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政談 / 出替り奉公人の締りの事

假令その奉公人の主人のかたに差合これあり、名を付けかゆるとも手形には在所にて人別帳に載たる名をしるすへし、をなしくはさし合あるとて名を付けかゆることは天下一統禁制し、人々名を私にかゆることは天下一統罪に申し付べし、人別帳と云ふ物は至極に重きものにして天子も拜したまふ程のことなれば、微細のことまでもをちこれなきやうにすることなり、宗旨の事も元來其在所の人別帳に載てこれあるなれば、別に宗門手形に及はさることなり、宗門のあらためをあまり大切にするとて、受人より手形を取ることに仕たれども、それはあまり繁多なる故、受狀に書載させ、江戶にて旦那寺を拵らへ、代々何宗とすること全躰僞りなり、法を立んとて僞りを敎ゆ、その僞りの手形を嚴しく取りて宗門のあらためを大切にするふりをするは埓もなきことなり、

新字:仮令その奉公人の主人のかたに差合これあり、名を付けかゆるとも手形には在所にて人別帳に載たる名をしるすへし、をなしくはさし合あるとて名を付けかゆることは天下一統禁制し、人々名を私にかゆることは天下一統罪に申し付べし、人別帳と云ふ物は至極に重きものにして天子も拝したまふ程のことなれば、微細のことまでもをちこれなきやうにすることなり、宗旨の事も元来其在所の人別帳に載てこれあるなれば、別に宗門手形に及はさることなり、宗門のあらためをあまり大切にするとて、受人より手形を取ることに仕たれども、それはあまり繁多なる故、受状に書載させ、江戸にて旦那寺を拵らへ、代々何宗とすること全体偽りなり、法を立んとて偽りを教ゆ、その偽りの手形を厳しく取りて宗門のあらためを大切にするふりをするは埓もなきことなり、

書き下し

仮令その奉公人の主人のかたに差合これあり、名を付けかゆるとも手形には在所にて人別帳に載たる名をしるすへし、をなしくはさし合あるとて名を付けかゆることは天下一統禁制し、人々名を私にかゆることは天下一統罪に申し付べし、人別帳と云ふ物は至極に重きものにして天子も拝したまふ程のことなれば、微細のことまでもをちこれなきやうにすることなり、宗旨の事も元来其在所の人別帳に載てこれあるなれば、別に宗門手形に及はさることなり、宗門のあらためをあまり大切にするとて、受人より手形を取ることに仕たれども、それはあまり繁多なる故、受状に書載させ、江戸にて旦那寺を拵らへ、代々何宗とすること全体偽りなり、法を立んとて偽りを教ゆ、その偽りの手形を厳しく取りて宗門のあらためを大切にするふりをするは埓もなきことなり、

現代語訳

たとえその奉公人の主人の側に差し障りがあって名を付け替えても、手形には在所で人別帳に載っている名を記すべきである。同じことなら、差し障りがあるからといって名を付け替えることは天下一統で禁じ、人々が名を勝手に替えることは天下一統で罪に申しつけるべきである。人別帳というものはこの上なく重いもので、天子も拝されるほどのものであるから、細かなことまで漏れのないようにするのである。宗旨のことも、もともとその在所の人別帳に載っているのだから、別に宗門手形には及ばないことである。宗門改めをあまり大切にするといって、請人から手形を取ることにしたが、それはあまりに煩雑なので請状に書き載せさせ、江戸で旦那寺をこしらえて代々何宗とすることは、全体が偽りである。法を立てようとして偽りを教えている。その偽りの手形を厳しく取って、宗門改めを大切にするふりをするのは、らちもないことである。

解説

人別帳を「天子も拝する」ほど重い台帳とし、名の勝手な改変を禁じて記録の同一性を守れと説く。さらに宗門改めについて、在所の人別帳に宗旨が載っているのに、江戸で形だけの旦那寺をこしらえて請状に書かせるのは「法を立んとて偽りを教ゆ」だと痛烈に批判する。統制を厳しくしたつもりで、実は偽りの書類を量産させているという指摘である。確認書類を増やすほど現場が辻褄合わせの書類を作る、という現代の過剰なコンプライアンス手続きにもそのまま当てはまる。

この章句が説くこと

台帳人別帳手続き偽り宗門統制

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