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政談 / 御徒士衆與力を頭の心儘に入るゝ事並に御旗本諸役人に召出さるゝ事

然るに治めの道は古き功のある人の家をは隨分に介抱して成るたけ、家の續くほとは續くやうにし、又家內の老人曾祖父母、祖父母父母なとをも壽命何時まても永からんと祈り、早く死ねとはかりそめにも思はぬは、人情の常なり、されとも天地の道理は人情の常とは違ふものにて、何程かゝへ置きたく思ひても兎角に古きものは消え失せることなり、されはとてくしきものは早くなくなれともそはさとりすきたることにて、聖人の道に叶はす、人古きものいつまてもかゝへ置んと計りするは愚かすきたることにて、是亦聖人のみちに叶はす、聖人の道は人情の常をも成る程懇に立て置きて人の情を破らす、又始終の道理は明らかに見え過きて、くもりかゝりなけれはうちに人情の常はかりにとゝこをらす、是世界の人を取扱ふ本かねなり、

新字:然るに治めの道は古き功のある人の家をは随分に介抱して成るたけ、家の続くほとは続くやうにし、又家内の老人曽祖父母、祖父母父母なとをも寿命何時まても永からんと祈り、早く死ねとはかりそめにも思はぬは、人情の常なり、されとも天地の道理は人情の常とは違ふものにて、何程かゝへ置きたく思ひても兎角に古きものは消え失せることなり、されはとてくしきものは早くなくなれともそはさとりすきたることにて、聖人の道に叶はす、人古きものいつまてもかゝへ置んと計りするは愚かすきたることにて、是亦聖人のみちに叶はす、聖人の道は人情の常をも成る程懇に立て置きて人の情を破らす、又始終の道理は明らかに見え過きて、くもりかゝりなけれはうちに人情の常はかりにとゝこをらす、是世界の人を取扱ふ本かねなり、

書き下し

然るに治めの道は古き功のある人の家をは随分に介抱して成るたけ、家の続くほとは続くやうにし、又家内の老人曽祖父母、祖父母父母なとをも寿命何時まても永からんと祈り、早く死ねとはかりそめにも思はぬは、人情の常なり、されとも天地の道理は人情の常とは違ふものにて、何程かゝへ置きたく思ひても兎角に古きものは消え失せることなり、されはとてくしきものは早くなくなれともそはさとりすきたることにて、聖人の道に叶はす、人古きものいつまてもかゝへ置んと計りするは愚かすきたることにて、是亦聖人のみちに叶はす、聖人の道は人情の常をも成る程懇に立て置きて人の情を破らす、又始終の道理は明らかに見え過きて、くもりかゝりなけれはうちに人情の常はかりにとゝこをらす、是世界の人を取扱ふ本かねなり、

現代語訳

ところが治めの道では、古い功績のある人の家を手厚く世話して、できるだけ家が続く限りは続くようにし、また家の中の老人、曾祖父母・祖父母・父母などの寿命もいつまでも長かれと祈り、早く死ねなどと仮にも思わないのが人情の常である。けれども天地の道理は人情の常とは違うもので、どれほど抱えておきたいと思っても、とかく古いものは消え失せるのである。だからといって、古いものは早くなくなればよいと言うのは悟りすぎたことで、聖人の道に適わない。人が古いものをいつまでも抱えておこうとばかりするのは愚かすぎることで、これもまた聖人の道に適わない。聖人の道は、人情の常をもできる限り丁寧に立てておいて人の情を破らず、また始めと終わりの道理は明らかに見通していて曇りがないので、内では人情の常ばかりにとどこおらない。これが世の人を取り扱う基準である。

解説

功ある家を長く続かせたい、親や祖父母に長生きしてほしいと願うのは人情の常である。しかし天地の道理では古いものは必ず消えていく。徂徠は、古いものは早く消えればよいと割り切るのは悟りすぎ、いつまでも抱え込むのは愚かすぎとして、どちらも退ける。人情を丁寧に尊重しながら、始まりと終わりの道理は見失わないことが、人を扱う基準だという。現代の組織でも、功労者や古参への敬意と、世代交代の必要とを両立させることが、経営者の難しい務めである。

この章句が説くこと

人情道理聖人交代功労政談

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