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留魂録 / 第十条

因テ平生子遠ト密議スル所ノ尊攘堂ノ議ト合セ堀江ニ謀リ、是ヲ子遠ニ任スルコトニ決ス、子遠若シ能ク同志ト謀リ、内外志ヲ協ヘ、此事ヲシテ少シク端緒アラシメハ吾ノ志トスル所モ亦荒セズト云フヘシ、去年勅使綸旨等ノ事一跌スト雖トモ、尊皇攘夷苟モ已ムヘキニ非レハ、又善術ヲ設ケ前緒ヲ継紹セズンハアルベカラズ、京師學校ノ論亦奇ナラズヤ、

新字:因テ平生子遠ト密議スル所ノ尊攘堂ノ議ト合セ堀江ニ謀リ、是ヲ子遠ニ任スルコトニ決ス、子遠若シ能ク同志ト謀リ、内外志ヲ協ヘ、此事ヲシテ少シク端緒アラシメハ吾ノ志トスル所モ亦荒セズト云フヘシ、去年勅使綸旨等ノ事一跌スト雖トモ、尊皇攘夷苟モ已ムヘキニ非レハ、又善術ヲ設ケ前緒ヲ継紹セズンハアルベカラズ、京師学校ノ論亦奇ナラズヤ、

書き下し

因りて平生子遠と密議する所の尊攘堂の議と合はせ、堀江に謀り、是れを子遠に任ずることに決す。子遠若し能く同志と謀り、内外志を協へ、此の事をして少しく端緒あらしめば、吾の志とする所も亦荒せずと云ふべし。去年勅使・綸旨等の事一跌すと雖も、尊皇攘夷苟も已むべきに非ざれば、又善術を設け前緒を継紹せずんばあるべからず。京師学校の論、亦奇ならずや。

現代語訳

そこで、日ごろ子遠とひそかに議していた尊攘堂の案と合わせて堀江に相談し、これを子遠に任せることに決めた。子遠がもしよく同志と相談し、内外で心を合わせて、この事に少しでも糸口をつけてくれるなら、私の志したことも無駄にはならなかったと言えるだろう。去年、勅使や綸旨のことは一度つまずいたが、尊王攘夷はかりそめにもやめてよいものではないから、また良い手立てを設けて、これまでの糸口を受け継いでいかなければならない。京都に学校を開くという論は、なかなか優れたものではないか。

解説

構想は具体的な担い手へと渡されます。松陰はかねて入江杉蔵(子遠)と語っていた尊攘堂の案を、この学校構想に結びつけ、実行を子遠に託しました。一度つまずいても、目的が正しいならやり方を変えて続けよ、という指示です。尊攘堂はのちに門人の品川弥二郎が京都に建て、その収蔵品は今は京都大学に引き継がれています。夢を語るだけでなく、誰がやるかを決めて渡す。遺言が具体的な仕事の割り振りになっているところに、教育者としての松陰の実際家ぶりがよく表れています。

この章句が説くこと

継承再挑戦尊攘堂委任教育

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