留魂録 / 結びの歌
かきつけ終りて後 心なることの種々かき置きぬ思ひ殘せることなかりけり 呼びだしの聲まつ外に今の世に待つべき事のなかりけるかな 討たれたる吾れをあはれと見ん人は君を崇めて夷拂へよ 愚かなる吾れをも友とめづ人はわがとも友とめでよ人々 七たびも生きかへりつつ夷をぞ攘はんこころ吾れ忘れめや 十月廿六日黃昏書 二十一回猛士
新字:かきつけ終りて後 心なることの種々かき置きぬ思ひ残せることなかりけり 呼びだしの声まつ外に今の世に待つべき事のなかりけるかな 討たれたる吾れをあはれと見ん人は君を崇めて夷払へよ 愚かなる吾れをも友とめづ人はわがとも友とめでよ人々 七たびも生きかへりつつ夷をぞ攘はんこころ吾れ忘れめや 十月廿六日黄昏書 二十一回猛士
書き下し
かきつけ終りて後 心なることの種々かき置きぬ思ひ残せることなかりけり 呼びだしの声まつ外に今の世に待つべき事のなかりけるかな 討たれたる吾れをあはれと見ん人は君を崇めて夷払へよ 愚かなる吾れをも友とめづ人はわがとも友とめでよ人々 七たびも生きかへりつつ夷をぞ攘はんこころ吾れ忘れめや 十月廿六日黄昏書す 二十一回猛士
現代語訳
書きつけ終えて後に。心にかかることのあれこれを書き置いた。もう思い残すことはない。呼び出しの声を待つほかに、今の世で待つべきことは何もなくなった。討たれた私を哀れと思ってくれる人は、天子を崇めて外夷を払ってほしい。愚かな私をも友として愛してくれる人は、私の友たちを友として大切にしてほしい、人々よ。七たびも生まれ変わって外夷を払おうという心を、私は忘れはしない。十月二十六日の夕暮れに書く。二十一回猛士。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『留魂録』題辞留魂録 身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂 十月念五日 二十一回猛士
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『留魂録』第六条然れども事已に爰に至れば、刺し違へ・切り払ひの両事を受けざるは、却つて激烈を欠き、同志の諸友亦惜しむなるべし。吾と云へども亦惜しまざるに非ず。然れども反復是れを思へば、成功(成仁)の一死、区々一言の得失に非ず。今日義卿奸権の為めに死す、天地神明照鑑上にあり、何ぞ惜しむことかあらん。
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『留魂録』第七条一、吾此の回初めより素より生を謀らず、又死を必せず、唯だ誠の通塞を以て天命の自然に委したるなり。七月九日に至りては略ぼ一死を期す。故に其の詩に云ふ、「継盛唯だ当に市戮に甘んずべし、倉公寧ぞ復た生還を望まんや」と。其の後九月五日・十月五日、吟味の寛容なるに欺かれ、又必生を期す。亦頗る慶幸の心あり。
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『留魂録』第七条此の心、吾が此の身を惜しむ為めに発するに非ず。抑々故あり。去臘大晦、朝議已に幕府に貸す。今春三月五日、吾が公の駕已に萩府を発す。吾が策是に於て尽き果てたれば、死を求むること極めて急なり。六月の末江戸に来るに及んで、夷人の情態を見聞し、七月九日獄に来り、天下の形勢を考察し、神国の事猶なすべきものあるを悟り、初めて生を幸とするの念勃々たり。吾若し死せずんば、勃々たるもの決して汨没せざるなり。然れども十六日の書、三奉行の権詐、吾を死地に措かんとするを知りてより、更に生を幸ふの心なし。是れ亦平生学問の得力然るなり。
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『留魂録』第六条一、要諫一条に付き、「事遂げざる時は鯖侯と刺し違へて死し、警衛の者要蔽する時は切り払ふべき」との事、実に吾が云はざる所なり。然るに三奉行強ひて書載して誣服せしめんと欲す。誣服は吾肯へて受けんや。是れを以て十六日書判の席に臨みて、石谷・池田の両奉行と大いに争弁す。吾肯へて一死を惜しまんや、両奉行の権詐に伏せざるなり。是れより先、九月五日・十月五日両度の吟味に、吟味役まで具に申し立て、死を決して要諫す、必ずしも刺し違へ・切り払ひ等の策あるに非ず。吟味役具に是れを諾して、而も且つ口書に書載するは権詐に非ずや。
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『留魂録』第十三条一、右数条、余徒らに書するに非ず。天下の事を成すは、天下有志の士と志を通ずるに非ざれば得ず。而して右数人、余此の回新たに得る所の人なるを以て、是れを同志に告示するなり。又勝野保三郎早已に出牢す、就きて其の詳を問知すべし。勝野の父豊作今潜伏すと雖も、有志の士と聞けり。他日事平らぐを待ちて物色すべし。今日の事、同志の諸士、戦敗の余、傷残の同士を問訊する如くすべし。一敗乃ち挫折する、豈に勇士の事ならんや。切に嘱す、切に嘱す。
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