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政談 / 出替り奉公人の締りの事

さては其宜しき制度は如何にと云ふに、その仕方田舍より出る奉公人ならば御領は御代官、私領は地頭へ名主より今年は誰々と申す者幾人奉公に出ると云ふことを訴ふべし、地頭代官へ訴へすして私に奉公に出すこと堅く制禁すべし、また名主に隱れて奉公に出つるものあらは、其者其村を欠落したると云ふ罪を以て屹と是を申し付くべし、さて召し置き候かたにても武家町方に限らす、皆その奉公人の在所の地頭代官へ付屆け證文を取るべし、其證文には其の奉公人の在所村の名幷に其奉公人の名は人別帳の如く幷に年をしるし、給金の高をしるしこの方地行所又は支配所のものに紛れこれなしとまうすことばかりにて相すむべし、

新字:さては其宜しき制度は如何にと云ふに、その仕方田舎より出る奉公人ならば御領は御代官、私領は地頭へ名主より今年は誰々と申す者幾人奉公に出ると云ふことを訴ふべし、地頭代官へ訴へすして私に奉公に出すこと堅く制禁すべし、また名主に隠れて奉公に出つるものあらは、其者其村を欠落したると云ふ罪を以て屹と是を申し付くべし、さて召し置き候かたにても武家町方に限らす、皆その奉公人の在所の地頭代官へ付届け証文を取るべし、其証文には其の奉公人の在所村の名幷に其奉公人の名は人別帳の如く幷に年をしるし、給金の高をしるしこの方地行所又は支配所のものに紛れこれなしとまうすことばかりにて相すむべし、

書き下し

さては其宜しき制度は如何にと云ふに、その仕方田舎より出る奉公人ならば御領は御代官、私領は地頭へ名主より今年は誰々と申す者幾人奉公に出ると云ふことを訴ふべし、地頭代官へ訴へすして私に奉公に出すこと堅く制禁すべし、また名主に隠れて奉公に出つるものあらは、其者其村を欠落したると云ふ罪を以て屹と是を申し付くべし、さて召し置き候かたにても武家町方に限らす、皆その奉公人の在所の地頭代官へ付届け証文を取るべし、其証文には其の奉公人の在所村の名并に其奉公人の名は人別帳の如く并に年をしるし、給金の高をしるしこの方地行所又は支配所のものに紛れこれなしとまうすことばかりにて相すむべし、

現代語訳

それでは、そのよい制度とはどういうものかといえば、そのやり方は、田舎から出る奉公人であれば、幕府の御領なら代官、私領なら地頭(領主)へ、名主から「今年は誰々という者が何人奉公に出る」ということを届け出させるのである。地頭・代官へ届けずに勝手に奉公に出すことは堅く禁ずべきである。また名主に隠れて奉公に出る者があれば、その者はその村を欠け落ちしたという罪で、きっと処罰を申しつけるべきである。さて召し置く側でも、武家・町方に限らず、みなその奉公人の在所の地頭・代官へ届け出て証文を取るべきである。その証文には、その奉公人の在所の村の名と奉公人の名を人別帳のとおりに書き、年齢を記し、給金の額を記し、「当方の知行所または支配所の者に間違いない」と申すことだけで済むだろう。

解説

ここから徂徠の対案が示される。奉公人の身元を、町の請人という不確かな個人でなく、出身村の名主と地頭・代官という公の系統で確かめる。出る側は名主から届け、雇う側は在所の領主から証文を取る。証文の記載は村名・人別帳どおりの名・年齢・給金と簡潔である。個人の保証から、所属組織による身元の裏付けへと切り替える発想であり、記載事項を最小限に絞るのも実務的である。採用や取引の身元確認を、仕組みとしてどの系統に担わせるかを考える手がかりになる。

この章句が説くこと

身元名主届出証文人別帳制度

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