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政談 / 武家旅宿の境遇を改むる事

且又武家田舍に住み候へは田地の樣子川よけ提等のことも見なれ聞なれする故、御役仰せ付られ候て地かた御代官に罷成り候ても、江戶出生のものとも手代任せにするとは雲泥の違ひなるへし、偖て武家知行所に居住せは江戶の勤番は一月かはり歟百日かはりかに相勤むへし、勤番の內は御城の御番は隔日に成りとも三日番になりとも相務め、何程ひどき御番も旅宿なれは勤まるなり、旅をも度々して功者になるべし、在江戶の內男住居なれは火事の節に至り能く事なれて足手まとひ之なき故御用心向却て宜しかるへし、

新字:且又武家田舎に住み候へは田地の様子川よけ提等のことも見なれ聞なれする故、御役仰せ付られ候て地かた御代官に罷成り候ても、江戸出生のものとも手代任せにするとは雲泥の違ひなるへし、偖て武家知行所に居住せは江戸の勤番は一月かはり歟百日かはりかに相勤むへし、勤番の内は御城の御番は隔日に成りとも三日番になりとも相務め、何程ひどき御番も旅宿なれは勤まるなり、旅をも度々して功者になるべし、在江戸の内男住居なれは火事の節に至り能く事なれて足手まとひ之なき故御用心向却て宜しかるへし、

書き下し

且又武家田舎に住み候へは田地の様子川よけ提等のことも見なれ聞なれする故、御役仰せ付られ候て地かた御代官に罷成り候ても、江戸出生のものとも手代任せにするとは雲泥の違ひなるへし、偖て武家知行所に居住せは江戸の勤番は一月かはり歟百日かはりかに相勤むへし、勤番の内は御城の御番は隔日に成りとも三日番になりとも相務め、何程ひどき御番も旅宿なれは勤まるなり、旅をも度々して功者になるべし、在江戸の内男住居なれは火事の節に至り能く事なれて足手まとひ之なき故御用心向却て宜しかるへし、

現代語訳

また武家が田舎に住めば、田地の様子や川除け・堤などのことも見慣れ聞き慣れるので、お役を仰せ付けられて地方(農政)の代官になっても、江戸生まれの者が手代任せにするのとは雲泥の違いとなるだろう。さて、武家が知行所に住むなら、江戸の勤番は一月交代か百日交代で勤めるべきである。勤番の間は、お城の御番は隔日になっても三日番になっても勤め、どれほどきつい御番も旅先の宿住まいなので勤まるものである。旅も度々して達者になるだろう。江戸にいる間は男だけの住まいなので、火事の時にも事に慣れ、足手まといがないので、警備の面ではかえってよいだろう。

解説

田舎に住む武士は、実務の能力でも江戸育ちに勝ると説く条である。日頃から田地や川除け、堤を見慣れていれば、代官に任じられても手代任せにせず自ら判断できる。江戸の勤務は短期交代の単身赴任とし、その間はきつい当番も集中してこなせ、火事でも家族に気を取られない。生活の拠点と勤務の場を分け、勤務を短く集中させる設計である。現場を知らない管理者は部下任せになりがちだ。現場に身を置く経験と、本部での集中した勤務を組み合わせる人事のあり方を考えさせる。

この章句が説くこと

現場代官実務勤番人事農政

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