孫子 / 九地篇
是故其兵不修而戒,不求而得,不約而親,不令而信。禁祥去疑,至死無所之。
書き下し
是の故に其の兵は修めずして戒め、求めずして得、約せずして親しみ、令せずして信ず。祥を禁じ疑いを去れば、死に至るまで之く所無し。
現代語訳
だからそういう軍は、言わなくても警戒し、求めなくても働き、約束しなくても親しみ合い、命令しなくても信じ合う。迷信を禁じ疑いを取り除けば、死ぬまで動じることがない。
解説
前段を受けて、極限状況にある部隊がどうなるかを描いている。四つの「〜せずして」が並ぶさまは、管理を必要としない組織の理想像でもある。命じなくても動く状態は、統制が完璧だから生まれるのではなく、全員が同じ状況を共有しているから生まれる。管理を厚くするほど自発性が落ちるという逆説を、孫子は状況の側から説明した。後半の「祥を禁じ疑いを去る」——占いや噂を断ち、疑心を取り除くという指示は、情報の統制がそのまま士気の管理であることを示している。