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政談 / 諸役人器量の選別なる事

御側衆は古の納言、明朝の通政使の職なれと、只下より申し出つることを主意を違へす能く聞きとゝけ、め付けそへなくをとすこともなく審かに申し達すること專務なるへし、上の御機嫌をかね、人は贔負偏頗の私にて下の情を塞くを越度とすへし、諸人是を恃みてものを申しあくることなる故、必す威勢つくこと人情の常なり、威權かましきこと大罪たるへし、その才智の筋謹愼にして理すずを能く聞き分け、私なき人を用ゆへし、

新字:御側衆は古の納言、明朝の通政使の職なれと、只下より申し出つることを主意を違へす能く聞きとゝけ、め付けそへなくをとすこともなく審かに申し達すること専務なるへし、上の御機嫌をかね、人は贔負偏頗の私にて下の情を塞くを越度とすへし、諸人是を恃みてものを申しあくることなる故、必す威勢つくこと人情の常なり、威権かましきこと大罪たるへし、その才智の筋謹慎にして理すずを能く聞き分け、私なき人を用ゆへし、

書き下し

御側衆は古の納言、明朝の通政使の職なれと、只下より申し出つることを主意を違へす能く聞きとゝけ、め付けそへなくをとすこともなく審かに申し達すること専務なるへし、上の御機嫌をかね、人は贔負偏頗の私にて下の情を塞くを越度とすへし、諸人是を恃みてものを申しあくることなる故、必す威勢つくこと人情の常なり、威権かましきこと大罪たるへし、その才智の筋謹慎にして理すずを能く聞き分け、私なき人を用ゆへし、

現代語訳

御側衆(将軍の側近)は古の納言、明朝の通政使にあたる職であるが、ただ下から申し出ることを、その主旨を違えずよく聞き届け、余計なことを付け加えず、落とすこともなく、詳しく申し上げることを専らの務めとすべきである。上の御機嫌をうかがい、あるいはえこひいきの私心で下の実情をふさぐことを落ち度とすべきである。諸人がこの役を頼りにしてものを申し上げるのであるから、必ず威勢がつくのが人情の常である。権威を振りかざすことは大罪とすべきである。その才知の筋は、慎み深く、筋道をよく聞き分け、私心のない人を用いるべきである。

解説

将軍の側近である御側衆の役目を、徂徠は下からの申し出を曲げず、足さず、落とさず上に伝えることだと定める。取り次ぎ役には人が頼って集まるので自然と威勢がつくが、それを振りかざすのは大罪だとまで言う。上の機嫌をうかがって情報をふさぐことが、組織にとって最も危ういからである。現代の社長室や秘書役、経営企画など、トップへの情報の入り口に立つ人にも同じことが言える。取り次ぎに私心が入れば、経営者は現場の実態を知る道を失ってしまう。

この章句が説くこと

側近情報私心威権職分政談

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