墨子 / 尚同下
是故古之聖王之治天下也,千里之外有賢人焉,其鄉里之人皆未之均聞見也,聖王得而賞之。千里之外有暴人焉,其鄉里未之均見也,聖王得而罰之。故唯毋以聖王為聰耳明目與?豈能一視而通見千里之外哉!一聴而通聞千里之外哉!聖王不往而視也,不就而聴也。然而使天下之為冦亂盜賊者,周流天下無所重足者,何也?其以尚同為政善也。
新字:是故古之聖王之治天下也,千里之外有賢人焉,其鄉里之人皆未之均聞見也,聖王得而賞之。千里之外有暴人焉,其鄉里未之均見也,聖王得而罰之。故唯毋以聖王為聰耳明目与?豈能一視而通見千里之外哉!一聴而通聞千里之外哉!聖王不往而視也,不就而聴也。然而使天下之為寇乱盗賊者,周流天下無所重足者,何也?其以尚同為政善也。
書き下し
是の故に古の聖王の天下を治むるや、千里の外に賢人有り、其の鄉里の人、皆な未だ之を均しく聞き見ざるに、聖王、得て之を賞す。千里の外に暴人有り、其の鄉里、未だ之を均しく見ざるに、聖王、得て之を罰す。故に唯だ聖王を以て耳聡く目明らかなりと為す毋からんや。豈に能く一たび視て千里の外を通見せんや、一たび聴きて千里の外を通聞せんや。聖王は往きて視るにあらざるなり、就きて聴くにあらざるなり。然れども天下の冦亂盜賊を為す者をして、天下を周流するも足を重ぬる所無からしむるは、何ぞや。其の尚同を以て政を為すこと善ければなり。
現代語訳
だから昔の聖王が天下を治めたとき、千里の外に賢人がいて、その郷里の人がまだひとしく聞き知らないうちに、聖王はそれを知って賞した。千里の外に暴悪な者がいて、その郷里がまだひとしく見ていないうちに、聖王はそれを知って罰した。では聖王は耳が鋭く目が明るかったのだろうか。一度見ただけで千里の外まで見通し、一度聞いただけで千里の外まで聞き通せるはずがない。聖王は行って見たのでもなく、近づいて聞いたのでもない。それでも天下で乱暴や盗みを働く者が、天下を逃げ回っても足を止める場所が無かったのはなぜか。尚同によって政治を行うのがうまかったからである。
解説
「聖王不往而視也、不就而聴也」——行かずに見、近づかずに聞く。超人的な能力に見える現象を、仕組みに還元する説明が三たび繰り返されます。墨子は同じ主張を上篇・中篇・下篇で角度を変えて三度書く人ですが、この論点だけは特に念入りです。トップの情報力は個人の資質ではなく設計の産物である、という主張を、これほど強調した古典は多くありません。
この章句が説くこと
情報仕組み超能力ではない設計到達
関連する章句
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『墨子』尚同中故に古者、聖王は唯だ壹に尚同を以て正長と為す。是れ上下、請謁して通を為す。上に隠事遺利有れば、下、得て之を利し、下に蓄怨積害有れば、上、得て之を除く。是を以て數千萬里の外に善を為す者有れば、其の室人未だ徧く知らず、鄉里未だ徧く聞かざるに、天子、得て之を賞す。數千萬里の外に不善を為す者有れば、其の室人未だ徧く知らず、郷里未だ徧く聞かざるに、天子、得て之を罰す。是を以て天下の人を舉げて皆な恐懼振動惕慄して、敢えて淫暴を為さず、曰く、「天子の視聴や神なり」と。先王の言に曰く、「神に非ざるなり。夫れ唯だ能く人の耳目をして己が視聴を助けしめ、人の吻をして己が言談を助けしめ、人の心をして己が思慮を助けしめ、人の股肱をして己が動作を助けしむればなり」と。之を視聴するを助くる者衆ければ、則ち其の聞見する所の者は逺し。之を言談するを助くる者衆ければ、則ち其の徳音の撫循する所の者は博し。之を思慮するを助くる者衆ければ、則ち其の謀慮は速やかに得らる。之を動作するを助くる者衆ければ、則ち其の事を舉ぐること速やかに成る。
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孫子・九地篇能く士卒の耳目を愚にして、之をして知ること無からしむ。其の事を易え、其の謀を革めて、人をして識ること無からしむ。其の居を易え、其の途を迂にして、人をして慮ることを得ざらしむ。
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孫子・用間篇先知は、鬼神に取るべからず、事に象るべからず、度に験すべからず、必ず人に取り、敵の情を知る者なり。
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