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留魂録 / 第十一条

一、小林民部云、京師ノ学習院ハ定日アリテ百姓町人ニ至ルマテ出席シテ講釋ヲ聽聞スルコトヲ許サル、講日ニハ公卿方出座ニテ講師菅家・清家及ヒ地下ノ儒者相混スルナリ、然ラハ此基ニ因テ更ニ斟酌ヲ加ヘハ幾等モ妙策アルヘシ、又懷德堂ニハ靈元上皇宸筆勅額アリ、此基ニ因リ更ニ一堂ヲ興スモ亦妙ナリト小林云ヘリ、

新字:一、小林民部云、京師ノ学習院ハ定日アリテ百姓町人ニ至ルマテ出席シテ講釈ヲ聴聞スルコトヲ許サル、講日ニハ公卿方出座ニテ講師菅家・清家及ヒ地下ノ儒者相混スルナリ、然ラハ此基ニ因テ更ニ斟酌ヲ加ヘハ幾等モ妙策アルヘシ、又懐徳堂ニハ霊元上皇宸筆勅額アリ、此基ニ因リ更ニ一堂ヲ興スモ亦妙ナリト小林云ヘリ、

書き下し

一、小林民部云ふ、「京師の学習院は定日ありて、百姓町人に至るまで出席して講釈を聴聞することを許さる。講日には公卿方出座にて、講師は菅家・清家及び地下の儒者相混ずるなり。然らば此の基に因りて更に斟酌を加へば、幾等も妙策あるべし。又懐徳堂には霊元上皇宸筆の勅額あり、此の基に因り更に一堂を興すも亦妙なり」と小林云へり。

現代語訳

小林民部はこう言った。「京都の学習院には決まった講義日があって、百姓や町人に至るまで出席して講釈を聞くことが許されている。講義の日には公家衆も出席し、講師には菅原家・清原家の学者と、地下の儒者が入りまじっている。だからこの土台に立って、さらに工夫を加えれば、いくらでも良い策があるだろう。また大坂の懐徳堂には霊元上皇の直筆の額がある。この土台に立って、さらに一つの学堂を興すのもまた良い」と。

解説

鷹司家に仕えた小林民部は、京都の学習院がすでに百姓町人にも講義を開いていることを教えます。身分を問わず学べる場がすでにあるなら、ゼロから作らずそれを土台に工夫すればよいという助言です。大坂の町人の学校懐徳堂も、上皇の額を賜った由緒を生かして新しい学堂の核にできると言います。松陰はこの現実的な案を、同志への遺言の中にそのまま書き留めました。理想の学校を夢想するのではなく、あるものを足場にする。この発想は、新しいことを始めるときの手堅い定石でもあります。

この章句が説くこと

学習院懐徳堂土台教育工夫

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