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政談 / 御徒士衆與力を頭の心儘に入るゝ事並に御旗本諸役人に召出さるゝ事

偖又易の道理に下より登ると云ふこと如何の事なれは是亦空に理を云ひたるものにあらす、一年の內にも春夏は天の氣下へ降り、地の氣上へ昇り、天地和合して萬物長生す、秋冬になれは天の氣は登り地の氣は下り、天地隔り和合せす、萬物枯れ失する、人の世界も斯の如し、下にある才智の人を取り立て立身さするときは、上の御心は下へ行きわたりて天氣の下るか如し、才智ある人下より出身して大役にもなるときは、下の情を能く知りたる人上に登る故、下の難義世の有樣も上へ知れて地氣の昇るか如し、されは上下の間隔りなく一存になる故、天地和合する如くなることにて國家能く治まり、春夏に萬物生長するか如く世界豐かに榮ゆるなり、下にある才智人を取り立てされば上の御心下へ行きわたらぬ故天の氣の降らぬか如し、されは能き人下より昇らねは下の情上へ通達せす、地氣の昇らぬか如し、上下の間隔りて一存にならぬ故、天地の和合せぬか如くにて國家の衰ふること秋冬に萬物の枯れ失するか如し、

新字:偖又易の道理に下より登ると云ふこと如何の事なれは是亦空に理を云ひたるものにあらす、一年の内にも春夏は天の気下へ降り、地の気上へ昇り、天地和合して万物長生す、秋冬になれは天の気は登り地の気は下り、天地隔り和合せす、万物枯れ失する、人の世界も斯の如し、下にある才智の人を取り立て立身さするときは、上の御心は下へ行きわたりて天気の下るか如し、才智ある人下より出身して大役にもなるときは、下の情を能く知りたる人上に登る故、下の難義世の有様も上へ知れて地気の昇るか如し、されは上下の間隔りなく一存になる故、天地和合する如くなることにて国家能く治まり、春夏に万物生長するか如く世界豊かに栄ゆるなり、下にある才智人を取り立てされば上の御心下へ行きわたらぬ故天の気の降らぬか如し、されは能き人下より昇らねは下の情上へ通達せす、地気の昇らぬか如し、上下の間隔りて一存にならぬ故、天地の和合せぬか如くにて国家の衰ふること秋冬に万物の枯れ失するか如し、

書き下し

偖又易の道理に下より登ると云ふこと如何の事なれは是亦空に理を云ひたるものにあらす、一年の内にも春夏は天の気下へ降り、地の気上へ昇り、天地和合して万物長生す、秋冬になれは天の気は登り地の気は下り、天地隔り和合せす、万物枯れ失する、人の世界も斯の如し、下にある才智の人を取り立て立身さするときは、上の御心は下へ行きわたりて天気の下るか如し、才智ある人下より出身して大役にもなるときは、下の情を能く知りたる人上に登る故、下の難義世の有様も上へ知れて地気の昇るか如し、されは上下の間隔りなく一存になる故、天地和合する如くなることにて国家能く治まり、春夏に万物生長するか如く世界豊かに栄ゆるなり、下にある才智人を取り立てされば上の御心下へ行きわたらぬ故天の気の降らぬか如し、されは能き人下より昇らねは下の情上へ通達せす、地気の昇らぬか如し、上下の間隔りて一存にならぬ故、天地の和合せぬか如くにて国家の衰ふること秋冬に万物の枯れ失するか如し、

現代語訳

さてまた、易の道理に「下から昇る」というのはどういうことかといえば、これもまた空論として理を言ったものではない。一年の内でも、春夏は天の気が下へ降り、地の気が上へ昇り、天地が和合して万物が成長する。秋冬になれば天の気は昇り、地の気は下り、天地が隔たって和合せず、万物が枯れ失せる。人の世界もこのようである。下にいる才知の人を取り立てて出世させるときは、上の御心が下へ行き渡り、天の気が降るようである。才知ある人が下から出て大役にもなるときは、下の情をよく知った人が上に昇るので、下の難儀や世の有様も上に知れて、地の気が昇るようである。だから上下の間に隔たりがなく一つの心になるので、天地が和合するようなことになって国家がよく治まり、春夏に万物が成長するように世の中が豊かに栄える。下にいる才知の人を取り立てなければ、上の御心が下へ行き渡らないので、天の気が降らないようなものである。また良い人が下から昇らなければ下の情が上へ通じず、地の気が昇らないようなものである。上下の間が隔たって一つの心にならないので、天地が和合しないようなもので、国家の衰えることは秋冬に万物が枯れ失せるようなものである。

解説

易では天の気が降り地の気が昇って交わる卦を泰とし、隔たる卦を否とする。徂徠はこれを空論ではなく、春夏と秋冬の移り変わりのような実際の働きとして説き、人材登用に当てはめる。下から才知ある人を取り立てれば、上の意図が下に届き、下の実情が上に届いて、上下が一つになり国が栄える。取り立てなければ上下が隔たり、国は秋冬のように衰える。現代の組織でも、現場を知る人が経営に加わることで、方針は現場に、現場の声は経営に通う。登用は情報の循環でもある。

この章句が説くこと

易天地上下登用和合政談

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