅くする構えになって、金を取って養子をし、嫁を取るといった悪い筋ばかりになったのは、みな人の心が寝入ってしまったことから起こったのである。

解説

旗本の平士でさえ家筋を守ることだけを考え、同格の家への養子の口を探すばかりで、実務の役に就く気もない。大役にはどれほど励んでもなれないとあきらめているので、無難に身を保ち、持参金目当ての養子縁組や婚姻に走る。徂徠はこれを、人の心が寝入ってしまった結果だと診断する。現代でも、昇進の天井が見えた組織では、人は仕事の成果より社内の処世や待遇の確保に力を注ぐようになる。眠った心を起こすのは、道が開かれているという実感である。

この章句が説くこと

家筋意欲旗本養子天井政談

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る