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政談 / 制度の事

其仔細は下々の病ひと云ふことあるとき供廻りの人數をのく格極まるときは兎角傭人をすることになり、夫より皆日用になることなり、唯々供の衣服乘物馬具の飾り立傘等の飾り道具の飾りに階級を付けて、官祿役席の見ゆるやうにすへし、但し當時の人數多く召し連れて賑かなるを立派と思ふ目くせを換ゆるために供のていたらくなるほと立派なるやうに制度を立てたきことなり、少々は異國にて旗にても持たせ凉傘にても持たする程のことに大名をは仕りたきことなり、但し古の堂上方の法にかゝはるへからす、公家の世の武士特の外に下賤なり、今其の法を用ゆるときは今日の宜きに非す、又鳥帽子直垂と云ふものは當上方の禮にあらす、古武家の作法なり、之に當時の格にあふやうに階級を付たる分は如何程に付けても苦しからさることなり、

新字:其仔細は下々の病ひと云ふことあるとき供廻りの人数をのく格極まるときは兎角傭人をすることになり、夫より皆日用になることなり、唯々供の衣服乗物馬具の飾り立傘等の飾り道具の飾りに階級を付けて、官禄役席の見ゆるやうにすへし、但し当時の人数多く召し連れて賑かなるを立派と思ふ目くせを換ゆるために供のていたらくなるほと立派なるやうに制度を立てたきことなり、少々は異国にて旗にても持たせ凉傘にても持たする程のことに大名をは仕りたきことなり、但し古の堂上方の法にかゝはるへからす、公家の世の武士特の外に下賤なり、今其の法を用ゆるときは今日の宜きに非す、又鳥帽子直垂と云ふものは当上方の礼にあらす、古武家の作法なり、之に当時の格にあふやうに階級を付たる分は如何程に付けても苦しからさることなり、

書き下し

其仔細は下々の病ひと云ふことあるとき供廻りの人数をのく格極まるときは兎角傭人をすることになり、夫より皆日用になることなり、唯々供の衣服乗物馬具の飾り立傘等の飾り道具の飾りに階級を付けて、官禄役席の見ゆるやうにすへし、但し当時の人数多く召し連れて賑かなるを立派と思ふ目くせを換ゆるために供のていたらくなるほと立派なるやうに制度を立てたきことなり、少々は異国にて旗にても持たせ凉傘にても持たする程のことに大名をは仕りたきことなり、但し古の堂上方の法にかゝはるへからす、公家の世の武士特の外に下賤なり、今其の法を用ゆるときは今日の宜きに非す、又鳥帽子直垂と云ふものは当上方の礼にあらす、古武家の作法なり、之に当時の格にあふやうに階級を付たる分は如何程に付けても苦しからさることなり、

現代語訳

その子細は、下々の病ということがあるとき、供回りの人数を各々の格で決めると、とかく雇い人をすることになり、それから皆日雇いになるのである。ただ供の衣服・乗物・馬具の飾り、立傘など道具の飾りに階級を付けて、官禄・役席が見えるようにすべきである。ただし今の、人数を多く召し連れて賑やかなのを立派と思う目の癖を変えるために、供の様子ができるだけ立派になるように制度を立てたいものである。少々は異国で旗でも持たせ、涼傘でも持たせるほどのことに、大名をばしたいものである。ただし古の堂上方(公家)の法にこだわってはならない。公家の世の武士はことのほか下賤であった。今その法を用いるときは今日に適したことではない。また烏帽子・直垂というものは上方(公家)の礼ではなく、古の武家の作法である。これに今の格に合うように階級を付ける分には、どれほど付けても差し支えないことである。

解説

供の人数を格で決めると、病人が出たときに日雇いで頭数を埋めることになり、行列は雇われ者だらけになる。そこで徂徠は、人数ではなく衣服・乗物・馬具・傘などの飾りに階級を付けて格を示せと言う。人数の多さを立派と思う「目の癖」を変えるには、少人数でも立派に見える制度にすることが肝要だという。また公家の古法に倣うのではなく、武家本来の作法である直垂に今の格を付けよとする。量ではなく質で格を表すという考えは、人員の多さを権威と取り違えがちな現代の組織にも示唆を与える。

この章句が説くこと

供回り格式制度武家政談倹約

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